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南米出血熱ウイルス治療に繋がる海洋資源の発見 ~イソギンチャクから新たに発見された糖結合性タンパク質がフニンウイルスの増殖を抑制~

 長崎大学高度感染症研究センターの浦田秀造准教授、総合生産科学研究科の海野英昭准教授らは、日本近海に生息するイソギンチャクから新規に発見した糖結合性タンパク質 (レクチン)が、南米出血熱の一つであるアルゼンチン出血熱を引き起こすフニンウイルスに対して増殖抑制効果があることを発見しました。本研究成果を元とした南米出血熱等に対する新規抗ウイルス薬の開発が期待されます。
 本研究は2025年5月15日に国際学術誌「Antiviral Research」に掲載されました。

【概要】
 南米出血熱の一つであるアルゼンチン出血熱はフニンウイルス感染によって引き起こされ、世界的に認可された予防法や治療法はありません。今回、有明海などに生息し、地域の郷土料理として食用にも利用されているイシワケイソギンチャク (図1)から発見されたAJLec (レクチン、図2)が、フニンウイルスの細胞への感染を抑制することをフニンウイルスの弱毒株を用いて世界で初めて明らかとしました (図3)。今後、AJLecを利用したフニンウイルス感染機構の解明、診断薬、および創薬への応用が期待されます。

図1:AJLecを有するイシワケイソギンチャク 図2:AJLecの二量体構造
図3:AJLec処理によりフニンウイルス感染細胞数 (緑色)が顕著に減少する。


【本研究のトピックス】
・日本近海で発見されたイソギンチャク由来の新規糖結合タンパク質が、アルゼンチン出血熱の原因ウイルスの弱毒株に対して抗ウイルス効果を示した。

【論文タイトルと著者】
タイトル:
Mode of antiviral action of the galactose-specific lectin, AJLec, on the Junin virus propagation.
著者:
浦田 秀造 (長崎大学高度感染症研究センター/熱帯医学研究所 准教授)
李 明恩 (長崎大学高度感染症研究センター・長崎大学薬学部 学部学生 (卒業))
鶴田 智子 (長崎大学高度感染症研究センター 専門技術職員)
五十嵐 玲雄 (長崎大学高度感染症研究センター・長崎大学薬学部 学部学生 (現・博士前期学生))
武田 弘資 (長崎大学医歯薬学総合研究科 教授)
海野 英昭 (長崎大学総合生産科学研究科 准教授) 
掲載誌:
Antiviral Research
URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0166354225001159?via%3Dihub

【参考情報】
・長崎大学高度感染症研究センター ウイルス制御研究分野
https://www.ccpid.nagasaki-u.ac.jp/annex/urata/index.html