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マダニ媒介感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」を標的とした新しいmRNAワクチンを開発 - 防御メカニズムの解明により、有効な予防ワクチン開発へ期待 -

兵庫医科大学(兵庫県西宮市、学長︓鈴木 敬一郎)医学部 免疫学 主任教授 黒田 悦史、学外研究員 江頭 志織と長崎大学(長崎県長崎市、学長︓永安 武)高度感染症研究センター 教授 安田 二朗、助教 吉川禄助および第一三共株式会社は共同で、マダニ媒介感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」を標的とした3種類のmRNAワクチン候補が、それぞれ異なるメカニズムによって、SFTSウイルス感染からマウスを完全に保護することを明らかにしました。この成果は、現在有効な予防方法がないSFTSに対する画期的なワクチンの開発につながることが期待され、国際学術誌「npj Vaccines」に2026年9月23日に掲載されました。

【本研究のポイント】
1. SFTSは、SFTSウイルスを保有するマダニの刺咬により感染する。致命率は10~27%と高いが、有効なワクチンは存在しない。
2.本研究ではSFTSウイルスの表面および内部にある主要なタンパク質である糖タンパク質(GnおよびGc)及びヌクレオカプシド(NP)に着目し、これら3種類のタンパク質を標的とする3種類のmRNAワクチンを作製。
3. これらの3種類の mRNAワクチンは、致死性のSFTSウイルス感染からマウスを保護した。
4. Gnワクチンは中和抗体、Gcワクチンは中和抗体および細胞性免疫、NPワクチンはCD4陽性細胞が重要であり、3種類のワクチンの防御メカニズムは異なることを解明。

【研究手法と成果】
SFTSは、SFTSウイルスを原因とする感染症で、主にマダニからの刺咬により感染します。致命率は10~27%と高く、日本国内における発生地域・感染者数も年々増加していますが、有効な予防ワクチンは存在しません。本研究では、SFTSウイルス表面の糖タンパク質であるGlycoprotein N(Gn)およびGlyooprotein C(Gc)、ウイルス粒子内に存在するヌクレオカプシドタンパク(NP)の3つのタンパク質に着目し、これらのウイルス抗原を標的とする3種類のmRNAワクチン(Gnワクチン、Gcワクチン、およびNPワクチン)を作製し、マウスモデルにおける有効性を評価しました。

作製したワクチンをそれぞれ個別にマウスに投与すると、投与したワクチンに応じて、Gn、GcおよびNPに対する抗体産生と細胞性免疫が誘導されることを確認しました。また、GnワクチンおよびGcワクチンを投与したマウスの血清は、SFTSウイルスに対する中和活性(ウイルスを無効化する能力)を有するのに対し、NPワクチンを投与したマウスでは中和活性が誘導されないことを明らかにしました。
さらに、これらのワクチンを投与したマウスにSFTSウイルスを感染させました。その結果、ワクチンを投与しなかったマウスは全例が死亡したのに対して、Gnワクチン、Gcワクチン、またはNPワクチンを投与されたマウスは、全例が生存しました。
3種類のワクチンの防御メカニズムを解析した結果、Gnワクチンは中和活性、Gcワクチンは中和活性および細胞性免疫、NPワクチンはCD4陽性細胞が重要であることが明らかになりました。これらの結果から、Gnワクチン、Gcワクチン、およびNPワクチンによる保護作用は、異なる防御メカニズムを介することが明らかになりました。

※図の作成にはGoogleの画像生成AI(Imagen 3)を使用。


【今後の展望】

SFTSは日本国内のみならず、世界でも増加傾向にあります。国内外で有効な予防ワクチンが切望されていますが、現時点では存在しません。本研究では、作製した3種類のmRNAワクチンがSFTSウイルスに対して感染防御効果を持つことを明らかにしました。

さらに、3種類のワクチンは、それぞれ異なる防御メカニズムを介した保護作用を有することが明らかになりました。このことから、3種類のワクチンによるSFTSウイルスへの多角的なアプローチが期待できるとともに、3種類の組み合わせによる相加・相乗効果を有する可能性が今後期待されます。

本研究の成果は、効果的なSFTSワクチン設計に重要な知見となるものであり、実用的なワクチン開発に向けた大きな一歩となることが期待されます。

【掲載情報】
・論題
Preclinical immunogenicity and efficacy of novel mRNA vaccine against severe fever with thrombocytopenia syndrome virus.
・著者
江頭 志織(筆頭著者) 第一三共株式会社、兵庫医科大学 免疫学 学外研究員
吉川 禄助(筆頭著者) 長崎大学 熱帯医学研究所 新興感染症学分野 助教、長崎大学 高度感染症研究センター 新興ウイルス研究分野 助教
野草 晶子 第一三共株式会社
山口 綾 第一三共株式会社
小野寺 宣郷 第一三共株式会社
城内 直(責任著者) 第一三共株式会社
武下 文彦 第一三共株式会社
安田 二朗(責任著者) 長崎大学 高度感染症研究センター 新興ウイルス研究分野 教授、長崎大学 熱帯医学研究所 新興感染症学分野 教授
黒田 悦史(責任著者) 兵庫医科大学 医学部 免疫学 主任教授
・掲載誌
国際学術誌「npj Vaccines」
・DOI︓https://doi.org/10.1038/s41541-026-01583-w