2013年07月16日
本学大学院水産・環境科学総合研究科の松本有記雄産学官連携研究員(現水産総合研究センター)と竹垣毅准教授は、海産小型魚類ロウソクギンポの雌が、繁殖する配偶相手を選ぶ際に他の雌の選択した雄を真似て選択する「コピー戦術」を採用していることを実証し、さらにこの戦術によって雌が子の高い生残率を得ていることを明らかにしました。 一般に、雌は雄や雄が持つ資源の特徴(質)を評価してより高い繁殖成功が期待される条件の良い相手と配偶しようとし、これにより選択された雄の特徴と雌の好みが次世代に遺伝して引き継がれていきます。 しかし、コピー戦術を採用する雌は、そのような遺伝的な基盤に基づく好みとは関係なく「別の雌が選んだ」という理由で雄を選んでおり、雄の性的形質の進化に影響する重要な現象として多くの分類群で注目されています。 本研究は雌の配偶者選択におけるコピー戦術を野外で実証し、その適応的な意義を検証した数少ない研究例の1つです。 ロウソクギンポは南日本の浅海域に生息する体長6cmほどの小型海産魚で、調査地の長崎では初夏から秋にかけて雄が占有する産卵巣に複数の雌が訪れて繁殖します。 本研究の野外実験では、本来は雌が好まない「求愛をほとんどしない雄」とある雌(モデル雌)を強制的に配偶させ、その配偶・産卵行動を周囲にいる他の雌に観察させました。 するとモデル雌の産卵を観察していたそれらの雌は、本来雌が好む「高頻度で求愛する雄」がすぐ近くにいるにも関わらず、モデル雌と産卵した「求愛をほとんどしない雄」の巣の周辺に集まり(図1)、次々とそこで産卵しました。 つまり、雌は他の雌の配偶者選択をコピーして(真似て)、普段なら選択するはずのない求愛をしない雄と好んで配偶したのです。
複数の雌が産み付けた多数の卵を一度に保護する方が効率的なため、雄は巣の中の卵が少ない時には保護を途中で放棄してしまいます。 よって、雌は自分が産んだ卵が孵化まで保護してもらえるように、より多くの卵がすでに産み付けられている巣に産むのが得策です。 そこで雌は他の雌が産卵しているのを観察(確認)して、その巣に自分も産卵することで多くの卵がある巣への産卵を実現しているのでしょう(図2)。
※詳しい情報のPDFファイル(292.96KB)はコチラ
|
図1(画像をクリックすると拡大されます) 図2(画像をクリックすると拡大されます) |
|