2025年06月19日
長崎大学大学院総合生産科学研究科の馬越啓介教授と東京大学大学院総合文化研究科の堀内新之介講師(旧職:長崎大学大学院工学研究科 助教)の研究グループは、非対称な白金錯体ユニットを用い、銀イオンを段階的に反応させることにより、分子レベルから階層的に自己集合する過程を段階的に制御・観測することに成功しました。
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【本研究のポイント】
・非対称な白金錯体ユニットのわずか1原子を入れ替えるだけで、集合構造が大きく変化
・金属クラスターを銀錯塩によって集合化させると、銀イオンの結合能を有する細孔性結晶が形成
・階層的自己集合体の新しい合成アプローチと新奇機能を有する自己集合材料につながる可能性
【概要】
自然界ではタンパク質やDNAなどが階層的に自己集合することで、細胞や組織という高度に秩序化された構造を形成し、多様な生体機能を発現しています。この「階層的自己集合」は、生体高次機能の鍵を握る重要な仕組みとされています。
この研究では超分子化学の手法を駆使し、段階的自己集合の過程で分子同士がどのように集まり、どのような構造を形成していくのか、その詳細なメカニズムを明らかにしたほか、こうした階層的構造がもたらす新しい物理的・化学的機能についても解明しました。これにより、将来的な機能性材料の設計や新たなの構造体の創製に向けた基盤的知見が得られました。本成果は、自己集合に基づく新たな物性や機能の創発を目指す材料化学やナノテクノロジー分野における、重要な成果となるものです。
この成果は、ドイツのWiley-VCH社が出版する「Chemistry –A European Journal」誌(IF : 3.9)に2025年4月3日にWeb掲載されました。加えて同誌で高い評価を受けHot Paperに選出されました。
【論文情報】
掲載誌 :
Chemistry – A European Journal
論文タイトル :
Hierarchical Assemblies of Unsymmetric Pt Complexes with Ag Ions: Two Types of Assembly Modes Depending on the Remote Ancillary Groups in the Bridging Ligands
著者名 :
Yiming Yang、 Shinnosuke Horiuchi*、Kenichiro Omoto、 Eri Sakuda、 Yasuhiro Arikawa、 Keisuke Umakoshi*
DOI : https://doi.org/10.1002/chem.202500948