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独立行政法人環境再生保全機構の環境研究総合推進費に採択 絶滅危惧水生昆虫の保全とモニタリング法の確立を目指す

 独立行政法人環境再生保全機構の環境研究総合推進費に、⻑崎⼤学教育学部 大庭伸也准教授が研究代表者で応募した研究課題「特定第二種水生昆虫(※1)の保全手法および簡易モニタリング法の確立」が採択されました。信州大学 東城幸治教授、竹中將起特任助教と広島修道大学 鈴木智也助教、福島県農業総合センター浜地域研究所 三田村敏正専門員、兵庫県立大学大学院 博士後期課程/日本学術振興会 渡辺黎也特別研究員と共同で研究を実施します。 

 環境研究総合推進費(環境問題対応型研究/ミディアムファンディング枠)は第一次審査(書面)及び第二次審査(ヒアリング)の審査を経て採択され、令和7年度の採択率は15.8%でした。

【本研究の背景と概要】

 我が国では河川氾濫原や後背湿地を水田に転用した結果、里山環境における水田や溜池、水路などの稲作水系が、多くの水生生物にとっての代替生息地として機能してきました。しかし近年では、伝統農法から近代農法への転換や圃場整備、水稲面積の減少、耕作放棄地の増加、都市化に伴う農村地域の縮小などによって、水田とその周囲の生態系が大きく改変され、多くの水生昆虫類が減少傾向にあります。実際に、水田を利用するコウチュウ目の40%(59/147種)、カメムシ目の24%(17/72種)が環境省レッドリストに掲載されています。その中でも一般の認知度が比較的高いタガメやゲンゴロウは、ペットとしての需要の高さから売買目的の乱獲が目立っていたため、環境省は特定第二種国内希少野生動植物種(特定第二種)に指定し、売買目的の採集を禁止しました。今後は指定種の生息地の保全が求められます。本研究ではサブテーマ①~③で連携しつつ、特定第二種水生昆虫の保全とモニタリング手法の開発を目指します。

 
図.本プロジェクトの概要


【本研究に採択されたことの意義】

 近年、世界中で淡水生物の絶滅が報告されています。日本でも湿地的環境、特に里山の原風景となる水田の耕作放棄による湿地の減少と休耕田の増加は、水生昆虫の個体数や種多様性の劣化を招いています。本プロジェクトを通じて、科学的知見に基づく省力的なモニタリング法と保全法の提案、増加する休耕田の有効活用法、そして、保全効果の科学的な検証が可能となります。得られた知見が将来的には研究者のみならず、一般市民による広域的な保全に貢献できるようになることを目指します。プロジェクトメンバー各々がこれまでに取り組んできたそれぞれの経験と研究スキルを最大限に活かし、このプロジェクトを進めていきます。


【環境研究総合推進費について】

環境研究総合推進費は環境政策への貢献・反映を目的とした競争的研究費です。

詳しくは以下をご参照ください。

https://www.erca.go.jp/suishinhi/gaiyou/gaiyou_1.html

【プロジェクトの基本情報】

研究課題名:特定第二種水生昆虫の保全手法および簡易モニタリング法の確立


実施体制:

研究代表者:長崎大学 大庭伸也准教授(兼 サブテーマ③リーダー)

サブテーマ①:信州大学 東城幸治教授(サブテーマリーダー)、特任助教 竹中將起

サブテーマ②:広島修道大学 鈴木智也助教(サブテーマリーダー)

サブテーマ③:福島県農業総合センター浜地域研究所 三田村敏正専門員、兵庫県立大学大学院 博士後期課程/日本学術振興会 渡辺黎也特別研究員


年間研究開発費の支援規模(直接・間接経費・消費税を含む):最大2,000万円以内/年

研究期間:2025年度より3年間


【用語解説】

(※1)特定第二種水生昆虫

特定第二種国内希少野生動植物種の内の水生昆虫を指す。特定第二種国内希少野生動植物種とは、絶滅の恐れがある生き物のうち、販売又は頒布等を目的とした行為に限定して規制される制度のこと。