2025年05月23日
長崎大学総合生産科学域(水産学系)の松下吉樹教授の研究グループは、底びき網で獲られた小型生物に対する海底プラスチックごみの影響を研究しています。その研究の一環として、長崎市たちばな漁業協同組合の漁業者の皆さんと連携し、底びき網に入網する海底のごみの数や重さ、種類などを調べたところ、橘湾の海底のごみは、同様の調査で報告された日本周辺の海のどこよりも少ないことがわかりました。
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【研究概要】
1.長崎大学総合生産科学域(水産学系)の松下吉樹教授の研究グループは、長崎市たちばな漁業協同組合の漁業者の皆さんと協力して、2023年4月から橘湾で底びき網に入網する海底ごみを調査してきました。
2.調査の結果、これら海底ごみの単位面積当たりの入網量は東京湾や鹿児島湾、日高湾、常磐沖、東シナ海など同様の調査で報告された日本周辺の海のどこよりも少ないことがわかりました。長崎市たちばな漁業協同組合の底びき網漁業者は通常の操業で入網したごみを持ち帰って処分しており、こうした活動がごみの少ない海を維持している可能性があります。また、底びき網に入網する海底ごみはプラスチック類が95%以上を占めていました。
3.底びき網にごみが入網するとそのごみが網目を塞ぎ、小さな生物が網目から逃避できなくなる割合が高くなることが明らかになりました。ビニール袋5枚が入網したとき、小さなアカエビの約40%は網目から逃避できず、網の中に残りました。ごみの入網は小型生物の漁獲を促し、資源の持続可能性に影響を及ぼす可能性が示唆されました。
4.この研究は、環境省・(独)環境再生保全機構の環境研究総合推進費(JPMEERF23S21020)により実施されました。
【論文情報】
雑誌名:Marine Pollution Bulletin
論文名:
Trapped twice: Discovering the impact of marine benthic plastic debris on small organisms caught in trawl nets
掲載日:2025年5月15日
執筆者名:
松下 吉樹(長崎大学総合生産科学域(水産学系))
Saranya Raju(長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科)
URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0025326X25006022
【参考】
▶松下吉樹教授のリサーチマップ
https://researchmap.jp/read0086894
▶所属研究室(漁業技術研究室)のHP
https://sites.google.com/view/ggk-nagasaki-u