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妊婦のレストレスレッグス症候群の評価に最適な25-(OH)Dのカットオフ値の決定

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科、北陸大学医療保健学部、並びに筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構の研究グループは、妊婦に多いレストレスレッグス症候群(RLS)とビタミンD欠乏状態の関連、さらにRLS発症と関連する血液中のビタミンD濃度を初めて明らかした。本研究の成果は「Journal of Clinical Sleep Medicine」 8月24日オンライン版に掲載された。

 

◆本研究の目的
ビタミンD欠乏がrestless legs syndrome (RLS)と関連することが報告されているが、ビタミンD欠乏状態の指標としての血清25-hydroxyvitamin D (25[OH]D)濃度とRLSとの関連は明らかになっていない。本研究は血清25(OH)D濃度を液体クロマトグラフィー質量分析 (liquid chromatography-tandem mass spectrometry: LC-MS/MS)法を用いて測定し、妊産婦を対象としてRLSと25(OH)Dとの関連性を検討した。

◆方 法

妊娠第3期の妊産婦203人(平均年齢32.0 ± 4.6歳)を解析対象とした。25(OH)D測定はLC-MS/MS法に加えて、一般的に広く用いられているリガンド結合法でも行った。RLSはICSD-3の診断基準に基づき睡眠障害や日中の起床障害の項は除外して診断した。RLSと関連する血清25(OH)D濃度のcut-off値はReceiver Operating Characteristic (ROC)曲線とClassification and Regression Tree (CART)解析から求めた。

◆研究結果
RLSの有病率は17.2%であった。RLS群(N = 35)と非RLS群(N = 168)における血清25(OH)D濃度のLC-MS/MS法(x)とリガンド測定法(y)との結果はy = -2.65 + 0.08 xとの関係であった。非RLS群と比較して、RLS群ではいずれの測定法でも血清25(OH)D濃度は低値であり、血清葉酸濃度も低値であった。ROC曲線とCART解析によるRLSと関連する25(OH)Dと葉酸のcut-off値は、それぞれ10–12.7 ng/mlと6.6–7.2 ng/mlであった。出産後もRLS症状が中等症以上続いていた5人は、4人が25(OH)D < 10 ng/mlであり、全員が葉酸 < 6 ng/mlであった。

妊産婦においてビタミンDと葉酸欠乏はRLSと関連しており。出産後の中等症以上のRLS症状の持続と関連することが疑われた。ビタミンDと葉酸欠乏状態を考慮する際には、測定方法、アッセイ系も考慮した上で、RLSとの関連性が検討される必要がある。
  
◆論文情報
・雑誌名:「Journal of Clinical Sleep Medicine」(2022年8月24日オンライン版)
・論文タイトル:Determination of optimal 25-hydroxyvitamin D cut-off values for the evaluation of restless legs syndrome among pregnant women.
・著者:Asuka Miyazaki, Misako Takahashi, Takuya Shuo, Hiromi Eto, Hideaki Kondo
・DOI番号:https://doi.org/10.5664/jcsm.10270