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顧みられない熱帯病に対する国内医療体制の脆弱性を指摘~日本における顧みられない熱帯病の現状を概観した論文を発表~

 長崎大学熱帯医学・グローバルヘルス研究科の吉岡浩太准教授らの研究グループは、2024 年 1 月、「日本における顧みられない熱帯病の現状:スコーピングレビュー」を発表しました。(※1)
 
 顧みられない熱帯病(※2 以下 NTDs)は、世界保健機関(WHO)が、人類の中で制圧しなければならない熱帯病として定めた、主に熱帯地域で蔓延している 20 の疾患グループのことを指します。衛生環境の整っている日本をはじめとする高所得国においては大きな注意を払われることもなく、途上国の課題と捉えられることが一般的な疾患ばかりです。
 しかし、実際には日本国内においても 2014 年から 2017 年にかけて、年間平均 340 件の NTDs の症例が公式に報告されており、しかもこの数字は NTDs の現実を過小評価していると考えられます。それにもかかわらず日本では多くの NTDs について監視・防除プログラムなど対処のための法的な枠組みがないこと、承認されている治療薬がないこと、薬剤調達を限られた数の医師や研究者に過度に依存し、対処を委ねているなどの現状を今回の論文で明らかにしました。さらに、NTDs に関するサーベイランスの強化、診断及び医薬品へのアクセスの拡大、未承認の NTDs 治療薬の手頃な価格の確保といった課題も指摘しています。気候変動や人口移動により、これまで国内では見られなかった疾患の流行も懸念される中、NTDs に関する研究を推進する重要性を訴えるとともに、NTDs に対する一般の関心を高める必要性を説く論文となっています。

※1 https://journals.plos.org/plosntds/article?id=10.1371/journal.pntd.0011854

※2 世界保健機関(WHO)が定めた 20 の疾患グループ
アフリカトリパノソーマ症、シャーガス病、狂犬病、ブルーリ潰瘍、デング熱・チクングニア熱、リーシュマニア症、住血吸虫症、リンパ系フィラリア症、ハンセン病、オンコセルカ症、条虫症および神経嚢胞症、エキノコックス症、フランベジア、メジナ虫症、食品由来の吸虫症、菌腫、土壌伝染性蠕虫症、疥癬、毒蛇咬傷、トラコーマ

注)壊死性潰瘍性口内炎(2023 年 12 月に 21 番目の疾患として NTDs に追加されました)