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日本初 全国規模の性接触ネットワークを分析 ~世界でも類をみない、約 8.9 万件の口コミ情報を分析~

 長崎大学熱帯医学研究所 国際保健学分野 の伊東 啓助教(筆頭著者)、重田桂子協力研究員、山本太郎教授は静岡大学の守田智教授(責任著者)と共に、我が国の性風俗産業(ここではソープランドに限る)における性接触ネットワークの一部を分析することに成功しました。

 


図1.口コミから再構築された性接触ネットワーク.
男性顧客(約5.5万人)と女性従業員(約1.7万人)を約8.9万件の口コミが繋いでいる



■ポイント 
・性風俗商用サイトが運営するオンライン顧客レビュー(口コミ)サービスを利用してソープランドの性接触ネットワークを再構築した(図1)
⇒ ここで再構築されたネットワークは性産業における性接触に関する研究でも世界最大のもの

ここで得られた性接触ネットワークは...
・スケールフリーの特性を持つ
⇒ 多くの人々の性接触は少人数(数人以下)との関係に留まるものの、一部には極めて巨大な性接触ネットワークを持つ人が存在している

・地域や店舗に依存して高いクラスタリング係数を持つ
⇒ 男性顧客は同じ県内・同じ店舗内の複数のセックスワーカーを訪問する傾向がある

・スモールワールド性をもつ
⇒ 複数の県や店舗を跨いでサービスを利用する男性顧客が、離れた地域や店舗を橋渡しすることで、全国ソープランド性接触ネットワークを緩やかに繋いで“世間を狭く”している(図2)

■内  容 
「誰が誰と性交渉をおこなったか」という性接触のネットワークは、社会における最も重要な社会ネットワークの一つです。しかし、技術面やプライバシーの問題から個人的な性接触の情報を正確に収集することは困難を極めます。そのため、我が国においても全国規模の性接触ネットワークを分析した研究は存在しません。
  そこで我々は、ここ数年で急速に拡大してきた性風俗店のオンライン顧客レビュー(口コミ)を掲載している商用サイトに着目しました。このサイトには、サービスを受けた男性顧客が女性従業員(セックスワーカー)に対して行う口コミ投稿機能があります。これは顧客と従業員が実際に性的に接触したことを示す貴重な情報であり、18歳以上であれば誰でも閲覧可能になっています。投稿された口コミから性風俗産業(ここではソープランドに限る)に関する男性顧客とセックスワーカーからなる性接触ネットワークを再構築して分析しました。これにより、世界でも類をみない巨大な性接触ネットワークを抽出し分析することが可能になりました。
  これまで謎に包まれていた全国規模の性接触ネットワークのベールをはがしました。性行動はどのように日本全国の人々を繋いでいるのか、日本独特の性産業が構築するネットワークは他国のそれとどう違うのか、この研究によって今後明らかになります。
  そして我々の研究が示した重要なポイントは、性接触ネットワークが“世間は広いようで狭い”というスモールワールド性を持つことです。ネットワーク上の平均距離を計算すると9.87であり、国内のどこかで発生した性感染症がわずかな人数を経て全国規模に拡散することを意味しています。
  このように本研究はこれまでの調査範囲の限界を劇的に拡張するものであり、社会ネットワークの一例として今後の研究に活かされるだけでなく、性感染症の蔓延対策などの公衆衛生の分野においても重要な知見を与えるでしょう。



図2.都道府県間のネットワークを図示
リンク(線)の太さは都道府県の間を移動して店舗を利用している顧客数に比例


■論 文 
Ito H, Shigeta K, Yamamoto T, Morita S. Exploring sexual contact networks by analyzing a nationwide commercial-sex review website. PLoS ONE. 17(11): e0276981, 2022.
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0276981

■謝 辞 
本研究はJSPS科研費21H01575,21K03387,19H05731,19KK0262,18K03453,17H04731,および全国共同利用・共同研究拠点「熱帯医学研究拠点」2022-Seeds-02の助成を受けたものです。