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長崎大学研究国際部研究企画課
〒852-8521 長崎市文教町1-14
Phone: |
095-819-2039 |
Fax: |
095-819-2040 |
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遺伝性致死性不整脈は若年・壮年者に突然死を惹起する予後不良の疾患であり、その病態解明が喫緊の課題である。中でも、先天性QT延長症候群(long QT syndrome; LQTS)、ブルガダ症候群(Brugada syndrome; BrS)、進行性心臓伝導障害(Progressive cardiac conduction disturbance; PCCD)は、心筋活動電位の形状や伝搬に異常きたし致死性不整脈として研究が進んでおり、LQTSには現在12個の原因遺伝子が同定されている。LQTSでは高率に遺伝子変異が同定され、家系内の保因者の発症前診断や遺伝子情報に基づく不整脈予防にも道が開け、遺伝子検査の保険償還が決定された。しかし、本邦に多いBrS(いわゆるぽっくり病)や、心臓ペースメーカーの適応の多くを占めるPCCDは、その分子病態には依然として不明の点が多く、遺伝子異常が判明する症例は少ない。
本事業は、国内外の臨床・研究施設との密接な共同研究を展開し、臨床サンプルやiPS(人工多能性幹細胞)細胞技術を含めた最先端の技術を利用することによって、遺伝性致死性不整脈の分子病態を解明し、リスク階層化などの予後予測や、植え込み型デバイスに代わる新しい突然死予防法や創薬の開発をめざす。 |
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遺伝性致死性不整脈は症例数が少なく、一般に大家系も少ないため、連鎖解析による原因遺伝子の特定は困難である。したがって遺伝性不整脈の病態を解明するためには、国内・国外を問わず、現存の共同研究ネットワークをさらに広げ、家系・症例を多数集積することが重要である。そのようにして集積したサンプルを遺伝子解析し、変異の電気生理学的解析を行うことによって、分子病態を明らかにすることが可能になる。
また、イオンチャネル変異が心筋症などの器質的心疾患を合併するなど、イオンチャネル病には従来の研究手法では十分に説明できない病態が少なくない。本研究では、致死性不整脈の病態を心臓機能全体からとらえて、いわゆる活動電位のイオンチャネルのみならず、細胞間の刺激伝達を担うギャップジャンクションや、イオンチャネルと機能協関する細胞骨格タンパクにも着目して、統合的多階層的な病態解明を目指す。 |
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2. iPS細胞技術を用いた患者由来心筋細胞の機能解析とペースメーカー細胞誘導法の樹立 |
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患者の心筋細胞を入手することは倫理的・技術的に困難であり、これを用いた電気生理学的機能解析は不可能であった。今回、慶応大学の福田らは京都大学の山中らとの共同研究によって、ヒトの皮膚生検線維芽細胞からiPS細胞(人工多能性幹細胞)を樹立し、それを選択的に心筋細胞へ分化誘導する方法を開発した。この技術を応用することによって、遺伝子変異を有する患者のヒト心筋細胞の電気生理学的機能解析が可能になり、遺伝子変異ごとのテーラーメイド医療への道が開かれる。長崎大学も参画している本研究は、本邦で開発されたiPS技術を疾患の新たな治療法の開発や創薬の可能性を秘めた最先端の国内共同研究である。
致死性不整脈の治療法は、現時点では人工ペースメーカーや植え込み型除細動器などの植え込み型デバイスが主体であるが、これらの治療法には手術侵襲・費用・QOLの低下を含めた多くの問題がある。本研究ではヒトiPS細胞から洞結節細胞を誘導する技術の開発をめざす。将来的に家族性洞不全症候群や房室ブロックは、iPS由来洞結節細胞の細胞移植によって、定期的な侵襲的外科的手術が不要の根治治療が可能になる。 |
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遺伝子・分子・細胞レベルの機能異常が、多細胞系の組織や器官でどのような病態を示すか、またどのような刺激によって致死性不整脈が発生するかを研究するために、医工連携による多細胞Luo-Rudyモデルなどを用いたコンピュータ興奮伝達シミュレーションを推進する。 |
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上記の研究手法によって、致死性不整脈症候群患者が、遺伝子・分子・細胞レベルでどのような機能異常を持っているかを解明することが可能になる。それらの異常がどのような機序で致死性不整脈を発生するのかを個体レベルで解明するために、トランスジェニックマウスなどの遺伝子改変動物を作成し、in vivo機能解析する。遺伝子・タンパク・細胞レベルの機能解析に加えて、遺伝子改変動物を用いたin vivo解析を導入したシステム生理学的手法を用いて、致死性不整脈の分子細胞基盤の解明を目指す。 |
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