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水産・環境科学総合研究科 海棲哺乳類研究室所属の西田美紀さんらの定住性のイルカのコミュニティに関する論文がScientific Reportsに掲載されました。

  大学院水産・環境科学総合研究科 海棲哺乳類研究室 西田美紀さん(5年一貫制・博士課程5年)らは、定住性のイルカのコミュニティ(地域個体群)の分化が生じる際、その分化プロセスに与える社会的関係の影響が雌雄で異なり、オスでは長期的な関係に基づき、新たなコミュニティが生じたことを明らかにしました。

  定住性のイルカ類においては、ひとつの個体群の中にも複数のコミュニティが存在することが知られてきました。しかし、そのコミュニティがどのように生じたのか、そのプロセスに関する知見はごく限られています。

  本研究では、世界的にも珍しい、コミュニティの分化が確認された熊本県天草下島周辺に生息するミナミハンドウイルカ(Tursiops aduncus)を対象に、分化が生じる前のイルカの同伴関係(一緒にいたかどうか)を指標に、個体の社会的関係を調べました。新たにできたコミュニティに属するオスの間には、コミュニティが分化する以前から長期的な社会的関係があり、それに基づいて2つのコミュニティに分かれたことが示唆されました。一方、メスでは、分化以前の同伴関係に、後のコミュニティの構成メンバーに基づく差はなく、オスのように元々長期的な関係をもつイルカ同士で、それぞれのコミュニティに分かれたのではないことが分かりました。イルカでは、オスは子育てに参加しません。メスは、子育ての必要からコドモの年齢が近いメス同士で一緒にいることが知られ、協同していると考えられていますが、コミュニティ分化直後の、新しくできたコミュニティのメスのコドモの有無、コドモの年齢は一様ではなく、いわゆるママ友同士でそれぞれのコミュニティに分かれたのでもないことが示唆されました。

  イルカ類において、個体の社会的関係はコミュニティの分化という個体群構造の変化プロセスに影響を与えうることを示した点で貴重な成果です。

論文タイトル
A community split among dolphins: the effect of social relationships on the membership of new communities.[doi: 10.1038/srep17266]
http://www.nature.com/articles/srep17266