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アフリカのガボン共和国における COVID-19 の流行解析に関する論文が 『The Lancet Microbe 誌』にオンラインで掲載されました

  高度感染症研究センター新興ウイルス学分野/熱帯医学研究所新興感染症学分野の安田二朗教授、阿部遥助教、牛島由理助教とガボン共和国ランバレネ医療研究センター(CERMEL)の共同研究グループは、ガボン共和国における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行解析に関する論文を 2022 年 4 月 21 日付で医学誌「The Lancet Microbe」に発表しました。

  同グループは、昨年度同誌にガボン共和国における新型コロナウイルス変異株に関する最初の報告として、 2020 年 12 月から 2021 年 3 月にかけて旅行者を介してガボン共和国に持ち込まれた変異株の系統および旅行者の出発地を解析し、アルファ型変異株(B.1.1.7)やベータ型変異株(B.1.351)が、かなり早い段階からガボン共和国に侵入していたことを報告しました。(Zoa-Assoumou et al., Lancet Microbe, 2021)

  今回の論文では、さらにその後の流行について継続的に調査・解析を行い、ガボンでは、2020  年  4-7  月の 第 1 波(欧州型変異株 B.1.1)、2021 年 1-5 月の第 2 波(アルファ型変異株およびB.1.1.318)、同年 9-11 月の第 3 波(デルタ型変異株 B.1.617.2)の流行があり、第 2,3 波はアフリカ全体に比べ 1-2 か月遅れて発生していることを明らかにしています(図)。ガボン政府の新型コロナ対策の規制強化及び緩和と感染者の増減に関しては明確な因果関係は認められませんでしたが、他のアフリカ諸国に比べて流行開始が  1-2  か月遅れたことにより、対策の整備のための準備期間を設けることができたことが診断や医療体制の整備など対応に有利に働いたと考えられます。


   安田教授らのグループは、2016 年より日本医療研究開発機構(AMED) と国際協力機構(JICA) の共同事業「地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)」の研究課題「公衆衛生上問題となっているウイルス感染症の把握と実験室診断法の確立」をガボン共和国で実施しており、現地でのウイルス感染症の実態調査と診断システムの開発と導入、そして人材育成を行ってきました。また、同国における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に先駆けて現地共同研究機関 CEREMEL で COVID-19 の診断ができるように診断法の導入と現地研究者のトレーニングを実施しており、流行初期から CERMEL がガボン国内における COVID-19 主要検査機関として活躍するサポートも行ってきました。
  今後も現地共同研究機関との緊密な連携下での調査・研究を継続してくことにより、感染拡大機序の解明など、ガボンのみならず全世界の COVID-19 対策に貢献する成果をあげることが期待されます。

  


図:ガボン共和国とアフリカ全体の流行状況の比較と各流行における変異株系統および政府対応

 

 ■論文情報 
Abe, H., Ushijima, Y., Bikangui, R., Nguema Ondo, G., Lell, B., Adegnika, A.A., and *Yasuda, J.: Delays in the arrival of the waves of COVID-19: comparison between Gabon and the African continent. The Lancet Microbe
(COVID-19 流行の波の時間差:アフリカ全体とガボン共和国の流行の比較)
URL:  https://www.thelancet.com/journals/lanmic/article/PIIS2666-5247(22)00091-X/fulltext