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シオミズツボワムシの生活史特性:ある世代の餌料環境が次世代以降に与える影響

大学院生産科学研究科の萩原篤志教授と(独)水産総合研究センター・能登島栽培漁業センターの研究グループは,海産魚の初期餌料生物として用いられる 0.1〜0.3mmの動物プランクトン「シオミズツボワムシ」の安定的培養の実現を目的とした実験生態学的研究を実施し,ワムシの培養用餌料の質が次世代以降の生活史特性を顕著に変化させることを明らかにした。

シオミズツボワムシ(以下ワムシ)は,雌単独の単性生殖によって増殖するが,遺伝的に等しいクローン個体群を同じ条件で培養しても,その生活史特性は時々刻々と変化する。そのメカニズムを求めるため,培養用餌料の条件を変えて,ワムシを5世代にわたり個体別に培養した。その結果,パン酵母(栄養的に劣った餌料)のみの給餌では,第1,第2世代でふ化後24時間の生残率が低下し,ワムシの発達時間や産卵間隔も遅延して第3世代で全滅した。植物プランクトンのナンノクロロプシス(栄養的に優れた餌料)のみの給餌に比べると,第1世代にパン酵母を,第2世代でナンノクロロプシスを給餌した場合,第2世代の生残率が20%以上低下し,発達時間や産卵間隔が1.1〜1.2倍長くなった。以上のように,ワムシの摂餌する餌料の質は,その子世代や孫世代にわたり,ワムシの生殖活動や発達,生存能力などの生活史特性に大きく影響することを明らかにした。

本研究の成果は日本水産学会誌 第75巻 第5号に掲載された。