2021年02月09日
この度、国立大学法人長崎大学*1(長崎県長崎市文教町1-14、学長 河野 茂:以下長崎大学)とネオファーマジャパン株式会社*2(東京都千代田区富士見2-10-2、代表取締役 河田聡史:以下NPJ)は、新型コロナウイルス感染症(以下、「COVID-19」)の原因ウイルスであるSARS-CoV-2を用いて、培養細胞における感染実験を行った結果、5-アミノレブリン酸*3(以下、「5-ALA」)の強い感染抑制効果を発見しました。
本研究は、2021年2月8日(日本時間)に国際学術誌「Biochemical and Biophysical Research Communications」に正式に掲載されました。
長崎大学とNPJは、2020年10月29日付のリリース*4の通り、引き続き臨床研究の実施を進めて参ります。
【URL】
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0006291X2100156X
【概要】
現在のCOVID-19の感染拡大に対し、効果的な治療法の開発が緊急的に求められています。5-ALAは、天然で合成されるアミノ酸であり、その高い生物学的利用能から抗がん療法や健康食品など、さまざまな目的で使用されています。私達は、本研究において、5-ALAがCOVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2の感染を培養細胞において強力に抑制することを示しました。この抗ウイルス効果は、明らかな細胞毒性無しに、ヒト細胞と非ヒト細胞の両方で認められました。そのため、5-ALAはCOVID-19に対する抗ウイルス薬の候補としてさらなる研究を進める価値があると考えられます。
【本研究のトピックス】
・5-ALAは、培養細胞においてSARS-CoV-2の感染を抑制しました。
・5-ALAの抗ウイルス効果は、非ヒト細胞よりもヒト細胞に対してより顕著でした。
・5-ALAは、細胞毒性もなく濃度依存的に抗ウイルス効果を示しました。
【論文タイトルと著者】
タイトル
5-aminolevulinic acid inhibits SARS-CoV-2 infection in vitro
著者
櫻井康晃(長崎大学熱帯医学研究所/感染症共同研究拠点 助教)
ミャ ミャッ ヌグェ トン(長崎大学熱帯医学研究所 助教)
黒?陽平(長崎大学感染症共同研究拠点 准教授)
佐倉孝哉(長崎大学熱帯医学研究所 助教)
稲岡健ダニエル(長崎大学熱帯医学研究所/熱帯医学・グローバルヘルス研究科 准教授)
藤根清考(ネオファーマジャパン株式会社)
北潔(長崎大学熱帯医学・グローバルヘルス研究科/熱帯医学研究所 教授)
森田公一(長崎大学熱帯医学研究所 教授)
安田二朗(長崎大学熱帯医学研究所/感染症共同研究拠点 教授)
掲載誌
Biochemical and Biophysical Research Communications
Volume 545, 19 March 2021, Pages 203-207
感染実験及び5-ALAの感染抑制効果の概要(下図:感染細胞の免疫染色像) |
【用語解説】
*1 国立大学法人⾧崎大学
⾧崎大学は、1949 年(昭和 24 年)に設置された国立総合大学です。1950-60 年代にキャンパスの移転・統合が行われ、坂本キャンパスに医学系学部・研究所(医学部、歯学部、⾧崎大学病院、熱帯医学研究所 等)が所在しております。⾧崎大学はその地理的・歴史的背景から、熱帯医学・感染症、放射線医療科学分野における卓越した実績を有しており、感染症領域において日本では他の追随を許さない豊富な研究の蓄積と研究者陣容を擁し、国内外に有数な感染症の教育研究拠点となっています。
http://www.nagasaki-u.ac.jp/
*2 ネオファーマジャパン株式会社
ネオファーマジャパン株式会社は、アラブ首⾧国連邦(UAE)に本拠地を持つ Neopharma LLC とneo ALA株式会社(旧社名:コスモALA株式会社)との合弁によって設立されました。ネオファーマグループは、UAE(アラブ首⾧国連邦)に本社を置く国際的な製薬企業であり、中東をはじめとする新興国を中心に医薬品製造・販売事業を展開しています。ネオファーマジャパンは、Neopharma LLC の海外戦略における医薬製造という分野において重要な役割を担っています。加えて、ネオファーマジャパンは、5-アミノレブリン酸(5-ALA)を用いて様々な用途開発の研究開発を進めることにより、グループ全体に新たな付加価値を創出しています。
https://www.neopharmajp.co.jp/
*3 5-アミノレブリン酸(5-ALA)
ヒトや動物・植物は細胞内のミトコンドリアという細胞小器官でエネルギーを作り出すことで生命活動を維持しています。このミトコンドリアが機能するためには、5-アミノレブリン酸(5-ALA)が非常に重要な役割を果たしています。5-ALA は、最終的にミトコンドリアの中で「ヘム」という物質に変化します。ヘムは「シトクロム」というエネルギーを作り出すために必要不可欠なタンパク質の成分となります。また、すでに 10 年以上前から健康食品、化粧品、ペットサプリメント、飼料、肥料に活用されている非常に安全性の高いアミノ酸です。5-ALA はがん分野では脳腫瘍や膀胱がんの可視化を目的とした医薬品としても承認されております。また、5-ALA は、ミトコンドリアの機能を向上させることが知られており、埼玉医大を中心としたミトコンドリア病の第 3 相医師主導治験が進められています。
http://5ala-journal.com/
*4 2020年10月29日付リリース
⾧崎大学による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者に対する5-アミノレブリン酸(5-ALA)を用いた特定臨床研究開始のお知らせ。
長崎大学病院の諸手続きが終了し、2月4日より開始された。
https://www.neopharmajp.co.jp/library/592faa4a16088b6a0b777d96/5f9a3e02c3bfdbcd742f9140.pdf
<お問い合わせ先>
国立大学法人長崎大学 熱帯医学・グローバルヘルス研究科(長崎市坂本1-12-4)
TEL:095-819-7008(総務担当)
担当者:熱帯医学・グローバルヘルス研究科長 教授 北 潔
E-mail:kitak*nagasaki-u.ac.jp(*をアットマークに変えて送信ください)