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新型コロナウイルス (SARS-CoV-2)及び出血熱を引き起こすラッサウイルスのモデルウイルスとして知られるリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス (LCMV)に対して、両ウイルス間に共通する新たな抗ウイルス標的を同定

感染症共同研究拠点/熱帯医学研究所の浦田秀造准教授、鹿児島大学大学院理工学研究科の石川岳志教授らは、新型コロナウイルス (SARS-CoV-2)及び出血熱を引き起こすラッサウイルスのモデルウイルスとして知られるリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス (LCMV)に対して、両ウイルス間に共通する新たな抗ウイルス標的を同定し、本研究成果は2021年6月24日付で国際学術誌「Viruses」に掲載されました。

SARS-CoV-2は高い感染力を持ち、公衆衛生上の脅威となっています。また、病原性が非常に高いラッサウイルスを含むアレナウイルス科に対する認可されたワクチンや抗ウイルス薬はありません。今回、浦田准教授らはSARS-CoV-2のnsp14と呼ばれるウイルスタンパク質とアレナウイルス科のLCMVのNPと呼ばれるタンパク質に共通するエキソヌクレアーゼ活性部位 (DED/EDhモチーフ)に着目し、LCMVのNPの立体構造 (DEDDhモチーフ)と計算科学的手法により予測したSARS-CoV-2のnsp14の立体構造 (DEDEhモチーフ)が重なり合うこと、低分子化合物であるATA及びPV6RがDED/EDhモチーフに結合し得ることを計算科学的手法にて示し、実際にATAとPV6RがSARS-CoV-2とLCMVの感染を抑制することを培養細胞レベルで明らかとしました。

SARS-CoV-2に対しては複数のワクチン、抗ウイルス薬が開発されていますが、今回浦田准教授らが着目した酵素活性部位に対する新規薬剤の開発は、病原性が高いラッサウイルスのみならず変異株を含むSARS-CoV-2の感染に対する治療に繋がることが期待されます。

図:SARS-CoV-2のnsp14とLCMVのNPは共通したDED/EDモチーフを保有し (A)、化合物PV6RとATAをそれぞれのモチーフに結合させたシュミレーション解析(B)。

◆論文情報◆

タイトル:The antiviral effect of the chemical compounds targeting DED/EDh motifs of the viral proteins on Lymphocytic Choriomeningitis virus and SARS-CoV-2 (LCMVとSARS-CoV-2のウイルスタンパク質内にあるDED/EDhモチーフを標的とした化合物の抗ウイルス効果)

https://www.mdpi.com/1999-4915/13/7/1220