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ベトナムで流行するジカウイルス流行実態調査の成果を活用し ジカ熱流行地域における対策の提言へ

長崎大学熱帯医学研究所の長谷部太教授、MOI MENG LING(モイ・メンリン)准教授の研究チームとベトナム衛生疫学研究所(NIHE)のLe Thi Quynh Mai博士らの研究グループは、ベトナムでのジカ熱フィールド調査で600名以上の患者に対しジカウイルスの流行状況を明らかにするとともに、南米で流行したジカウイルスがベトナムに侵入した時期の推定に成功しました。本研究成果によって、ベトナムへのジカウイルスの伝播様式及び世界的な流行動態の一端が明らかとなりました。

ジカ熱1.は2015年〜2016年に南米で大流行をおこし、多数の小頭症児2.が発生したことから国際的に重要な蚊媒介性の感染症として注目を集めました。アジアにおいても流行が確認されており、小頭症の発生も報告され公衆衛生的に要注意の感染症です。

本研究では、2016年〜2018年にジカ熱がベトナム全国に拡大し、流行が初めて確認された2016年よりも、数年前にウイルスが侵入し流行が始まったことを明らかにしました。ジカ熱の発生している地域では、大規模な蚊の繁殖地があり、ウイルスの侵入および局所的な伝播は大規模な流行につながる可能性があります。今後も、伝播拡大の対策として早期発見および長期観測によるサーベイランスに取り組む政策が重要です。本研究では、ジカ熱の伝播が拡大する要因および対策における課題を抽出し、研究成果に基づいた感染症対策の提言を考案し、ベトナム保健省やWHOに情報を提供しました。

本研究成果と提言は、英医学誌「Lancet Infectious Diseases」のCorrespondenceに2020年1月29日(水)18時30分(US ET time)(※日本時間  1月30日(木)08時30分)に掲載されました。

論文タイトル
Long-term surveillance needed to detect Zika virus outbreaks in endemic regions

https://www.thelancet.com/journals/laninf/article/PIIS1473-3099(19)30677-2/fulltext

<用語解説>
1. ジカ熱:ジカウイルスに感染することで引き起こされる感染症。 症状がないことも多く、発症すると、かゆみを伴う発疹(ほっしん)、関節痛、結膜炎などの症状が出現し、多くの場合は軽症で数日から1週間ほどで治癒する。特に妊婦が感染した場合に胎児が先天性小頭症を発症することがある。
2. 小頭症:小頭症は、赤ちゃんが通常よりも小さい頭で生まれるか、出生後に頭の成長が停止する状態です。環境要因、遺伝学的な要因などを背景として発症することもありますが、風疹ウイルスやサイトメガロウイルスなどの感染症をきっかけとして引き起こされることもあり、近年、ジカウイルス感染によって発症することが報告された。