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歯周病の発症・増悪に関連するTLR4遺伝子の一塩基多型の発見とその作用機構の解明

  長崎大学医歯薬学総合研究科歯周病学分野の原宜興教授、吉村篤利准教授、佐藤佳昌院生らの研究グループは、歯周病の発症・増悪に関連するTLR4遺伝子の一塩基多型を発見し、その作用機構を解明した。

  歯周病の発症には、プラーク中の細菌が密接に関与しているが、歯周病原細菌外膜を構成するLPSは、自然免疫系細胞に発現したToll-like receptor 4 (TLR4)によって認識される。歯周病学分野の研究グループは、同大同研究科附属原爆後障害医療研究施設人類遺伝学研究分野の吉浦孝一郎教授らとともに、TLR4遺伝子と慢性歯周炎の関連について解析を行い、3’側非翻訳領域に位置するrs11536889遺伝子多型におけるC/C遺伝子型は、慢性歯周炎患者に多く、重症度とも関連していることを発見した。

  さらに今回、日本大学松戸歯学部の小方頼昌教授らとともに、rs11536889遺伝子多型とTLR4の発現量や機能との関連について解析を行い、C/C遺伝子型被験者の単球膜表面におけるTLR4蛋白発現量は、G/G、G/C遺伝子型被験者の単球に比べ有意に多く、末梢血単核球のLPS反応性においても同様の傾向がみられるが、TLR4 mRNAの発現量では遺伝子型間に有意差は認められないことを発見した。これは、Gアレルのrs11536889領域には、hsa-miR-1236と hsa-miR-642aの2つのマイクロRNAが結合して遺伝子発現が抑制されるのに対し、Cアレルのrs11536889領域にはこれらのマイクロRNAが結合できず、遺伝子発現が抑制されないことが原因であることが明らかとなった。

  これらの結果から、TLR4遺伝子多型rs11536889におけるC/C遺伝子型は、歯周炎などのTLR4活性化を誘因とする炎症性疾患のリスク因子となると予測され、疾患関連遺伝子として診断および新たな治療法の開発に応用されることが期待される。

 本研究の成果は、「Journal of Biological Chemistry」2012年7月20日号に掲載された。

 

 論文タイトル:
A Single Nucleotide Polymorphism in 3′-Untranslated Region Contributes to the Regulation of Toll-like Receptor 4 Translation

著者名:
Kayo Sato, Atsutoshi Yoshimura, Takashi Kaneko, Takashi Ukai, Yukio Ozaki, Hirotaka Nakamura, Xinyue Li, Hiroyoshi Matsumura, Yoshitaka Hara and Yorimasa Ogata

掲載誌:
Journal of Biological Chemistry,2012 Jul 20;287(30):25163-72.