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メコン河に生息するトビハゼの仲間(Periophthalmodon septemradiatus)が河口から150 km上流まで分布していることを発見しました

長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科 Mai Van Hieu氏(2019年9月退学)・Tran Xuan Loi氏(海洋フィールド生命科学専攻3年)・山田明徳准教授(水産・環境科学総合研究科)・石松 惇名誉教授(現JICAカントー大学支援プロジェクトオフィス)らの研究グループは、ベトナム南部のメコン河流域に生息するトビハゼの仲間(Periophthalmodon septemradiatus)が沿岸域だけでなく、河口から150 km上流の淡水域まで広く分布し、生息域全域で産卵していることを発見しました。メコンデルタでの4年間にわたるフィールド調査の成果です。

他のほとんどすべてのトビハゼ・ムツゴロウ類が沿岸域だけに分布しているのに対して、なぜこの種が淡水域にまでおよぶ広い分布域をもっているのか、環境の塩分濃度がこの種の生理と生態にどのような影響を及ぼしているのか、脊椎動物の進化と環境適応を考える上で大変興味深い題材です。

繁殖期のオスの体は青い金属光沢の婚姻色を呈しており、とても目立ちます。産卵のための巣穴は主にメコン河支流の河岸に掘られています。他のトビハゼやムツゴロウ類の産卵用巣穴と同じく、本種の巣穴の中には産卵室があり、巣穴を守るオスが持ち込んだ空気が貯まっていて、卵が天井の壁に1層になって産み付けられています。

Periophthalmodon septemradiatus
*Periophthalmodon septemradiatus * オス(手前、婚姻色)、メス(奥)

産卵用巣穴が河口から淡水域までの全域にあったことから、再生産は全域で起こっているものと考えていましたが、耳石のストロンチウム:カルシウム分析を行った結果は、全ての仔稚魚は高塩分水域で孵化していることを示しました。さらに、ミトコンドリア遺伝子の解析結果は、河口から淡水域まで遺伝的な違いがなく、分布域全体を行き来していることを示しました。しかし、河口から150 kmの分布上限で採集した稚魚のサイズは25 mmしかなく、この個体が河口で産まれて150 kmもの距離をこのサイズになるまでの期間(日本産のトビハゼだと孵化後約2か月)でどのように遡上してきたのか疑問に思われます。さらなるフィールド調査によって解明すべき課題が多くあります。

本研究の成果は「Scientific Reports」でウェブ上に発表されました。

Mai, H. V., L. X. Tran, Q. M Dinh, D. D. Tran, M. Murata, H. Sagara, A. Yamada, K. Shirai and A. Ishimatsu (2019) Land invasion by the mudskipper, Periophthalmodon septemradiatus in fresh and saline waters of the Mekong River. Scientific Reports, 9: 14227

https://doi.org/10.1038/s41598-019-50799-5.

より詳しい研究内容は下記までお問い合せください。

JICAカントー大学支援プロジェクトオフィス
石松 惇
E-mail: a-ishima*nagasaki-u.ac.jp
(*を@に変換してください)