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「新型コロナウイルスに翻弄された一年
長崎大学生が考え、掴んだこととは」
6人の長大生の座談会 前編

 新型コロナウイルスの影響が直撃した2020年、長崎大学でも自粛を余儀なくされた期間がありました。 しかし、長崎大学生はただ自粛していたわけではありません。制限の範囲内でできることを見つけ、行動していました。ここでは6人の現役長崎大学生に生の声を聞いてみます。
※本座談会で登場する科目やその内容は2020年度当時のものです。 カリキュラムは年度ごとに内容が変更される場合があります。

【長崎大学の2020年】

 入学式を代表者だけで実施した後、そのまま自粛期間に突入。全学年全授業をオンラインでスタートした。部活やサークル活動も制限された。7月に自粛は解除となり、一部対面授業を開始。しかし2021年1月、感染拡大第三波を受け、再度全てがオンライン授業となった。

MEMBER

経済学部 2年生馬場 和正さん

兵庫県出身。高校時代から清掃ボランティアに参加。長崎大学入学後は文教キャンパス内の池の清掃ボランテイア「水際アンビュランス」を発足させた。

水産学部 2年生小林 大瞬さん

静岡県出身。アジの干物が有名な沼津市の生まれで、同じくアジで有名な長崎に親近感を持つ。長崎発グローカル人材育成プログラム(GP)※1に参加している。

多文化社会学部 2年生古賀 愛子さん

福岡県出身。いろんなことにガチ(本気)で挑むため中学時代からのあだ名はガチ子。小林くん同様G Pに参加し、留学生と交流をもつ。趣味はカメラ。

情報データ科学部 2年生矢嶋 佳織さん

長崎県諫早市出身で自他ともに認める長崎LOVER。長崎の魅力を発見・発信する学生サークル「TSUNAGU」※2に所属しているほか、ボルダリング部にも所属。

水産学部 3年生松浦 栄人さん

静岡県出身。好奇心旺盛で水産学部生ながら工学部にも教えを請うほど学びに貪欲。ドローンの免許を取得し、ドローンを操るグループ・長崎ドローン空援隊を組織。

環境科学部 4年生釘宮 里奈さん

大分県出身。長大生による長大生のための学生支援団体「ピア・サポートふらっぴあ♭」※3の代表を務める。理科教員免許状取得のために教職課程も受講する頑張り屋。

Q1
非常事態下でのスタートを
当時新入生だった2年生は
どう感じたのか。

馬場

入学前の大学生のイメージは「多くの友達と一緒に色々な活動をする」というもの。しかし、現実は会って友達を作ることができません。可能な手段はSNSしかなく、Twitterで検索して友達を探しました。1人つながったら、その人を起点にさらに広げる……を繰り返し、経済学部1年生全体のグループができ、そこから派生させて同じ授業を受けている学生グループもできました。

小林

水産学部も経済学部同様、SNS上のネットワークが広がっていたようです。が、残念ながら当時の僕はSNSを使っておらず、前期は一人でパソコンを見つめる日々でした。さすがに淋しくなってInstagramを始めた時には、すでにコミュニティが出来上がった後。そこから、自分で人脈を開拓しなければいけない状況でした。

古賀

びっくり‼︎ 淋しいスタートだったんですね。開拓できてよかった。多文化社会学部はほとんどの1年生が寮生活を送るので、自粛期間はルームメイトと絆をうむ期間になりました。通常日本人学生3人と留学生1人の4人のルームシェアなのですが、コロナの影響で留学生がおらず、日本人3人だけで残念でした。それでも側に人がいてくれることは心強かったです。その後、他学部の学生とも知り合いたいと思うようになりました。

矢嶋

私も新入生同士のネットワークはすぐにできました。高校時代の同級生がいたので早かったです。ただ、情報データ科学部は昨年創設されたばかり。他学部と違って頼れる先輩がいないのが心細い点でした。大学のことも学部のことも分からない状態だったけれど、先生方が細やかに声をかけてくださって、不安を払拭してくださいました。授業を受け、課題をこなし、オンライン上の交流を広げる……などの基本的な学びの基盤を、先生と学生が一体になって作っていったと感じています。

Q2
3・4年生は昨年とのギャップを
どう感じたのか。

釘宮

それまでの“当たり前”が突然なくなり、大学に通えることのありがたさを痛感しました。何より友達と会う機会がなくなったのが辛かったです。また、環境科学部では2年生の後期から実験科目が多くなるのですが、それらもオンラインになりました。実験の流れを動画で見て、解説を聞き、レポートを書きます。でも、体験していないため想像で書いている感覚。直接の指導がいかに貴重なのか分かりました。動画で満足できなかった実験は担当の先生の研究室に伺って質問します。理解はできますが、実験の充実感や楽しさは得がたいですよね。

松浦

僕も同様のもどかしさを感じました。2年生になって期待していた実習の一つにエビの解剖実習がありました。自ら解剖して一つひとつの臓器、組織の子細をスケッチするものです。しかし、この実習もオンラインになりました。解剖の流れや解説はもちろん、臓器も黒画用紙の上に並べられた映像で見ました。自分の目で見る鮮明さとは程遠く、インパクトもありません。また、授業後の友達との会話も大切だと思います。学んだことをより熟成させて理解度を高める効果があるからです。友達と知識を共有することもできず、100%の理解度が80%に止まっているような虚しさが残りました。

Q3
7月から一部対面授業が始まった。
どう感じたのか。

矢嶋

自粛緩和と共にグループワークの授業が始まりました。それまでオンライン上でしか顔合わせできなかった同級生と討論する機会ができたことは単純に嬉しかったし、それまでの時間を取り戻すように議論は白熱しました。テーマは「情報技術を使って長崎県をもっとよくするにはどうしたらいいか」。授業時間が終わってもトークは続きました。みんなの問題への関心や意識の高さを感じて、ワクワクしましたね。

馬場

活気づいたんですね。経済学部は一学年の人数が多いので、7月以降もオンライン授業が多かったのですが、僕が対面授業のありがたさを感じたのは教養科目の語学です。フランス語を選択していましたが、初めて学ぶ言語の発音は一人で習得するのは難しい。グループだと、間違った発音をしていたら教えあうことができるし、笑い合えるから、楽しみながら勉強できるのが嬉しかったです。

古賀

私も授業の満足度が上がりました。そして、空きコマの時間も楽しくなったなぁと思います。例えば、私は水曜日1限、3限、5限に対面授業がありました。ひとりだと空きコマを持てあましがちですが、友達といると、ただ学食で雑談するだけでも充実します。オンライン上のやりとりでは、連絡事項だけに終わるけれど、実際に会うと勉強のことだけでなく自分のことも話すから、人間関係が深まるのだと思いました。

小林

僕も対面になってようやく友達が増えました。ただ、いきなり対面が始まったので、最初のうちは生活リズムを戻すのに慌てました。1限からだと朝ギリギリに着いてしまったりしました(笑)。自粛期間はのんびり起きていたので。

松浦

小林くんみたいな学部の後輩と交流できたのは対面授業が始まって以降ですね。1年生の頃のノートを貸して先輩らしさを出せました。ところで、1年生の教室を覗いたときに、学年全員に一体感があってスゴいと感じました。僕らの学年はいくつかのグループがそれぞれでまとまっている感じで全体が一つではない。SNSでつながった一体感かなと思いました。

小林

そうですね。それまで、実質的な繋がりがなかった分、自粛期間終了後もつながり続けて大きなグループになっていったかもしれません。

釘宮

1年生が大学生らしい生活を始められていたと聞いてほっとしました。ふらっぴあ♭※3の活動を通して新入生の厳しい現状を聞いていたので心配でした。よく聞いていた悩みは、例えば「LACS(ラックス)※4の使い方がわからない」「課題を提出したが、無事に提出できているのか不安」などの声が多かったですね。

矢嶋

確かにLACSには最初戸惑いました。また、授業の受け方も最初は分かりませんでした。zoom以外のソフトを使った授業があり、参加できているのかさえ分からず、授業中に友達にLINEで確認したことがあります。

馬場

僕も不安がある時は、友達と連絡を取り合えるようにしながら授業を受けていましたね。

釘宮

皆さんのように自分で解決できる場合は良いのですが、解決できない場合はふらっぴあ♭を頼って欲しいです。他にも「家にこもることが多く、やる気が出ない」「自分がダメな人間に感じる」などの精神的な悩みも多かったです。そんな場合も、学内のふさわしい機関を紹介できるので、まずはふらっぴあ♭に連絡をください。

Q4
逆に、オンライン授業で
良い変化はあったか。

松浦

新たな勉強法を開拓できました。コロナ以前、先生方の配布資料はプリントでしたし、僕もノートにメモをとっていました。オンライン授業になり、資料をPDFでもらうことが多くなったので、タブレットとタッチペンを買いました。PDFに直接書き込めるからです。また、授業動画の中で理解できない図や表があった場合、スクリーンショットを残して、後で見直すこともできて、そういう意味では便利になりました。

小林

確かに、勉強の仕方は変わりましたね。例えば、オンライン授業でもリアルタイム型とオンデマンド型があるんです。オンデマンド型はアップロードされている動画を自分の見たいときに見られる形なのですが、自分が分からない箇所を何度も再生できます。テスト前に見直すこともできます。それで理解度が高まりました。

古賀

リアルタイム授業でも良い点はありますよ。対面授業だとグループワークやペアワークの時に話す相手が決まった人になりがちですが、オンラインの場合、ランダムに人選をするので、今まで話したことがなかった人と話す機会ができました。もちろん、初対面の人との会話は緊張しますが、顔見知りは増えるのでメリットだと思います。

馬場

皆さんの話は「なるほど」と思います。でも、僕は、例えオンライン授業にメリットがあったとしても対面授業の方が好きですね。オンラインには臨場感がありません。特に経済学部は大人数での座学が多いため、オンライン授業が多いのが実態で、まだ満足できるほど先生と話せていない状況です。

釘宮

確かに対面の方がいいですよね。ところで、先生と話せていない点ですが、私の印象では先生方は学生が訪問するのを待っていると思います。だから会いに行ってもいいと思いますよ。私は3年生だったので先生との関係があったからかもしれませんが、研究室によく質問に行きました。「よく来てくれたね」と迎えてくれますよ。

松浦

僕も訪問します。あらかじめメールでお願いしておくと、先生方は確実に時間をとって待っていてくれますよ。大学は学びを求める場所だから、自ら訪ねてくる学生に先生は積極的に対応をしてくれます。コロナ禍でも感染防止対策をした上で、積極性を見せていくのはとてもいいと思います。

馬場

ありがとうございます。訪問してみます。

※1 長崎発グローカル人材育成プログラム(GP)
長崎県内の大学・短期大学等が連携して実施している教育プログラム。留学生と日本人学生が共に学び、協力しながら、様々なイベントを企画・運営する中で、将来グローバル社会で、またそれぞれの地域で活躍するための基礎を培うことを目的としている。
※2 「TSUNAGU」
長崎県が主催する長崎県出身の大学生によるコミュニティ&サークル活動。長崎の魅力や働くことの価値や意義を再発見することを目的にイベントや地域活動を行なっている。
※3 ピア・サポートふらっぴあ ♭
長崎大学で学生支援活動をしている学生ボランティア団体。1年生をはじめとする全長大生がより良い学生生活を送るために相談にのり、一緒に解決法を探してくれる。文教キャンパスの学生支援センター内にピア・サポートルームがある他、TwitterのDMでも相談を受け付けている。
※4 LACS(ラックス)
正式名称は、主体的学習促進支援システム。愛称のLACSはLearning Assessment & Communication Systemの略。長崎大学におけるオンライン授業等のICT利活用教育の基盤となっている。教員はLACSを通じて、学生への連絡、資料提示、課題、テスト、オンデマンドビデオ配信、Web会議への誘導等さまざまな活動を行うことができる。学生は、教員への連絡、課題の提出、テストの受験、オンデマンドビデオの視聴、Web会議への参加等を行うことができる。

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