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ジンベエザメの遺伝的集団構造や集団の人口学的歴史についての論文が出版されました

長崎大学水産学部柳下直己准教授、上越市立水族博物館池口新一朗氏および沖縄美ら海水族館松本瑠偉博士の研究グループによる、ジンベエザメの遺伝的集団構造および集団の人口学的歴史についての論文が、ハワイ大学出版の総合科学誌 Pacific Science に掲載されました。

ジンベエザメは全長 12 m 以上になる世界最大の魚類で、全世界の熱帯から温帯に生息しています。1990年代後半から 2000年代前半にかけて資源が減少したことから、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでは絶滅危惧に分類され、CITES(ワシントン条約)では附属書 II に掲載されています。絶滅のおそれがある生物の資源管理や保全の方針を考える際には、遺伝的集団構造をはじめとする遺伝学的情報が大変有用になります。

ジンベエザメ Rhincodon typus

ジンベエザメの遺伝的集団構造については、これまでにいくつかの研究があり、インド―太平洋集団と大西洋集団は遺伝的に異なることが明らかにされています。しかし、日本周辺の個体における遺伝的特徴については全く調べられていませんでした。そこで、日本周辺の個体についてミトコンドリア DNA の塩基配列を決定し、これまでに発表された塩基配列と合わせた全世界 10 地点からの合計 638 個体のデータを用いて解析し、本種の世界的な遺伝的集団構造や集団の人口学的歴史などを推定しました.

その結果、新たに、日本産の遺伝的多様性は他の地域産と同様に高いこと,西太平洋−インド洋間や北太平洋の東西・南北間では個体の移動があるが、東太平洋−インド洋間での移動は限られていること、大西洋には遺伝的に大きく分化したいくつかの系統があること、人口学的歴史はインド―太平洋と大西洋では大きく異なること、有効集団サイズはインド―太平洋が大西洋の 2 倍程度であることなどが分かりました。

Yagishita N, Ikeguchi S, Matsumoto R (2020) Re-estimation of genetic population structure and demographic history of the whale shark (Rhincodon typus) with additional Japanese samples, inferred from mitochondrial DNA sequences. Pacific Science 74:31–47. doi:10.2984/74.1.3.

https://muse.jhu.edu/article/752380

より詳しい研究内容は下記までお問い合せください。

長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科
准教授 柳下直己
E-mail: n-yagi*nagasaki-u.ac.jp (* を @ に変換してください)