HOME > Research > 詳細

Research

ここから本文です。

1尾あたり0.36個:東シナ海の魚類に含まれるマイクロプラスチック量が明らかに

概要

微細なプラスチック片である“マイクロプラスチック”は世界中の海を漂っており、海洋生物への影響が懸念されています。今回、総合生産科学域 水産学領域の八木光晴 准教授と大学院 水産・環境科学総合研究科の修士課程2年の小林恒文さんは、附属練習船の長崎丸・鶴洋丸と共同で魚類のマイクロプラスチックの誤食実態を明らかにしました1。調査は九州西岸の東シナ海に生息する7種類の魚種、計385個体を対象に実施され、最も多くマイクロプラスチックが含まれていたのはマサバで63%の個体割合で誤食が確認されました。この研究は、排出国のみならず広い範囲の海を漂うという文脈で“国境がない”プラスチック問題に関して、誤食による海洋生物への影響を明らかにしたものです。
 本研究成果は、国際学術誌Marine Pollution Bulletin(IF = 5.553)に掲載されました。なお、研究の一部は、科学研究費補助金 若手研究 課題番号JP18K14790、および基盤研究C 課題番号JP21K06337の助成を受けて実施されました。

研究者からのひと言

私達は、海洋の浮遊マイクロプラスチックを採集して、密度やサイズを明らかにしてきました2。それらのデータを基に、今回、表層の魚はより多くのマイクロプラスチックを誤食している、という仮説を立て様々な魚類でマイクロプラスチックの誤食実態を調べました。その結果、消化管内に含まれるマイクロプラスチックの個数は底層魚では0.12個でしたが、マサバやマアジといった表層魚では0.80個と6.7倍も多く含まれていることが分かりました(平均では0.36個/1尾)。今回、検出したプラスチックのサイズは3ミリ前後で比較的大きく、消化管の中に存在しているマイクロプラスチックは自然に排泄されるものであると考えられます。生体への影響についての研究はこれから展開する予定ですが、私も食べるのが大好きな魚の中に含まれていたのは驚きであり、プラスチック汚染が身近な魚にまで及んでいることを実感しました。

関連論文

1:Mitsuharu Yagi, Tsunefumi Kobayashi, Sota Hoshina, Satoshi Masumi, Itaru Aizawa, Jun Uchida, Tsukasa Kinoshita, Nobuhiro Yamawaki, Takashi Aoshima, Yasuhiro Morii, Kenichi Shimizu, 2022. Microplastic pollution for commercial fishes from the coastal and offshore waters, southwestern Japan. Marine Pollution Bulletin 174, 113304.
https://doi.org/10.1016/j.marpolbul.2021.113304

2:Tsunefumi Kobayashi, Mitsuharu Yagi, Toshiya Kawaguchi, Toshiro Hata, Kenichi Shimizu, 2021. Spatiotemporal variations of surface water microplastics near Kyushu, Japan: A quali-quantitative analysis. Marine Pollution Bulletin 169, 112563.
https://doi.org/10.1016/j.marpolbul.2021.112563

お問い合わせ先

長崎大学総合生産科学域/大学院水産・環境科学総合研究科/水産学部 八木光晴
E-mail: yagi-m*nagasaki-u.ac.jp(*を@に変換して下さい)