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オスをめぐるメス間の争い:コオイムシ類のメス間競争の実態解明

 国立大学法人長崎大学教育学部の大庭伸也准教授と林田玲さん(令和4年度教育学部卒業)、広島修道大学人間環境学部の鈴木智也助教らの研究グループは、オスが単独で卵保護を行うコオイムシ類(コオイムシとオオコオイムシ)のメスが産卵場所となる“オスの背中”をめぐって競うことを明らかにしました。コオイムシではいち早くオスと接触したメスが勝利しやすい一方で、オオコオイムシでは小さなメスが勝利しやすいことから、近縁の2種でも繁殖行動に違いがあることがわかりました。この結果は、オスが卵保護を行う昆虫におけるメス間競争の実態を明らかにしたものです。

 コオイムシ類はオスが背中に卵を背負う昆虫で、近年、オスの子育て行動に関する研究が次々と発表されています。一方、メスの立場からすると、“オスの背中”に自分の卵を産み付けないと、子孫を残せません。コオイムシ類では、1匹のオスの背中に複数のメスが産卵することで、一つの卵塊を形成することがわかっています。そこで、本研究では、“オスの背中”という産卵資源を巡ってメス間で争いが起こるという視点の元、オスとメスの繁殖行動を調査しました。1匹のオスに対して、2匹のメスを同居させるとオスの背中に産卵しようと、2匹のメスがオスに集まるのが観察されました。コオイムシでは先にオスと接した方のメスがいち早く産卵できる一方で、オオコオイムシでは体サイズの小さなメスが大きなメスに比べて産卵しやすいことがわかりました。

 コオイムシではオスの背中がいっぱいになるまで卵を受け入れますが、オオコオイムシでは背中に余裕があっても卵の受け入れをやめてしまうことがわかっており、後者の方が前者に比べてメス間での競争が激化しやすいと考えられます。オオコオイムシでは、特に、産卵数が少ない小さなメスでは、いち早く産卵しようと、大きなメスとオスの間に体を割り込みしてでも産卵していると考えられます。

 本研究の成果は英国昆虫学会の学術誌『Ecological Entomology』に2025年5月19日に公開されました。


図1.本研究の概要

【論文情報】
Ohba S1, Hayashida R1, Suzuki T2 (2025) Female-female competition in two giant water bug species. Ecological Entomology, Early View

著者所属と名前
1:長崎大学教育学部 大庭伸也、林田玲(22年度卒)
2:広島修道大学人間環境学部 鈴木智也

<参考>
“イクメン昆虫”の意外な素顔? コオイムシの仔育て事情に新発見!
https://www.nagasaki-u.ac.jp/ja/science/science385.html
虫の世界もイクメンがモテる!コオイムシ類のパートナー選びが明らかに
https://www.nagasaki-u.ac.jp/ja/science/science106.html