2022年04月13日
この度、国立大学法人長崎大学とネオファーマジャパン株式会社(以下 NPJ)は、新型コロナウイルス感染症(以下、「COVID-19」)の原因ウイルスである SARS-CoV-2 のオミクロン株を用いて、培養細胞における感染実験を行った結果、5-アミノレブリン酸*1(以下、「5-ALA」)に濃度依存的な感染抑制効果を確認しました。
本研究は、2022 年4月8日(日本時間)に国際学術誌「Tropical Medicine and Health」に受理されました。
◆概要
2020 年から続く COVID-19 の各種変異株の感染拡大に対し、効果的な対処法の開発が緊急的に求められています。5-アミノレブリン酸(5-ALA)は、天然で合成されるアミノ酸であり、その高い生物学的利用能から抗がん療法や健康食品など、さまざまな目的で使用されています。私達はこれまでの研究から、5-ALA が COVID-19 の原因ウイルスである SARS-CoV-2 及び、デルタ株を含む 4 種の変異株の感染を、培養細胞において一定の濃度以上で完全に抑制することを示しました*2。
この抗ウイルス効果は、明らかな細胞毒性無しに確認されました。そこで、COVID-19 に対する抗ウイルス薬の候補として 5-ALA のさらなる研究を進めたところ、細胞を用いたオミクロン株に対する試験において、同様な結果が得られました。
◆本研究のトピックス
■ 5-ALA は、培養細胞において SARS-CoV-2 のオミクロン株の感染を抑制しました。
■ 5-ALA は、細胞毒性もなく濃度依存的に抗ウイルス効果を示しました。
■ 5-ALA は、感染抑制に対してウイルスの細胞への侵入や細胞内での複製阻害など複数の作用メカニズムが考えられるため、今後新たに出現する変異株にも有効である可能性が示唆されました。
■ 5-ALA はミトコンドリア機能を向上することからウイルス感染によって生じるミトコンドリアの断片化などを抑制し、感染細胞の障害を軽減することが考えられます。
■ 5-ALA は、感染抑制に対してウイルスの細胞への侵入や細胞内での複製阻害など複数の作用メカニズムが考えられるため、今後新たに出現する変異株にも有効である可能性が示唆されました。
■ 5-ALA はミトコンドリア機能を向上することからウイルス感染によって生じるミトコンドリアの断片化などを抑制し、感染細胞の障害を軽減することが考えられます。
◆論文情報
タイトル:5-aminolevulinic acid antiviral efficacy against SARS-CoV-2 Omicron Variant in vitro
URL : https://tropmedhealth.biomedcentral.com/articles/10.1186/s41182-022-00422-7
著 者:
ミャ ミャッ ヌグェ トン(長崎大学熱帯医学研究所 准教授)
佐倉孝哉(長崎大学熱帯医学研究所 助教)
櫻井康晃(長崎大学熱帯医学研究所/高度感染症研究センター 助教)
黒﨑陽平(長崎大学高度感染症研究センター 准教授)
稲岡健ダニエル(長崎大学熱帯医学研究所/熱帯医学・グローバルヘルス研究科 准教授)
塩田倫史(熊本大学発生医学研究所/大学院薬学系研究科 独立准教授)
クリス スミス (長崎大学大学院熱帯医学・グローバルヘルス研究科 教授)
安田二朗(長崎大学熱帯医学研究所/高度感染症研究センター 教授)
森田公一(長崎大学熱帯医学研究所 教授)
北潔(長崎大学大学院熱帯医学・グローバルヘルス研究科/熱帯医学研究所 教授)
◆用語解説
*1 5-アミノレブリン酸(5-ALA)
ヒトや動物・植物は細胞内のミトコンドリアという細胞小器官でエネルギーを作り出すことで生命活動を維持しています。このミトコンドリアが機能するためには、5-アミノレブリン酸(5-ALA)が非常に重要な役割を果たしています。5-ALA は、最終的にミトコンドリアの中で「ヘム」という物質に変化します。ヘムは「シトクロム」というエネルギーを作り出すために必要不可欠なタンパク質の成分となります。また、すでに 10 年以上前から健康食品、化粧品、ペットサプリメント、飼料、肥料に活用されている非常に安全性の高いアミノ酸です。5-ALA はがん分野では脳腫瘍や膀胱がんの可視化を目的とした診断薬としても承認されております。また、5-ALA は、ミトコンドリアの機能を向上させることが知られており、埼玉医大を中心としたミトコンドリア病の第 3 相医師主導治験が進められています。http://5ala-journal.com/
*2 2022 年 1 月 14日 長崎大学ホームページ RESEARCH
「5-アミノレブリン酸(5-ALA)による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)原因ウイルス各種変異株に対する感染抑制を確認」
https://www.nagasaki-u.ac.jp/ja/science/science257.html
◆お問い合わせ先
長崎大学 研究国際部 熱帯医学研究支援課総務担当
E-mail:soumu_nekken*ml.nagasaki-u.ac.jp(*を@に変換して下さい)
ネオファーマジャパン株式会社(東京都千代田区麹町 6-2-6 PMO 麹町 2 階)
E-mail:info*neopharmajp.com(*を@に変換して下さい)