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Research

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捕食者の接近を自動で感知して、餌が高速で逃げる装置を開発

■ポイント
・捕食者を感知する距離、反応までの時間、速度など様々な変数を調節可能な装置を開発。
・捕食者を感知して反応するまでの時間は最短で約0.07秒に設定可能。
・餌が逃げる速度は最大で平均秒速1m以上に設定可能。
・装置の反応時間と速度は実際の餌(小魚や昆虫)に匹敵するため、様々な実験に適用可能。

■概 要 
 動物行動学を専門とする長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科の河端 雄毅 准教授(現:総合生産科学研究科)らは、コンピュータビジョンを専門とする東北大学大学院情報科学研究科の橋本 浩一 教授らと共同で、捕食者の接近を自動で感知して餌が逃げる装置を開発しました。この装置は、上部に設置したUSBカメラが捕食者の接近(予め設定した円への捕食者の侵入)を感知すると、モーターが作動し餌が逃げるというものです(図1)。

■研究の背景 
 捕食者などの危険に遭遇すると、多くの動物は逃げることで、その危険を回避します。逃げきれるか食べられるかは、速度などの運動性能に加えて、どのタイミングで逃げはじめるか、どの方向に逃げるか、そして捕食者がどのように追跡するかといった行動特性で決まります。これらの要素を明らかにすることは、どのような特性を持った生物が生き残り易いか、またどのような特性が進化してきたかなどを明らかにすることに繋がるため、行動学、生態学、進化生物学において重要です。
 実際の捕食者と餌生物の攻防の様子を分析することも時として有効ですが、注目したい運動性能や行動の要素が対象とする生物の中でばらつきがなければ、その要素が実際に重要かどうかを調べることはできません。例えば、逃げる速度が本当は重要だったとしても、その餌生物全個体の速度がほとんど同じだった場合、それが捕食者を回避するのに重要かどうかは検証できません。そのような時は、餌の速度を「ゆっくり」「速い」のように操作して実際の捕食者に与えるというような操作実験が有効です。しかし、小魚や昆虫のような餌生物は、瞬時に反応して(0.1秒以下の反応時間)、高速(秒速1m以上)で逃げるため、それに匹敵する運動性能を備えた装置が必要でした。

■研究成果の意義 
 開発した装置により、どのような餌生物の特性が捕食者の攻撃を回避するのに有効かを様々な捕食者に対して分析することが可能になります。また、捕食者がどのように餌生物に反応して追跡するかといった捕食者の運動性能や行動特性を調べるのにも使用できます。今回は魚を捕食者に用いて水中での実験を想定しましたが、陸上の捕食者(トカゲ、カエルなど)を用いた実験にも応用可能です。

■謝 辞 
本研究は科学研究費補助金(新学術領域研究:19H04936)の助成を受けて実施しました。

■論文情報 
・雑誌名:The Journal of Experimental Biology(Impact Factor = 2.8)
・論文名:Automated escape system: identifying prey’s kinematic and behavioral features critical
for predator evasion
・著者名:角南 希海(実験当時:長崎大学水産学部)、
木村 響(実験当時:長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科)
伊東 秀謹(実験当時:東北大学情報科学研究科)
橋本 浩一(東北大学情報科学研究科)
佐藤 裕太(実験当時:長崎大学水産学部)
橘 聡毅(実験当時:長崎大学水産学部)
日髙 幹也(実験当時:長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科)
見山 航希(実験当時:長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科)
渡邊 浩文(実験当時:長崎大学水産学部)
河端 雄毅 准教授(長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科)
・掲載日:2024年5月1日
・URL :https://doi.org/10.1242/jeb.246772


■関連リンク
▶河端雄毅准教授 研究室
https://sites.google.com/site/kawabatalaboratory/

▶長崎大学水産学部
https://www.fish.nagasaki-u.ac.jp/

▶長崎大学大学院総合生産科学研究科
https://www.ist.nagasaki-u.ac.jp/

▶東北大学大学院情報科学研究科 橋本浩一教授
http://www.ic.is.tohoku.ac.jp/ja/koichi/