固体・液体・気体に続く物質の第4の状態である「プラズマ」は,通常の状態では見られない実に面白い物理学的な性質を示すとともに産業や医療などへの応用面からも,その基礎的な性質を理解するために,自然科学の見地に立った研究が求められています。プラズマは,光源,レーザー,空気清浄,表面処理,生体への照射,滅菌など,私たちの生活を支える多くの場面で活用されており,プラズマの物理学的な性質の理解を目指した基礎研究は,光科学,環境,エネルギー,製薬,バイオなどへの応用を考えたときにも重要になります。
教育学部の福山隆雄准教授らは,大気圧放電プラズマの力学的挙動について,混沌(カオス)および自己相似性(フラクタル)という非線形科学のパラダイムを取り入れた実験的な研究を遂行し,放電電流値に関する時系列情報の解析結果より,大気圧中でコロナ放電からアーク放電に遷移するに従って放電系が安定化することを見出しました。本研究で得られた知見は,時間・空間ともに複雑な動態を示すプラズマの制御に,今後,結びついていくことが期待されます。
論文タイトル: Chaotic behavior and fractals discovered in the time evolution of discharge current at atmospheric pressure
著者名: 福山 隆雄(物理学教室,連絡先:fukuyama-takao@nagasaki-u.ac.jp) 太田 圭祐(教育学部 理科専攻 2018年3月卒業,現:長崎県小学校教諭) 坂本 博紀(教育学部 理科専攻 2015年3月卒業,現:長崎県中学校教諭)
掲載誌: Physics of Plasmas(AIP Publishing, Melville, New York, 2018) https://aip.scitation.org/doi/10.1063/1.5042615
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