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準安定型配位を基盤とする高効率触媒の開発

 大学院医歯薬学総合研究科医薬品合成化学分野の栗山正巳准教授は,準安定型配位を設計基盤とする高効率触媒の開発に取り組んでいる。 

 高効率かつ一般性に優れた化学変換を実現可能とする触媒系の発見と開発は,有機合成化学における重要な課題のひとつであり,金属原子から必要な機能と性能を効果的に引き出す配位子設計として準安定型配位に着目した。準安定型配位子は,親和性の高い部位によって金属原子に強固に配位する一方で,親和性の低い配位部が柔軟な配位形態を取るという特徴を有する。強固な多座型配位とは異なり,このような配位は,基質交換の促進,空配位座の保護,電子状態の動的制御などを可能とする。 

 例えば,複素環カルベンを母核とする準安定C−X二座型配位子(X:ヘテロ原子)は,触媒的アリール化反応において極めて優れた効率と一般性を実現した。本触媒系は,各種官能基に対して高い耐性を有しており,水のみを溶媒としても十分な活性を維持するばかりでなく,大スケール合成にも対応可能である。更に,有用合成素子の効率的合成法の確立に応用すると共に,異なる機構を有する複数反応の同時制御に成功した。また,鍵となる副配位部を適切に選択すれば機構に合わせて個別の反応ごとに効率の最適化を行うことも可能である。 

 上記に関する研究成果「準安定二座型配位子を用いた効率的アリール化反応の開発」に対し,平成23年度日本薬学会奨励賞が授与された。また,本触媒系を基盤とした萌芽的研究「複数の金属触媒を活用した糖類の選択的変換反応の開発」に対し,有機合成化学協会より三洋化成工業研究企画賞が与えられた。