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成熟肝細胞よりリプログラミングした肝前駆細胞から胆管細胞を誘導し、胆汁排泄機構を構築

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科移植・消化器外科の研究グループ(江口 晋教授)は、“成熟肝細胞より三種類の低分子化合物を用いてリプログラミングした肝前駆細胞(Chemically-induced Liver Progenitor; CLiP)から胆管細胞を誘導し、肝細胞との組織構築により胆汁排泄機構を構築可能であることをin vitro試験にて確認しました。

胆汁排泄システム

胆汁排泄構造を人工的に作成した肝組織に統合することは、肝再生医療の進歩における重要な問題です。ヒトにおいて、胆汁代謝産物の蓄積/排泄に重要な役割を持つ胆管細胞自体は、肝臓内に占める割合が低く、実際には大量採取が困難です。ラット成熟肝細胞からのin vitro誘導肝前駆細胞(CLiP)により、胆管細胞を豊富に生成することが可能であり、培養法の検討により、CLiP由来の管状胆管様構造体が作成可能となりました。また、この胆管様構造体上で肝細胞を直接共培養することにより、胆管構造と肝細胞が統合された肝類似組織が新たに作成されました。この組織では、非共培養あるいは胆管細胞単層のみでは確認できなかった、胆汁排泄機能を有することがCholyl-lysyl-fluoresceinアッセイを用いて確認できました。上記成果により、in vitroでの肝細胞から胆汁への排泄動態検討あるいは、薬剤排出試験が可能となり、今後より安全な創薬への応用が期待されます。さらに、この肝類似組織では、肝発生マーカー遺伝子発現の上昇を示したことから、今後より臨床応用に近づく肝組織の構築も期待されます。

本研究は、エーザイ株式会社(本社:東京都)との共同研究により実施しました。
本成果は2020年3月第19回日本再生医療学会にて発表しました。

研究内容の詳細は下記までお問い合せください。
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科
役職・氏名 講師 足立 智彦
E-mail: adatomo*nagasaki-u.ac.jp (*を@に変換してください)