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社会問題を我が事として考えるための教育とは


教育学部長 教授 藤本 登


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私たちの暮らしや社会にとって科学技術は必要不可欠です。しかしながら、科学技術には、原子力発電や放射線医療と核兵器や被ばく、火力発電と地球温暖化のように、光と影が存在します。また、原子力発電は40年から60年と長期間使用できますが、そこで発生する高レベル放射性廃棄物は少なくとも300年間は人による管理が必要です。一方で、資源の少ない我が国(エネルギー自給率は10%程度)にとって、燃料備蓄性能が3年弱である原子力発電は、産業・経済活動を維持するためにも魅力的です(原油の備蓄量は170日、石炭は1か月、LNGは2週間程度)。また、地球温暖化の面から見ても、地熱や風力発電と同程度の二酸化炭素排出量であることから、しばらくの間は使い続けざるを得ない状況です。しかしながら、東日本大震災に伴う東京電力(株)福島第一原子力発電所の事故は今なお終息せず、多くの人々の生活に重くのしかかっています。原子力発電が地域の発展に寄与してきたことがあるにせよ、科学技術をこれからも利用して行く私たちにとって、これは大きな問題です。


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このような問題の解決を図るためには、何が必要なのでしょうか。私たちはこのような問題を理解し、答えを出す術として、実は発達段階に応じて学校教育の教科の中でそのような問題を理解するための基礎知識を学習しています。一方で、そのような知識を統合し、社会問題を解く訓練は総合的な学習の時間や課題研究で行われていますが、そこに潜むリスクを認知し、それを回避する方法を学んではいません。しかし欧米の教育を見ると、科学技術を扱った教育や最近ではSTEAM教育と言われる分野で、システム思考やICE(氷山)モデル等の思考法を導入した教育展開が試みられています。日本でも、日本産業技術教育学会や日本科学教育学会等の教育系学会で近年盛んに研究が行われています。本研究室でも、小・中学校のプログラミング教育や中学校技術分野を中心とした教育で、実践的な研究を行っています。例えば、エネルギーに関する知識は、社会科、理科、技術・家庭科など色々な教科で学んでします。しかしながら、発電の仕組みやそこで使われる燃料をどの様に手に入れているかは学んでいても、今の発電方法の構成割合がなぜそうなっているのか、自分が大人になった特にどのような割合にしたいのか、それを実現するためにはどんな手立てが必要かと言ったことは、大人でも真面目には考えていません。それを我が事として考え、実現するための努力をしていくことが、地球温暖化を解決し、循環型社会を、或いはカーボンニュートラルな社会を実現する方法だと言えるでしょう。そのために教育方法や学校教育のシステムを開発することが求められています。




そのような意識や価値の変革が求められる学びは、知識注入型の方法ではなく、参加体験型の方法が有効だとされています。実際に、大人になっても覚えている、或いは相手を納得させられる話は、体験から学んだことや自ら発見したことが多いと思われます。今回の新型コロナウイルス感染症のパンデミックや経済的・時間的理由で学校における発電所の施設見学はできなくなっていますが、地球温暖化等を考えると関連する学びを止めるわけにもいきません。そこで、私の研究室では、VR技術を用いた発電所探索アプリの開発やロボット教材によるプログラミング教育を行っています。学校教育や子ども達の学びを支援するために、教材開発、授業開発、出前授業、教員研修、ものづくり教室などを企画・実施していますので、お気軽にご相談ください。




〇研究内容例
・藤本登,高倉健太郎,“中学生が予想した2030年の電源構成と国の想定との比較から見た生徒の思考の傾向分析”, エネルギー環境教育研究,15(2),1-10,(2021).
・吉村天心,藤本登,“技術教育におけるリスク関連情報の収集―スマートフォンが集中力に与える影響の検討―” ,日本産業技術教育学会九州支部論文集,24,45-50,(2017).
・藤本登,藤木卓,上野耕史,“技術ガバナンスから見た原子力に対する中学生の意識調査”,エネルギー環境教育研究,11,1,53-58,(2017).
・藤本登,神崎悠輔,“実験やふりかえり活動が地球温暖化防止活動に与える影響-技術科のランプシェードの製作活動を例として-”,エネルギー環境教育研究,7(1),35-42,(2013).
・藤本登,森岡亮,外園公誠,”省エネ型登坂ロボットを用いたロボコンの授業化への試み”,日本産業技術教育学会,52(2),119-127,(2010).
・藤本登,“公立学校における光熱水量動向と学習内容の提案”,日本エネルギー環境教育学会,エネルギー環境教育研究,4(1),49-56,(2009).



〇出前授業等の実績
・エネルギー環境教育 関西ワークショップ研究会2021年度 第4回 全体会講演「エネルギー環境教育の視点とエネルギー問題」,2021.7.15  など教員関係講演・研修会178回
・長崎大学Jr.Dr.育成塾「ロボット作り教室」 など教育関係教室273回
・鹿児島県中種子町立中種子中学校出前授業「種子島から未来の循環型エネルギー社会を考える」,2021.11.30 など学校への出前授業173回



〇支援団体及び開発教材等の情報
エネルギー環境教育に関する意見交換会[九州教職員ネットワーク]
http://www.q-enecon.org/kaigi/koukankai.html




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