長崎大学にはその後の人生を大きく左右するターニングポイントとなる 制度や機会、出会いがたくさんあります。
では実際に、学生の皆さんは学生生活の中でどのような転機を迎え、 そしてステップアップしているのでしょうか。
今回の特集は、各学部を代表して20人の学生に 入学から現在に至るまでの歩みを振り返っていただく特別企画。
ターニングポイントとなった出来事を通して、 長崎大学ならではのカリキュラムの特徴や学生生活の魅力についてお伝えします。
大学案内や各学部パンフレットと併せて読んでいただきたい1冊です。

※この記事はChoho第68号(2019年7月発行)を再編集したものです。
現在はカリキュラムが変更となっている学部があります。最新のカリキュラムは各学部ホームページでご確認ください。

多文化社会学部School of Global Humanities and Social Sciences

多彩なプログラムから見えてくる
自分らしい学び方の選択

2018年の新カリキュラム導入に併せて、4コース制から5コース制に変更。
コース選択の時期や科目の再編・統合も行われました。学部長の葉柳和則教授のお話です。
「大学における学びは、先生は100点の答えを知っていて、生徒はそれを目指して頑張るという勉強とは本質的な部分で異なります。自分で立てた問い、まだ誰も答えを知らない問いに対して、学生生活の中で自ら探求し答えを出すのです。教員が話す内容に関しても、本当にそうなのかと疑問を抱いてみることが重要です。このような目的を視野に入れ、新カリキュラムでは1年次に共通科目を幅広く受講する中で、大学での学び方を理解し、自分に合った専門分野を絞り込んでいきます。コース選択は2年に上がるタイミングで行い、同時期にゼミに所属。そうすることで早い段階から専門性を高められます。初年次セミナーや演習系科目など、教員と学生が同じ目線で行う少人数の授業も、本学部が重視しているポイントです」。

グローバル社会で活躍するために必要なスキルとして、高度な外国語能力の修得にも力を入れていますね。
「はい。英語教育の一環として、1年次に1カ月弱の短期留学を必修としています。また、全体の約4割の学生が、半年から1年間の中期・長期留学に行きますが、大学に残ってじっくりと勉強を続ける学生も少なくありません。短期で学べる海外インターンシップなど、多彩なプログラムも整えています。」

平和学習の在り方を研究中 海外インターンシップは短期でも深い学びがあります 海外インターンシップは 短期でも深い学びがあります

関心があるのは国際情勢。
この学部で将来のビジョンが
明確になりました

永江早紀さん社会動態コース 4年

校までの勉強に疑問を感じ、大学進学についても前向きではありませんでした。そんな時、高校の先生から「大学はあなたみたいな人が行く場所」と言われ、背中を押される形で受験。大学では、先生方が研究されていることを共有して下さり、その中から疑問点を見つけることができます。答えを教えるのではなく、自分自身で考えを深めるように導いてくれるんです。興味深い科目もたくさんありますし、考えることが得意な仲間たちと議論を交わす時間もとても有意義。この学部で学ぶようになってから、勉強に対する意識がガラリと変わりました。

3年次には、自主企画の海外インターンシッププログラムにチャレンジしました。行き先はハワイのパールハーバー。エデュケーションディレクターの下でパールハーバー内の展示物についてディスカッションを行い、現地の教育機関や高校にも出向いて交流しました。私はもともと国際情勢に関心があり、核兵器廃絶長崎連絡協議会が主催する人材育成プロジェクト「ナガサキ・ユース代表団」の7期生として、平和活動にも取り組んでいます。インターンシップを通して、過去の出来事や先人たちの存在が今の自分につながっていると実感しました。だからこそ、例えば平和教育を軸に置いた長崎とハワイをつなぐプロジェクトなど、これからを考えるための新しい平和教育が必要だと考えています。実は卒業後の進路は未定です。自分がやりたいこと、ワクワクする気持ちに正直でいたいと思っているので、新しい進路を模索しています。

就職するか未定。
将来について
思案中!

いまココ!
シンポジウムで発表

5月に開催された多文化社会学部主催のシンポジウム「平和教育のこれから:ハワイと長崎をつないで」で、事例発表を行いました。

ナガサキ・ユース代表団の一員としてNYへ
海外インターンシップ
プログラムに参加
パールハーバーへ
大学で学ぶことの
楽しさを知る!!
大学進学に違和感を
感じつつ受験。
卒業研究+就職活動。
アジアのトイレ事情について、
研究成果を卒業論文にまとめて
発表したいと考えています。
いまココ!
留学
完璧主義で自分自身を追い詰めてしまう時もありました。生活リズムがゆったりしているタイの大学で学んだことで「できる範囲のことをやればいいんだ」と気持ちに余裕を持てるようになりました。

留学中は制服で登校していた田村さん。「留学前に、卒業単位に必要な授業はたくさん履修しておいたので、帰国後は余裕を持って就職活動に取り組めています」。

アジアのトイレ事情調査がきっかけ! 多くの人の住環境を向上できる仕事に就きたい 多くの人の住環境を 向上できる仕事に就きたい

関心があるのは国際情勢。
この学部で将来のビジョンが
明確になりました

田村絵里花さん グローバル社会コース 4年

期・長期留学を挟みつつ、4年間で卒業でき、奨学金制度など金銭的な援助システムが充実している大学を希望していたところ、条件にぴったりだったのがこの学部でした。入学後は、留学資格に必要な成績をクリアするため猛勉強。完璧主義でもある私は、特に2年から3年前期まで、授業、語学学習、レポート提出に加え、アルバイトもこなすめまぐるしい日々を過ごしました。挫けそうになりましたが、私と同じように夢を持って頑張っているコースの仲間たちに支えられました。

留学先はタイのバンコクにあるカセサート大学。3年後期から半年間留学しました。留学に当たっては日本学生支援機構の奨学金制度を活用したのですが、バンコクは物価も安く、金銭的な負担を感じることはありませんでした。現地では、大学の勉強と並行してアジアにおけるトイレ事情について調査を行いました。世界中の3人に1人が、安全で衛生的なトイレを使えないと言われています。例えば、交通網やインターネット環境は日本と同等に整っている国でも、トイレに関してはそうでないのはなぜだろう。そんな疑問から発展したテーマです。現地トイレメーカーのショールームに足を運んだり、タイ人の友人に意識調査を行ったり、都市部と農村におけるトイレの違いについて調査したりもしました。より多くの人々の住環境を快適にしたい。そんな夢が膨らみ、ハウスメーカーやトイレを含む住宅設備機器メーカーに焦点を絞って就職活動中です。

教育学部Faculty of Education

教育現場で少しずつ
経験を重ねながら
一人前の教員に向けて
大きく成長

多彩な実習を経験しながら、教育者として必要な能力や知識を身に付ける教育学部。前原由喜夫准教授のお話です。
「長崎大学の教育学部では、今までも複数の教員免許を取得する学生が珍しくなかったこともあり、2020年入学生からは2種類の教員免許取得を卒業に必要な条件とします。実際の教育現場では、これまで以上に多様な子どもたちのニーズに合わせた対応が求められています。これからの教員には、広い視野と柔軟性だけではなく、教育現場を主体的に変革していく能力が大切だと思います。例えば小学校では新たに英語が教科化され、プログラミング教育も導入されます。それに従って教員の仕事量も増加するので、今後は新しい仕事に対応した効率化や分担がより必要となります。時間を確保して子どもたちへの教育の質を高めるためにも、自ら積極的に環境を変える提案をしてほしいと思います」。

主体性や積極性を身に付けるために、どのようなことが必要ですか。
「教育学部では学習支援実習や野外体験実習、離島・へき地実習など、学生の経験段階に合わせて多様な実習の機会を設けています。それぞれの実習で自ら考えた方法でたくさん挑戦して、たくさん失敗もしながら自分にとっての課題を見つけてほしいと思います。そうした課題に、同じ目標を持つ仲間と協力や議論をしながら取り組む中で、時代に合わせて教育現場をより良くするための積極性や主体性を身に付けることができると思います」。

ゼミの仲間たちの励ましを力に変えて 切磋琢磨しながら同じ夢に向かって挑戦! 切磋琢磨しながら 同じ夢に向かって挑戦!

学級づくりの研究のため大学院へ!
小学校と特別支援学校の
教員免許を取得済み

古賀きららさん専門職学位課程 教職実践専攻
学級経営・授業実践開発コース 1年

は長崎大学の教育学部で、小学校と特別支援学校の教員免許を取得した上で大学院に進学しました。現在はクラスのまとめ方や学級づくりを深く学ぶために研究や実習を重ねていますが、そのきっかけになったのは、3年次の主免教育実習でした。担当教員の指導を間近で見ると、一つ一つの指導における軸が定まっているのを感じました。こうだから褒める、こうだから叱るという理由にブレがなく、クラスが一つにまとまっていたんです。そうした学級づくりをもっと学んだ上で自分も教壇に立ちたいと考えて、大学院の進学を意識し始めました。

でも3年次の実習後、一時は教員という目標自体を見失っていたんです。サークル活動に没頭して長崎を離れることも多く、教員採用試験の勉強にも身が入らない期間が続いて、もう諦めて別の仕事を目指そうと思っていました。それでも、ゼミの仲間や先生はずっと「教員採用試験を全員で合格」と言い続けて、会うたびにあたたかく声を掛けてくれたんです。ゼミ旅行で悩みを打ち明け合うこともできて、4年生の5月にもう一度教員を目指すことを決心しました。そこから追い上げることができたのは、本当に周りの支えのおかげです。長崎大学の教育学部の特徴は、学部全体の一体感です。3年後期にある教員採用試験の特別講義や勉強合宿など、試験に向けて切磋琢磨する機会にも恵まれていて、お互いに高め合うことができます。これから大学院の2年間を有意義に使って、子どもたちにとって居心地のいい学級を実現できる教員になりたいです。

小学校の主免教育実習では、学部時代に学んだICTを活用して授業を行いました。大学のゼミの先生も授業を見学していて、その後の進路に悩んでいる時期に「あの時の実習はすごくよかったよ」と何度も励ましてくださったことが印象に残っています。
毎日たくさんの講義で
忙しい日々
教育実習で理論と
実践の両立の
大切さを感じ、
大学院を意識し始める
いまココ!
ゼミ活動
1年次から
実習があって
びっくり!
教育実習
いまココ!
離島・へき地実習や
短期の学習支援実習は
継続

多彩な教育実習を経験していく中で 不安と迷いが、自信と決意に変わりました 不安と迷いが、 自信と決意に変わりました

地元の長崎県で教員になりたくて入学!
小学校と中学社会の免許を取ります

山口由香さん 教育学部 学校教育教員養成課程
小学校教育コース 4年

ともと生まれ育った長崎県で小学校の教員になりたくて入学したのですが、実際に勉強が始まると、自分には向いていないのではないかと感じていました。1年次から参加観察実習で先輩の授業を見学したり、小学生の宿泊体験を引率したりする実習もあったのですが、子どもと接するのが楽しい反面、今後自分が担当することに自信が持てず、将来きちんとした教育者になれるのか不安でした。そんな気持ちが大きく変わったのが、実際に授業を担当する3年次の主免教育実習でした。1カ月という長い期間、小学校の同じクラスを担当したので、授業以外でも子どもと触れ合う機会が多くありました。「先生、できたよ!」と目を輝かせる子どもたちの成長を間近で感じることができて、改めて小学校の教員を目指したいと決心しました。

もちろん実習では、自分の未熟な部分も感じました。事前に授業の進行をまとめた指導案を細かく作っていたのですが、担任教員から「自分の想定した内容に縛られ過ぎると、その瞬間の子どもの反応を大切にできないよ」と言われました。先生は最初と最後を中心に決めて、あとは生徒の発言に合わせて授業を柔軟に進めていて、常に子どもたちの反応に気を配っていました。また授業に興味を持たせるため、最初に一見無関係なニュースや出来事を話し、それを最後のまとめにつなげていくようにしていました。実際の現場で担任の先生から学んだことを、今後の卒業研究や教員になった際にも生かしていきたいと思います。

小学校の主免教育実習では同じクラスを担当している仲間たちと一つの単元を教えることもあり、お互いに協力しながら指導案を作成。実際の教育現場でも教員同士の連携や情報共有が重要となるので、とても貴重な経験になりました。

経済学部Faculty of Economics

実践力を磨く二つのプログラム
高いハードルの先には
ステップアップが待っている

学科4コースの下で実施しているプログラムが「国際ビジネス(plus)プログラム」と「ビジネス実践力育成プログラム」。
それぞれどのような特徴があるのでしょうか。
「国際ビジネス(plus)プログラム」について、国際交流委員長の井田洋子教授に伺いました。
「貧困問題や環境問題など地球規模の課題に対して、多様な文化や歴史的背景を理解しながら他者と共に解決を目指す志を持った、グローバルな人材の育成を目指しています。鍵となる英語力を磨くため、プログラムでは1年次後期から4年次にかけて、段階を追った英語教育カリキュラムを実施しています。短期海外研修と海外留学を義務付けており、修了までにはたくさんのハードルを乗り越えることになりますが、その分、プログラム修了証書は勲章になります」。

「ビジネス実践力育成プログラム」も学習意欲の高い学生が履修するプログラム。
みらい創造センター長の西村宣彦教授のお話です。
「大学で学ぶ専門知識を生かし、社会が抱える課題を解決できる人材育成を目的としたプログラムです。主な柱となるのは、実践型の専門ゼミとプロジェクト演習。具体的には、民間企業や行政の方々にクライアントになっていただき、学生自らが経営課題の解決を目指しつつ、ビジネスパーソンとして必要な基礎的スキルを磨きます。学生のほとんどは大学に入学するまで、成功すると分かるものにしか取り組んできていません。失敗から見えてくることもあります。このプログラムの履修を通して、考え抜く力を養ってもらいたいと思います」。

※この記事はChoho第68号(2019年7月発行)を再編集したものです。現在はカリキュラムに変更があっております。現在のカリキュラムはこちらからご確認ください。

経済学を学びつつ英語力を高められる

メリットの高い学部です

将来は海外で
生活してみたいです!

能戸悠太郎さん経営と会計コース 4年

校生の頃から夢は海外留学。「国際ビジネス(plus)プログラム」に魅力を感じ、この学部に進学しました。プログラムには、英語で行うさまざまな授業があります。中でも、2年次に受講した留学生との共修ゼミは、出身国によって異なる発音の人や、実力の差が歴然とした人がいる中でディスカッションする刺激的な授業でした。実はプログラム受講当初、TOIECのスコアは360点だったんです。平均を下回っていましたが、留学直前には650点をクリア。例えば、音楽なら洋楽を、歌詞を見ながら聴いて、普段の生活から英語を意識していたんです。イギリス人の先生の「留学をゴールにするのではなく、留学経験を通して何を得たいのか、目的や目標を定めることが大切」という考え方が、僕にとって英語を学ぶ指針にもなっていました。そこで僕が最初に立てたのは、留学を通して異なる文化の国の人たちと関わりたいという目標でしたが、授業を受けていく中で変化していきました。もっと本質的な部分を身に付けたい、ただ英語で会話をするのではなく、相手が本当に伝えたいことは何なのかくみ取れるようになりたいと思うようになったんです。

3年次の9月から、ヨーロピアン・ビジネス・スクール(EBS)パリ校に留学しました。担当教員自身の経験をもとにした話を織り交ぜながら、異文化におけるビジネストラブルについてグループワークで理解を深める「Managing across borders」など、6つの科目を履修。ドイツ、スペイン、ポーランドなど諸外国の学生たちと学ぶ中で、英語力や精神面も鍛えられ、何事にも物怖じしなくなりました。

卒業論文は日本の英語教育に関わるテーマを英語で執筆します。経済学を学びつつ英語力を高められる点は、この学部ならではのメリットですね。

ネイティブの先生の
英語を聞き取れず
苦しい時期も
学科とプログラムを並行して、
たくさんの授業を受ける日々

4カ月間のパリ留学中に撮影した1枚。現地の学校では、ビジネスに関するカリキュラムを英語で受講しました。パリは通りすがりの人たちが「ボンジュール」と気軽にあいさつしてくれるやさしい街でした。

EBSパリ校留学
いまココ!
先生のアドバイスを
受けつつ英語で
卒論を執筆!

ビジネス実践力育成プログラムは、現在2年次から履修。ディスカッションする授業では、司会役となるファシリテーターと意見を書き出すグラフィッカーを持ち回りで担当します。アンケートやインタビューをはじめ、民間企業や社会人とのワークショップの場も充実。修学旅行の商品化にも取り組んでいます。

3年次
いまココ!

NPO法人Slopeersは、地元での就職促進と県内企業のPRを目的とし、長崎大学経済学部の学生が主体となった組織です。

実践を通して弱点と向き合った3年次の経験は自信にもつながりました

正面から意見をぶつけ合える
仲間に出会うことができました

加生周子さん グローバル経済コース 4年

学4年間で何かを身に付け、成果を残したいという気持ちがありました。「ビジネス実践力育成プログラム」が今のバージョンで正式に始まったのは平成29年。私はプログラムが発足する前、試験的に行われていた授業を受けた学生の1人です。3年次から専門ゼミに在籍し、傾聴力やプレゼンテーション法などスキルを磨く授業と並行して、プロジェクト演習に取り組みました。担当したクライアントは、起業して1年目の風力発電売電会社。学生チーム6人でビジネスプランの計画や営業活動に同行し、最終的には2社と契約交渉を結ぶに至りました。メンバーはみんな意欲が高く、個性が強い人ばかりだったので、プランを練る過程で議論が白熱することもありました。私は自分の思いをうまく言葉にできない性格ですが、意見を伝えてチームに貢献したい。自信を持って発言できるように、風力発電についてリサーチを行い、トレンドを探るなど動き始めました。

3年次には「NPO法人Slopeers」の代表理事も務めました。組織統括と企業との交渉役が私の仕事。30人のメンバーを統括する役目は想像以上に大変で、不甲斐なさを感じてばかり。西村教授に相談したところ、「意志を貫く力とメンバーの創造力を信じる力が足りない」と指摘され、プロジェクト演習でも感じたように、私には言葉の強さが欠けていると気付きました。そこで長崎に貢献するためにはどうしたらいいのか、改めて自分なりのビジョンをメンバーに伝えることにしました。これを機にメンバーから意見が出始めるようになり、組織の団結力も高まっていったように感じました。転機になったのは、この3年次の1年間です。

医学部 医学科School of Medicine

島へ、海外へ。
その場所で発見できる
目標がある

医学部医学科の特徴について、副学部長の栁原克紀教授に伺いました。
「医学科は基本的に医師養成が目的なので、カリキュラムはどの大学でも95パーセント同じです。異なるものとしては、長崎の地域医療に従事する人のための地域枠や、研究者を目指すグローバルヘルス研究医枠があります。高校生の頃から『自分は長崎で医者をやりたい』とか『研究者になりたい』と明確な目的を持つ人はぜひトライしてほしいですね。6年間のカリキュラムで特徴的なのは、3年次のリサーチセミナーで基礎研究室に2カ月間配属され、研究者マインドを身に付けられること。この中には海外臨床研修もあり、オランダのライデン大学など、長い歴史の中で培った交流関係を持つ海外の大学で研修でき、それが大きなターニングポイントになる学生もいます。もう一つは、離島医療実習です。島をフィールドにした地域医療教育は、特に他県からの学生にとっても他大学の医学部では得難い貴重な経験となります」。

離島実習で学んだ“見極め”判断の重要性 離島実習で学んだ “見極め”判断の重要性

子どもの頃から病気がちで手術を受け、
医療が身近にありました

和才直樹さん6年

は福岡出身なのですが、5年次に下五島に、6年次に対馬での離島実習に参加しました。島に行くまでは、きっと年季の入った建物で機械類も少なくて……という先入観だったのですが、特に対馬は数年前に移転したばかりの立派な病院でした。中でも勉強になったのは総合医療の「見極め」です。島では時折ヘリコプターで本土の病院に搬送されます。「ここまでは自分たちでできるけれど、この先は福岡に搬送しよう」「今の患者さんはまだ島で治療できる」という判断する時、島の医療事情、患者さんの病状や年齢、家庭環境など様々な要素を勘案することを具体的に説明してくださり、非常に勉強になりました。島に行ったからこそ学べたことです。

対馬での休日。実習中は写真を撮れるような余裕はとてもありません。休日はシーカヤックや釣り、乗馬など、島ならではのアクティビティを満喫しました。
いまココ!
対馬に
離島実習
下五島に
離島実習
サークルは医学部バドミントン部に入部。医学部生の多くは学部の部活に入ります。先輩後輩のタテのつながりが得られ、医学系大学の大会で他大学の友人もできやすく、ネットワークが広がります。
いまココ!
リサーチセミナーで
オランダライデン大学に
海外研修
入学当初はワクワクしますが、自分の時間管理はしっかりやりましょう

ライデン大学での経験を経て、海外での研究を視野に ライデン大学での経験を経て 海外での研究を視野に

未熟児で生まれて
「あなたは助けられた命」と
両親から言われ、自然に医師を志しました

狩野真由子さん 4年

3年次のリサーチセミナーでオランダのライデン大学に3カ月研修に行ってきました。朝目が覚めると「今日一日が始まった!」と感じ、毎日が充実していましたね。平日はラボにこもって、週末は国内外旅行に充て、2度ほど熱を出すもののアドレナリンでカバーしているという毎日でした。循環器の基礎研究室で、先方のラボでも初めての研究テーマで、手探りながらも貴重な経験ができました。帰国してからも、気が付けば無意識に海外プログラムを調べていて、将来は海外で働くことができたら……とも考えています。私にとっては大きな転機でした。医学科では学ぶべきことが多いですが、私は医師になりたいという目的がはっきりしているので、勉強はそれほど苦にはなりません。周囲に恵まれているのかもしれません。興味のあるラボに自主的に勉強に行くような友人も多く、「いつでも研究室においで」と受け入れてくださる先生もいて、勉強しやすい環境です。

ライデン大学のラボにて。日本人は私一人で最初は不安でしたが、皆さん親切に接してくれてすぐ慣れました。

医学部 保健学科School of Medicine

他職種との共修は
質の高い専門家への入口でした

保健学科には、看護学、理学療法学(PT)、作業療法学(OT)の3つの専攻があります。江藤宏美教授、井口茂教授、田中悟郎教授に伺いました。
「看護系大学は全国で約270校、PTやOTを学ぶにしても専門学校を含めるとたくさんの選択肢があります。その中で長崎大学の強みは、医学科、歯学部、薬学部との共修科目が多いこと、各分野のエキスパートである教員による学びの質が高いことが挙げられます。カリキュラムは、1、2年次で他専攻や他学部との共修が行われ、3年次から専攻別の科目と長期の実習が始まります。ヤマ場はやはり実習で、経験後には顔つきも引き締まって専門職への自覚が生まれます。『このジャンルをもっと学びたい』という学生は大学院に進み、さらに専門に特化した知識を身に付けます。海外研修や国際学会に参加するチャンスもあり、専門分野の世界がぐんと広がり、深まります。そのような経験ができるのも長崎大学ならではといえます。他県出身の学生の中には、本学科を卒業後、地元には戻らずそのまま長崎に就職し、大学主催の勉強会に参加しながら切磋琢磨する人も多いですよ」。

他職種同士の連携の大切さを実感しました 他職種同士の連携の大切さを 実感しました

助産師になるため
大学院への進学を希望しています。

高橋実紗子さん医学部 保健学科 看護学専攻 4年

には介護を必要とする家族がおり、看護師は身近な存在でした。入学時に母から「助産師の資格も取っておいたら?」と勧められたのですが、命の誕生に関わる重みを考えると簡単な気持ちではできません。しかし、講義で女性の身体の仕組みや医療の現実を知り、自然なお産を提案できるプロって素晴らしいと感じました。また、共修を通じて、自分の専門について学ぶだけでなく、他職種同士が知識を共有する医療の大切さも実感できました。大学では保健学科の知識が生かせるボランティアも紹介してもらえます。受け身だった高校時代とは違い、積極的に求めれば経験できるチャンスがあります。漠然とした夢だった看護師という職業を具体的に究めていく時、それを伸ばしてくれる環境があるのは大きいですよ。

ボランティア活動で行った施設では、障害の種類も程度も違う一人一人と向き合う貴重な経験ができました。
いまココ!
卒業論文は親と子を対象とした産後早期の家族の睡眠について取り組もうと考えています。
他専攻、他学部との
共修で得られる気づき
いまココ!
実習で3つの病院へ

ここでの出会いが目指すべきPTの目標に!

大人も子どもも診られる理学療法士が目標 大人も子どもも診られる 理学療法士が目標

自分にはサラリーマンより
人と密に接する仕事が
合っていると思い志しました。

山本晨平さん 修士課程 保健学専攻 1年

岡出身です。九州でPTを学べる国公立大学は、長崎、鹿児島、大分しかなく、親戚がいる長崎に決めました。これまでの学びの中で転機といえるのは、3、4年次の実習ですね。小児のリハビリ施設に行ったのですが、患者の子どもはもちろん、保護者の方の不安や悩みにもしっかり応える先生を見て感銘を受けました。以来、「大人も子どもも診られる理学療法士」が私の目標となり、もっと専門的に学びたくて大学院へ進みました。先日はスイスの国際学会に行き、最新医療情報に触れる機会がありましたが、一方で英語でのコミュニケーション力が不足していると感じました。今後、子育て支援センターなどに外国人親子も訪れ、英語のニーズは高まるでしょう。そのためにも英語力も高めたいですね。

スイスの学会にて。ディスカッションでは障害者の就労支援の状況といったテーマで日本の事例などを紹介しました。

歯学部School of Dentistry

医療人としての心構えを基礎に
どんな歯科医師や
研究者になるかは自ら考える

歯学部のある大学は全国で29校あり、そのうち国立大学は11校です。長崎大学ならではの学びとは何でしょう。歯学部長の村田比呂司教授に伺いました。 「どこの大学で学んでも、国家試験に合格して取得する歯科医師の国家資格は同じです。しかし、どのような歯科医師になるのかは大いに違いますよ。長崎大学は医学部と薬学部もある総合大学ですから、その強みを生かし、独自のカリキュラムで先進的な教育が受けられます。特に近年、研究の基礎を学びリサーチマインドを養うプログラムが強化されています。歯科医師として社会に出た後、世間に広まる最新医療情報が正しいものか否かを取捨選択できる能力を身に付けるためです。

6年間の流れとしては、1、2年次で教養教育、歯学領域の基礎科目の他、歯科医院などでの早期体験実習プログラムがあります。2年次には解剖学実習を行いますが、この貴重な実習で医療人としての心構えと自覚が芽生えます。身体全体の一般医学をベースにしながら、口腔領域を勉強していきます。しかし一番のヤマ場は大学病院における臨床実習でしょう。それまでは模型を使って技術を習得するわけですが、実習では指導教員の下で患者さんと向き合い、歯科医師の実際の仕事を習得します。学生の顔つきも引き締まり、社会性が出てきます。AO入試で入学した学生は大学院での博士(歯学)取得を前提とした歯学研究コースを選択するのですが、通常のカリキュラムに加えて3年次から週1回ペースで歯学研究を行い、専門分野に特化したスペシャリストや指導的役割を担う歯科医師を目指します。

臨床実習は緊張の連続でしたが だんだん歯科医になる自覚が芽生えてきました だんだん歯科医になる 自覚が芽生えてきました

歯科の領域の広さに
最初はとまどいを覚えました

坂口弘晃さん6年

6年間を振り返ってみると、いくつかターニングポイントはありますね。入学した当初は歯科の世界が予想以上に広くて「こんなものまで歯科で学ぶのか!」と衝撃を受けました。3年次ごろから履修科目はどんどん増えるし、5年次のCBTとOSCE(全国共通の歯学共用試験)では、それまで学んだ知識の総復習でかなりハードに勉強します。しかし一番大変なのはその後の10カ月の臨床実習です。私も初めての実習では先生の介助や器械を使った歯の掃除などを行ったのですが、緊張で汗びっしょり、「失敗したらどうしよう」、「痛いと言われたらどうしよう」と手が震えました。すべての科を回るうちにだんだんと慣れてきて、それぞれの先生の治療のやり方や考え方の違いを知りましたし、技術だけでなく、患者さんの話をどのように引き出し、説明をするのかなど、会話の重要性も目の当たりして、歯科医としての心構えができました。もっとも、実習が忙しいと学んだ知識を忘れがちになるし、2つを両立させる難しさは常に感じています。

サークルは室内合奏団に在籍し、バイオリンを担当して大学病院でのロビーコンサートにも出演しています。活動を通して他学部の友人もたくさんでき、世界も広がります。この多様性は単科大学では経験できません。熊本出身で、卒業後に故郷に帰るか長崎に残るか、今悩んでいます。そのくらい長崎の居心地がいいのは事実です。

いまココ!
臨床実習!

(離島実習も含む)

バイオリンは子どもの頃からの趣味。病院のロビーコンサートでは、目の前で聴いている患者さんの顔つきが和らいでいくのが分かり、医療と音楽の融和性を感じます。

「解剖学実習」歯科の対象は首から上だと思っていたら全身だったので驚きました
いまココ!
臨床系「歯科補綴学」
研究室

歯科補綴学の研究室。義歯の材料の研究や老年歯科医学など、授業で先生の講義を受けて「こういう世界もあるんだ」と興味が湧きました。

先生方の前で英語で研究テーマのプレゼンテーション
研究コースとして基礎系「口腔病理学」研究室で学ぶ
AO入試

ブレてもOK、 今はテーマを絞り込まずに好奇心第一主義 今はテーマを絞り込まずに 好奇心第一主義

AO入試で入り研究コースで
学んでいます。
大学院まで頑張ります!

津田芙未香さん 研究コース 5年

究コースでは、基本的には他の学生と同じカリキュラムで学びますが、3年次から研究室での実習が週1回あります。3年次で基礎系から、5年次で基礎系あるいは臨床系から、それぞれ研究室を選択します。一つの研究室に学生1人か2人という、ほぼマンツーマン状態。私はまず、基礎系で口腔病理学研究室を選択しました。病理組織診断や口腔がんに関連する遺伝子の研究をするのですが、4年次には口腔がんについてのテーマを英語でまとめて1人で発表しました。各研究室の先生方が20人以上聞いている中でのプレゼンテーションで、緊張し過ぎて質問に答えられずに悔しい思いをしましたが、良い経験になりました。5年次では臨床系の研究室から歯科補綴学研究室を選びました。基礎系で選んだテーマを継続することもできるのですが、私は今興味が持てるものを何でも吸収したい、まだ絞る時期じゃないな、という判断で選択しました。義歯(入れ歯)関連の材料の勉強など、まったく違う分野ですが、今後の超高齢社会を見据えたときに必要とされる知識だと考えています。長崎大学の歯学部はAO入試の制度(歯学研究コースを履修)があるのは良い点だと思うし、研究者を目指すなら幅広い専門分野の中から自由に選択できるのは学生にとってありがたいシステムです。正直、高校生の頃は大学院まで行って博士を取ることの意味も大変さも分かりませんでしたが、逆に条件として目標が設定されるのは私には向いていると思いました。

薬学部School of Pharmaceutical Sciences

研究室でとことん
研究組と現場実践組。
スペシャリストの数だけ
磨き方がある

ノーベル化学賞を受賞した下村脩博士も輩出している薬学部。副学部長の西田孝洋教授にお話を伺いました。
「薬学部には、臨床薬剤師を養成する6年制の薬学科と、創薬研究者を養成する4年制の薬科学科があります。入試選抜は学科別ですが、3年次までは教養教育や基礎実習などほぼ同じカリキュラムです。二つの学科が分かれるのは4年次からです。薬学科では研究室に所属しながら薬剤師の国家試験の準備が始まり、4年次後半でCBTとOSCEという全国共通の薬学共用試験を経て五年次で長期実習へ進みます。最終的には国家試験に臨むわけですが、昨年度の試験合格率は100パーセントでした」。

薬学科は、研究に実習に国家試験にと、盛りだくさんですね。
「一方、薬科学科では3年次に研究室を選んで配属され、授業より専門的な研究が主体となります。学部卒業後は、ほとんどの学生が大学院を目指します。製薬会社が求めるのは、少なくとも学部と博士前期課程を経た学生。化学、物理、生物など広範なジャンルから専門を選び、博士後期課程ともなると一人前の研究者として国際学会にも出席します。ちなみに、薬学科は薬剤師養成専門というわけではなく、薬剤師の資格を取りながら研究者の道を歩むことも可能です。将来的に仕事と育児を両立することを考えると、薬剤師の資格取得は魅力です。また、薬科学科で研究職としての基礎固めをして大学教員を目指す学生もいます」。
将来就く職種の間口も意外に広いのですね。

現場での実習で薬剤師になる!

という自覚が固まりました

人の病気を治すのは
薬の役割が大きいと
薬剤師を目指しました

溝内菜那さん薬学部 薬学科 5年

学科は6年間で実習も研究もあります。特に実習が長めなので「たくさん学べる!」と選びました。6年間のカリキュラムの中で最初のヤマ場は4年次のCBTとOSCEですね。12月に実技のOSCE、翌1月に知識のCBT。だからお正月はずーっと勉強しっぱなしでした。長崎大学の場合、私立大学などと比べて学生が少人数なので、先生方がすごく熱心に指導してくださるのもありがたかったです。何より私にとって一番衝撃的だったのは、11週間にわたる調剤薬局での長期実習です。教科書で学んだことを実際に現場で見て「ああ、この病気には本当にこの薬が使われているんだ」とか、患者さんとのやり取りなどすべてが勉強になりました。特に高齢者は日常生活に沿った服薬指導が必要ですが、嫌がられないよう聞き出す会話力が問われます。薬剤師とはモノより人を相手にする仕事ということを実感。人の病気を治すために役立ちたいという思いでこの道を目指した私にぴったりの仕事だと自覚しました。長崎は在宅医療システムが他県より進んでいて、在宅医療現場の薬剤師の動きを見ることもできます。カリキュラムはハードですが、調剤薬局でアルバイトもしています。近隣の病院の診療科が違えば取り扱う薬の種類も違うということを複数の現場で勉強できました。実習を経て「私は薬剤師でやっていこう!」という思いが強くなりました。

いまココ!
11週間の長期実習
調剤薬局でアルバイト。現場っておもしろい!!
CBT,OSCE
特にOSCEは試験官の前での調剤など実技もあり大緊張張!!でも全員合格!!
薬学動態系の研究室に配属され、遺伝子疾患の治療のための遺伝子の送達や発現について薬学科で研究しています。

実習は大学病院内の薬局のほか、一般の調剤薬局にも出向き、現場の薬剤師の実務をしっかり学びます。

研究室選びは将来のキャリアに

直結するので慎重に!

考えながら手を動かすのが大好き。
しかも人の役に立てるから
薬科学科に決めました

菅忠明さん 博士後期課程 生命薬科学専攻 3年

は博士後期課程の3年ですが、もう一つ日本学術振興会の特別研究員という肩書きも持っています。これは、国から研究費や月々の給与も支給されるものです。博士取得までは学部4年+博士前期課程2年+博士後期課程3年と長く、経済的に大変なので国からの補助は助かります。今は医薬品情報学研究室に所属し、薬物送達システム学(DDS:ドラッグデリバリーシステム)という、薬の副作用を抑えて治療効果を上げる製剤開発の研究を行っています。薬を体内でコントロールするのは非常に難しいですが、これまで薬学部で学んだ基礎が生きる技術です。薬科学科の学生にとって大きな転機は何といっても3年次の研究室選びです。化学、生物、薬理、薬物動態、DDS、分析など多彩で、製薬会社の求人も専門職に特化しています。つまり、ここでの研究室選びが将来のキャリアに直結します。私がDDSを選んだのは、工学、理学、農学の学生とは競合しにくいことが大きいですね。それに研究室の雰囲気。毎年論文を出しているか、学生は学会に行っているかなどが選択ポイントでした。研究室に配属され、大学院博士前期課程になると、文字どおり朝から晩まで集中して研究します。研究と学力は別もので、論理的な思考力やアイデア、調べる力や英語力が大事です。そもそも教科書に載っている事象は最先端ではなく常識。最先端の情報を知りたかったら、出たばかりの英語の論文を読んで取捨選択するしかありません。大変だけれど頑張った分だけ自分の力になりますよ。就職は製薬会社に決まりました。

昨年は国内学会と国際学会を合わせて8回以上発表したという菅さん。「いつも読んでいる論文の著者と接することもあり、モチベーションがすごく上がってプレゼン力も磨けます」。
研究室でしっかり9年間学ぶ覚悟だったので、他県での1人暮らしはあり得ない。地元の長崎大学の薬科学科を選ぶ!

いろいろ悩んで見比べて、DDS系の研究室に配属。

朝から晩まで研究三昧。
ぐんと面白くなる!
ここで就職する人もいますが基本、ほとんど大学院へ
国際学会デビュー
日本学術振興会特別研究員に採択される
いまココ!
博士後期は就職が自由。そこで2ヵ月ほどの短期決戦で製薬会社に内定!

工学部School of Engineering

スペシャリストになるための
スタートライン
研究開発やものづくりの
醍醐味を知る

工学部では分野の枠組みを超えた横断的教育と実践的教育が充実した、総合力の高い工学教育プログラムを提供するために「1学科6コース制」を導入しています。工学部長の松田浩教授にお話を伺いました。
「1学科6コース制は、2011年4月に他の国立大学に先駆けて導入しました。産業構造が急速に変化する中、工学の世界でスペシャリストとして活躍するためには、専門分野のみに特化するのではなく、工学分野における基礎的な知識を把握しておかなければいけません。目指す工学教育は、産業構造の変革にマッチした柔軟な教育プログラムです。今後さらに1学科制の充実化を図りつつ、新たな取り組みについても、積極的に導入していきたいと考えています」。

工学部を卒業後は、半数以上の学生が大学院へ進学。学部で取り組んだ研究テーマを大学院で深く掘り下げ、その成果を学会などで発表する。このような学部から大学院までの一貫的な教育プログラムを履修することで、就職後は企業の即戦力となる研究・開発職として活躍が期待されます。また、学部生と大学院生を対象にした「創成プロジェクト」(大学院生は総合工学演習として単位認定)、大学院博士前期課程の全コースを対象とした「技術者・研究者実践科目」など、学年やコースにとらわれず連携して学ぶ実践的なカリキュラムも特徴の一つ。大学院では今年度から、水産・環境科学総合研究科との横断的プログラムとなる「海洋未来イノベーション教育プログラム」もスタートしました。

混合チームで挑戦! 座学の意義とものづくりの楽しさを再確認する 座学の意義とものづくりの 楽しさを再確認する きっかけになりました

企業と共に取り組む
創成プロジェクトを履修することで、
視野の拡大とものづくりの
醍醐味を実感できます。

古川涼一さん工学部工学科 機械工学コース 4年

究室に所属するまで、工学部の授業は座学が中心になります。そんな中、刺激になったカリキュラムが、2年次と3年次に履修した「創成プロジェクト」。長崎県内の企業から持ち込まれるさまざまな提案を基に学生が主体となって課題を解決する、プロジェクトベースの履修科目です。課題整理から最終的には物を作り上げるところまで、決められた期間内に、学年やコースを問わず集まった混合チームでプロジェクトを進めていきます。僕が在籍したチームは、電動モビリティ開発チームで学生メンバーは初対面の人ばかりでした。3年次にはリーダーを担当したので、スケジュール調整など難しい場面もありましたが、座学での学びが実際のものづくりに生かせることが分かり、授業に臨むモチベーションにもつながりました。

転機はもう一つ。3年次に参加した企業インターンシップです。工学部では1年を4期に分けるクォーター制が導入されており、学部3年の第2クォーター(6~7月)は必修の講義が少なく設定されています。この時期を活用してインターンシップに参加しました。子どもの頃から描いていた、車関係の仕事に就きたいという夢が、インターンシップを通して現実味を帯び、学部卒業後は進学ではなく就職しようと決断するきっかけになりました。研究室では、車用のターボチャージャーの研究に取り組んでいます。卒業まで残り少ない時間を卒業研究に費やしたいと思っています。

いまココ!
車用のターボチャージャーを研究中

古川さんは2年次、3年次に創成プロジェクトを履修。規定のモーターとバッテリーを使用すれば何を作るかは自由という条件の下でプロジェクトに臨みました。写真は、2年の時に「簡単で小さく親しみやすい乗り物」をテーマに製作した超小型電動モビリティ。

創成プロジェクトを
ふたたび履修。
チームリーダーに!
企業インターンシップに参加
卒業後の進路は就職を決意!

研究成果を学会で発表

評価を得られたことが大きな転機に

世界レベルの研究に参画。
貴重な経験を通して研究に
臨む意欲が高まっていきます。

大王まやさん 博士前期課程 総合工学専攻 化学・物質工学コース 2年

学部では4年次から研究室に所属します。私が進んだのは「高分子材料研究室」。現在も引き続き大学院で、サトウキビやトウモロコシなど植物由来の「生分解性プラスチック」について研究中です。海洋汚染などプラスチックゴミによる環境問題が世界的に注目される中、環境にやさしく、強度も強いプラスチックの開発に興味を持ちました。大学院生にとって転機となる学会発表は、私にとっても心に残るものでした。昨年7月に開かれた学会で「光・熱ハイブリッド架橋剤を用いたポリ乳酸の接着界面強化」をテーマにポスター発表を行ったところ、優秀発表賞をいただくことができ、日ごろ取り組んでいる分野が注目されている、期待されていると実感。ますます研究を頑張ろうと思いました。来春の大学院修了後は、開発職に携わる予定です。就職活動の際、企業の担当者の方に大学院でどのような研究に取り組んでいるか技術説明を行ったのですが、分かりやすい説明を心掛けることができたのは、学会発表の経験が大きかったと思います。

私は学部のコース選びの段階から「高分子一筋!」でした。自分のやりたいワクワクすることが見つけられて、よかったと思います。後々悔いを残さないためにも、1年から3年までの間に履修する専門科目や実験を通して、将来の研究分野について少しずつ方向性を定めておくといいですね。それでも、第1希望の研究室に進めるかどうかは成績次第。3年次までの成績が判断要素になるので、1年次からコツコツ勉強を頑張っておくことが大切です。

高分子研究に
向かって一直線

現在も引き続き、熱心に研究に取り組んでいる大王さん。この日は、偏光顕微鏡を使って球晶成長速度を計測していました。

学会で優秀発表賞を受賞

「第7回高分子学会グリーンケミストリー研究会シンポジウム・第21回プラスチックリサイクル化学研究会研究討論会合同発表会」において優秀発表賞を受賞しました。

いまココ!

環境科学部Faculty of Environmental Science

文理双方からのアプローチを
実践しながら
地に足のついた
プロフェッショナルへ成長

環境問題の解決に向けて、多岐にわたる学問分野を組み合わせてアプローチする環境科学部。西山雅也教授のお話です。「環境科学と聞いても最初は漠然としている学生もいますが、講義や現場体験を通して、地に足のついた環境科学のイメージが育まれていきます。カリキュラムには、フィールドワークなどの現場で学ぶ授業科目が効果的に組み込まれています。1年次には、ゴミ処理施設や浄水場、下水処理場を見学する科目が、2年次には、まちづくりや生物調査などのテーマで地域に足を運ぶ科目があります。また有志の学生が参加するフィールドスクールは、島原半島でのミヤマキリシマの保全活動や温泉発電の取り組みなど、地域の課題と向き合う実践的な機会となります。さらに海外協定校からの留学生を交えたワークショップやサマースクール、協定校への研修派遣もあり、そうした積み重ねの中で、自分が取り組む方向性が見えてきます」。

2年次から文系の環境政策コースと理系の環境保全設計コースに分かれますね。「コース選択以降はより専門的な学習が中心となりますが、環境問題の解決には文理問わず多様な視点を必要とされることから、異なるコースの講義も受講できるようにしています。学生は卒業後に環境分野の専門家だけでなく、幅広い分野の民間企業、公務員などに進んでいきます。環境に配慮した取り組みがあらゆる企業や自治体に求められている現在、多岐にわたる環境科学を実践的に学んだ卒業生が各自の持ち場で活躍しています」。

夢は環境コンサルタント! 大学院に進学して 夢は環境コンサルタント! 大学院に進学して 鳥類の生態調査を行なっています

自分の取り組みたい分野を中心としながら、関連する幅広い知識も習得できます

西 星哉さん博士前期課程 環境科学専攻 1年

さい頃から自然や生き物に親しんできて、大学でも鳥類について学びたいと思い、環境科学部を志望しました。2年次で理系の環境保全設計コースを選択して、3年後期で研究室に所属してから鳥類の専門的な勉強を始めました。研究室では自分と同じように鳥類に関心のある仲間と出会うことができ良い刺激を受けました。また鳥類の生息環境の調査には、ドローンや解析ソフトを使用します。研究室はそうしたまったく新しい分野の技術に触れるきっかけにもなりました。卒業研究では、タカの一種であるノスリの生息環境について調査しています。データを収集するために自分で歩くことも多く、体力が必要な場面もありますが、過去の調査結果と比較してデータが新しい結果を示した時は達成感があります。

卒業後の進路は、環境コンサルタントを目指しています。四年次の就職活動でも挑戦したものの結果に結び付かず、一度は企業の一般職も考えましたが、諦めず自分の目標に向かいたいと考えて大学院に進学することにしました。大学院に進学した今は夜行性のオシドリの生態調査を行う予定で、これから大学院で環境コンサルタントにつながる資格も取得しながら鳥類全般について詳しくなり、もう一度チャレンジします。そのためには環境の政策や法律に関する知識もより一層必要とされるので、引き続き文理両方をカバーした幅広い知識を身に付けていきたいと思います。

4年次の卒業研究では、同じ研究室の仲間と協力しながらノスリの生態調査を行いました。長崎県は数多くの渡り鳥の中継地点となっており、鳥が訪れる季節に合わせてさまざまな調査ができます。大学院で研究しているオシドリは冬にやってきます。
いまココ!
オシドリの生態調査を行いながら、環境コンサルタントにつながる資格取得も目指して勉強中
就職活動が始まり、「環境コンサルタント」の仕事を目指す!
山口典之研究室に所属
専門的な学習スタート。目指していた山口典之先生の講義も初めて受ける
環境保全設計コースへ(4月)
いまココ!
大学院でも早期終了を目指し、アメリカの大学院に進学予定
2年の後半から早期卒業に向けてスピードアップ!講義+卒業研究でドタバタ
文系へのコース変更と
研究室選択
大学院進学を目指し、早期卒業制度を視野に入れる

ランドスケープ・デザインとの

出会いを機に文系へ!

自分の可能性がさらに広がりました!

早期卒業制度を利用して3年間で大学院へ!秋からアメリカへの進学を予定

赤山紗也果さん 博士前期課程 環境科学専攻 2年

の進路を選んだきっかけは、1年次の教養ゼミの担当だった五島聖子先生が主催するランドスケープ・デザインのワークショップです。海外から参加した学生や教員と長崎の街を歩いて景観デザインや活用方法について議論を行い、その時初めてランドスケープ・デザインという分野を知りました。2年次にも五島先生から声が掛かり参加したのですが、その後、研究室に所属しないかとお誘いがあったんです。でも、五島先生のゼミは文系の環境政策コースで、私はすでに理系の環境保全設計コースを選択していました。しかも、3年間で卒業する早期卒業制度を利用した大学院進学を目指して講義に力を入れ始めていた時期です。悩みましたが、結局は五島先生の研究室に所属することにしました。決め手としてはランドスケープ・デザインへの興味はもちろん、五島先生の存在が大きかったですね。いつも私にいろんな道の選択肢を示し、新しい可能性を引き出してくださいます。

文理のコースを変更して研究室での活動も始まりましたが、講義と卒業研究で怒涛の忙しさでした。その時期を乗り越えられたのは、周囲のサポートのおかげです。早期卒業を目指していたこともあって上の学年にも友人ができ、文理両方経験したことで先生たちとのつながりも深まりました。そうした方々の励ましもあり、学部を3年で早期卒業して大学院へ進学。さらに今年の秋からはアメリカの大学院で学ぶ予定です。まだ日本ではメジャーではない分野ですが、いつか自分がリーダーシップを執って活躍できるよう研究を重ねていきたいと思います。

景観デザインをCGや模型で示すのもランドスケープ・デザインの重要な役割。浦上天主堂の下にある天主公園で景観やデザインについて考えるプロジェクトでは模型も作成して、完成形を具体的に説明しました。

水産学部Faculty of Fisheries

海という広大な
フィールドに飛び込み
挑戦する専門分野を
体感して選び取る

全国の国立大学でも数少ない水産学部には、県外からも多くの学生が集まります。石橋郁人教授のお話です。「水産や海洋分野に関する分野で、自分なりに目的意識を持ったモチベーションの高い学生が多い印象ですが、水産学部の領域における一つの特徴は、そのスケール感や多様性です。魚を知るためには海を知らなければいけませんし、そうすると物理や工学、社会科学など、横断的な知識が必要となります。多様な専門分野を知るために、まず1年次では各研究室を回って先生や先輩の話を聞く機会を設けています。そうやって視野を広げることが、2年次のコース選択や4年次の研究室選択につながっていきます。実際に入学してから希望する分野が変わる学生も珍しくありませんし、学部としても様々な科目に学生の関心が向くよう指導しています」。

水産学部といえば、やはり練習船を使った乗船実習が印象的ですね。「1年次に4日間、3年次に2週間かけて、実際に練習船に乗って航海技術や海洋調査を体感します。船上では厳しい規律に則った行動が求められますが、協調性を学ぶ貴重な機会となりますし、この実習がきっかけで航海士を目指す学生もいます。また東シナ海や有明海などの海域で実験や実習を行う環東シナ海環境資源研究センターも水産学部の教育と深く関係しており、学習内容を実際の海で体感したり、研究に活かせる機会に恵まれているのは、水産学部ならではの特徴だと思います」。

幅広い分野を学び、海で実践する中で 自分の目指す道が見えてきました 自分の目指す道が 見えてきました

海や船への関心や興味が少しずつ具体的な分野として定まっていきました!

得丸奈央さん水産学部 水産学科 海洋生産管理学コース 4年

学当初から海や船に興味はありましたが、私の場合は勉強していく中で徐々に方向性を定めようと考えていたので、まず一通りどの分野も体験してみて、自分に合うものを選んでいきました。その中でも、大きなターニングポイントになったのは乗船実習です。まず1年次には鶴洋丸で3泊4日過ごしながら、船での生活や釣り体験、魚の裁割などを行いました。実際に教官の指導を受けながら間近で航海術を見ると、大きな船が人の力で動くことが不思議で、自分も航海士になりたいと思うようになりました。そして3年次には長崎丸で2週間かけて乗船実習を行い、より本格的な海洋調査を体験しました。その中で、プランクトンの網にきれいなギンカクラゲが入っていたんです。以前学校の講義で学んでいたことから目の当たりにした感動が大きくなり、卒業研究でも浮游生物学をテーマに研究したいと考えました。

そして4年生となった現在は航海士の資格をとるため、卒業後に東京海洋大学の水産専攻科に進学することを目標に、日々卒業研究と長崎丸での乗船実習に明け暮れています。前期は月の半分以上が海の上で、当直や研究などで昼夜逆転することもあり、船での実習は過酷なものとなります。それでも実際に船で調査を行う体験は本当に貴重で、弱気になる暇がないほど充実しています。最初から目指す分野が決まっている学生もいますが、もし決まっていないけど何かしてみたい人も、必ず道が見つかるのが水産学部だと思います。

いまココ!
卒業後に東京海洋大学の水産専攻科に入るため、乗船実習が月の半分以上+航海士になるための勉強+卒業研究

東京海洋大学の水産専攻科を目指す4年生たちは乗船実習が中心。船には他大学から学生や教員が乗船することもあるため、そこでの出会いがいい刺激になるそう。もちろん長期間の航海は、体力的にも精神的にもタフさが求められる。

乗船実習(長崎丸)
より実践的な内容で、
プランクトンという
研究のテーマが見つかる
乗船実習(鶴洋丸)
航海士という目標が定まる

水産学部には、なんでも自由に学びながら 水産学部には、 なんでも自由に学びながら のびのび視野を広げるチャンスがいっぱい! のびのび視野を広げるチャンスが いっぱい!

途中で目指す分野が変わっても水産学部としての学習は関連していて、どの分野でも役立ちます!

山道敦子さん 博士前期課程 水産学専攻 2年

は4年次からバイオロギングを専門とする河邊玲先生の研究室に所属してヒラメの生態調査を行い、大学院ではエサをとる行動を中心に調査を継続しています。バイオロギングとは、生物の体に小型の計測器をつけて行動や環境を調査・分析する手法です。活動の拠点となるのは環東シナ海環境資源研究センターで、研究をするのに恵まれた環境だと思います。異なる研究分野の学生と同じフロアで研究していて、また他大学の学生が実習でセンターを訪れることも多く、自分の知らない研究について話を聞くことも参考になります。

入学当初に目指していたのは、自分の好きなクラゲの研究でした。なので2年次からは海洋環境科学コースを選択し、3年次には顕微鏡を使った小さなクラゲの観察も行いました。しかし実際に研究活動の基礎を体験すると、自分には合っていないように感じて。それで新たに方向性を決めたのが、2年次の講演で知ったバイオロギングという分野でした。講演では鳥にGPSをつけて移動範囲や採取行動を分析するという話を聞いて、こんな調査方法があるんだと興味深く感じました。その経験から4年次で河邊先生の研究室に所属。河邊先生は海洋生産管理学コースの分野だったのですが、私は2年次のコース選択以降に他コースの科目も一部受講していたので、方向性を変えても対応することができました。コースや研究室を選ぶ中で、自分の行きたい方向に進路を変えられるのは、水産学部の大きな魅力の一つだと思います。

大学の講義で
生物に測器を取り付ける
バイオロギングの魅力を知る

行動に影響を及ぼさないよう、なるべく大きなヒラメに計測器と小型カメラを取り付ける。一定時間が経過すると自動的に外れるようになっているので、海面に浮上したものをGPSデータを頼りに回収し、データを分析していくそう。

いまココ!
『環東シナ海環境資源研究センター』を拠点に研究(ヒラメの生態調査)を始める
クラゲの調査に講義の中で関わるも、自分には合っていないと感じる 研究室を決める際に2年後期で知ったバイオロギングの分野に進むことに