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令和4年度 「ワクチン開発のための世界トップレベル研究開発拠点の形成事業」 長崎大学、ワクチン開発拠点に ~パンデミック発生時の100日でのワクチン供給を目指して~

このたび,長崎大学は、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(以下,AMED)「ワクチン開発のた
めの世界トップレベル研究開発拠点の形成事業」に採択されました。

・本件に関するAMEDからの採択情報はこちら
https://www.amed.go.jp/koubo/21/02/2102C_00002.html

 この事業は、我が国の新型コロナウイルスワクチン開発の遅れの反省から策定されたワクチン開発国家戦略に基づくもので、ワクチン開発が可能な大学・研究機関を選別し、世界トップレベルの研究開発拠点を国内に形成することを目的としています。長崎大学は、東京大学(フラッグシップ拠点)、北海道大学、千葉大学、大阪大学(いずれも、シナジー拠点)とともに、その一つに選ばれました。
※フラッグシップ拠点は研究開発の中心となる拠点で、シナジー拠点は研究開発をそれぞれの強みを
活かし行い、お互いの相乗効果が期待される拠点のことです。

 本学のワクチン研究開発拠点は、令和4年4月1日に新設した「感染症研究出島特区」(別紙2参照)に設置し、塩野義製薬株式会社、NECオンコイミュニティAS社、KMバイオロジクス株式会社とともに、人類の脅威となる感染症に対するワクチン開発を実施します。 とくに、長崎大学がこれまで研究してきた高病原性病原体(エボラ出血熱などを引き起こす危険な病原体)や熱帯性病原体(デング熱、マラリアなど、熱帯地域に広がる感染症の病原体)を対象としたワクチン開発を推進するとともに、本学ならびに参画企業が特許を有する脂質ナノ粒子(LNP)の応用、さらには、AI(人工知能)を活用したワクチン開発を進めて参ります。また、世界から感染症に関する情報収集を行い、有事に迅速に対応できる体制を構築することも目指します。
 これらの取組により、本学は、将来の世界的感染症の流行時に100日以内でのワクチン供給を視野に入れた国家戦略に寄与するのみならず、国民の健康と経済を感染症から守ることに貢献して参ります。
なお、本事業実施の母体となる感染症研究出島特区に対しては、産・官・学の7団体等で構成された長
崎都市経営戦略推進会議より支援の表明がなされています。

■ワクチン開発のための世界トップレベル研究開発拠点の形成事業について
AMED 資料より抜粋(https://www.amed.go.jp/content/000096458.pdf

◆事業の背景
●新型コロナウイルス感染症のパンデミックを契機として、これまでのワクチン研究開発・生産体制等における課題、内在する要因を踏まえ、政府が一体となって必要な体制を再構築し、長期継続的に取り組む国家戦略として「ワクチン開発・生産体制強化戦略」(以下「ワクチン戦略」という。)が令和3年6月1日に閣議決定された。
●同戦略では、感染症ワクチンの感染症有事の迅速な開発を念頭においた、平時からの研究開発・生産体制を強化することが必要とされている。
●そのため、AMED に平時・感染症有事を通じたマネジメント及び全体調整を行うセンター長や、国内外の研究開発動向等を踏まえ研究開発の進捗管理を行うプロボスト等を配置し研究開発のマネジメントを行う先進的研究開発戦略センター(Strategic Center of Biomedical Advanced Vaccine Research and Development for Preparedness and Response : SCARDA、以下「SCARDA」という。)を設置した。
  また、「ワクチン開発・生産体制強化戦略に基づく研究開発等の当面の推進方針」※(令和 4 年 2 月28 日 内閣府健康・医療戦略推進事務局、内閣府科学技術・イノベーション推進事務局日本医療研究開発機構担当室、文部科学省、厚生労働省、経済産業省)が取りまとめられた。

※ワクチン開発・生産体制強化戦略に基づく研究開発等の当面の推進方針
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/vaccine_kyouka/pdf/suishin_hoshin.pdf


◆事業方向性

●公衆衛生の向上に伴い、我が国における感染症研究の相対的重要性が低下し、ワクチン研究開発、特
に新たなモダリティを含めた最先端の研究への取組が欧米諸外国に比して産官学いずれにおいても
不十分な状況にあった。
●こうした状況は、今般のパンデミック発生に際し、ワクチン開発を含めた研究開発の遅れの要因の一
つとなったと考えられる。今後のパンデミックに備え、平時から、感染症研究に加え、最先端アプロ
ーチによる研究開発を長期継続的に支援する必要がある。
●本事業では、有事における国を挙げての迅速なワクチン開発のためにも、独立性・自律性を確保した
柔軟な運用を実現し、世界の研究者を惹きつける、これまでにない世界トップレベルの研究開発のフ
ラッグシップ拠点(以下、「フラッグシップ拠点」という。)とシナジー効果が期待できる特徴的な拠
点(以下、「シナジー拠点」という。)を形成し、オールジャパンで備えるべき研究力・機能を整備・
強化する。
●当該フラッグシップ拠点を中心に、感染症有事の迅速な対応に備え、平時から、感染症研究に加え、
ヒト免疫、ゲノム医療、工学、情報科学などの多様な分野融合・先端的な研究を推進するとともに、
出口を見据えた産業界・臨床現場との連携を進める。

■ 感染症研究出島特区について
(感染症研究出島特区ウェブサイトより抜粋:https://dida.nagasaki-u.ac.jp/
本学では、熱帯医学研究所,高度感染症研究センター,熱帯医学・グローバルヘルス研究科,医歯薬学総合研究科,大学病院の 5 つの部局が精力的に感染症研究を推進しており、その様な多岐に亘る研究組織構成が我が国の大学の中でも稀な本学の特色となっています。2021 年度には BSL-4 施設が竣工し、これまで大学として整備してきたアジア・アフリカ教育研究拠点とあわせて世界で蔓延するあらゆる感染症についての研究環境が整いました。一方で、別々の部局と言うこともあり機能の分散化が問題となっていました。そこで、2022 年 4 月、本学は、これら学内に分散していた感染症研究資源の統合的運用を可能にし,有能な人材を発掘・育成する仕組みとして「感染症研究出島特区」(以下、特区)を新設いたしました。具体的には上記 5 部局を中核に,関連人材を有する情報データ科学部,経済学研究科,多文化社会学研究科等の医学系以外の部局の協力も得ながら,基礎研究から臨床研究、医薬品開発にかかわる一連の感染症研究の強化・効率化を推進する予定です。そして、有事(パンデミック等発生時の緊急事態)においては、病原体解析から臨床研究、迅速な治療薬・ワクチンを開発するプラットフォームとして、トップダウンの緊急対応を行うことを目指しています。
 特区は、基礎研究部門,国際臨床開発部門,人材育成部門の3部門で構成されます。教員(研究者)は、特区専任教員に加え、他の部局で個別に研究を展開している感染症研究者が兼任教員として、そのエフォート(業務の配分割合)の一部を割き参加し、特区連携研究を推進します。さらに、本学の感染症研究力の強化のみならず、我が国全体の感染症研究人材の育成を促進する取組として,国内外の大学教員が彼らの所属を残したまま本学で研究者として在籍(5年程度)し、共同研究実施の後、元の大学等に復帰することを可能にする「流動研究者制度」も合わせて整備します。本制度により優秀な他学の若手教員が本学において研究を実施することにより、本学の研究力の向上が期待できると共に,本学の熱帯医学や新興感染症に関するユニークな研究資源を長期間にわたり全国的に活用できる基盤を作ることで我が国の感染症研究力の向上、そして、広い学術的視野を持った次世代の感染症研究者の育成が期待されます。