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福島第一原発事故後の除去土壌の復興再生利用に関する情報への関心についての論文が掲載されました

長崎大学原爆後障害医療研究所は「東京電力福島第一原子力発電所(福島第一原発)事故後の除去土壌の復興再生利用に関する情報への関心(What the public wants to know about the recycling of contaminated soil)」についての研究を行い、その成果が英文専門誌であるPLOS Oneに掲載されました。

2011年の福島第一原発事故後、政府は環境中の放射性セシウムを取り除くために表面の土壌を除去する等の除染を実施しましたが、その結果生じた約1,400万立方メートルの土壌(除去土壌)は現在福島県大熊町と双葉町に設置された中間貯蔵施設に保管されています。除去土壌のうち、比較的放射性セシウム濃度が低い土壌(8,000ベクレル/kg以下)は、公共事業等で復興再生利用されることになっていますが、このことについての国民の認知や理解は十分ではありません。一方で福島第一原発事故から約15年が経過し、事故に対する関心が薄れていることからも、除去土壌の復興再生利用に向けた国民的な理解醸成が必要です。そこで長崎大学は、全国47都道府県の5,257人を対象に、除去土壌の再生利用に関する情報への関心について調査しました。

調査では、66.1%が除去土再生利用に関する情報をもっと知りたいと回答した一方で、除去土壌が保管されている地域を訪れたいと回答したのは28.8%でした。さらに75.9%がこれまで放射線に関する情報に接したことがなかった一方で、知りたい情報は、被ばく健康影響や水・食品への放射能影響など、放射線の被ばく影響に関する情報であることがわかりました。

さらに統計解析の結果、「除去土壌の再生使用に関する情報への関心」は、「福島の復興への関心」や、「環境や災害への関心」、「放射線被ばくによる遺伝子影響への懸念」に独立して関連していることが明らかになり、復興再生利用についての理解の醸成にむけてどのような情報発信が必要かについて、重要な知見を得ることができました。

なお、この研究は福島国際研究教育機構(F-REI)の委託研究として行われました。

Independent factors related to wanting more information about the recycling of removed soil.
除去土壌の復興再生利用についての情報意図に独立して関連する要因


【論文タイトルと著者】
タイトル:
What the public wants to know about the recycling of contaminated soil
著者:
ステファン タケシ テラダ
(長崎大学・福島県立医科大学共同大学院 災害被ばく医療科学共同専攻・大学院生)
松永 妃都美(長崎大学原爆後障害医療研究所・准教授)
アイジャン・ザビロワ(長崎大学医歯薬学総合研究科・大学院生)
渡辺 智子(長崎大学医歯薬学総合研究科・大学院生)
柏﨑 佑哉(長崎大学原爆後障害医療研究所・助教)
折田 真紀子(長崎大学原爆後障害医療研究所・准教授)
ティエリー・シュナイダー(フランス原子力防護評価センター・センター長)
高村 昇(長崎大学原爆後障害医療研究所・教授)

掲載誌:PLOS One
URL:https://doi.org/10.1371/journal.pone.0331478