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骨をつくるためのもとになる細胞はどこにいる?小児・成長期の骨の成長を支える細胞集団を発見

長崎大学医歯薬学総合研究科の近藤圭太大学院生、松下祐樹教授、米国テキサス大学Noriaki Ono博士の研究グループは、国際共同研究によって、生後早期の骨の成長を担う細胞集団を発見しました。

本研究成果は、英国の国際学術誌である「Communications Biology」に2026年2月27日にオンライン掲載されました。

【ポイント】
・骨は子供の頃から成長し続け、大人になってからも常に作り替えられています。そのため骨を作る細胞の存在が不可欠ですが、どのような細胞が成長期の骨の成長に貢献しているかは詳しく分かっていませんでした。
・骨の中で特定の細胞の運命を可視化して追跡することに成功し、成長期のダイナミックな骨の成長を支える、骨のもとになる細胞集団を突きとめました。
・本研究の成果は、とくに小児・成長期における骨の異常を伴う難病疾患の病態解明や、治療法の開発に貢献することが期待されます。

【概要】
本研究では、「細胞系譜追跡※1」という手法を用いて、骨に存在する特定の細胞集団を赤色蛍光分子で可視化し、小児・成長期を通してその運命を追跡することに成功しました。その結果、小児・成長期の四肢の骨において、骨内膜領域に存在する細胞集団が骨細胞や骨の中の間質細胞を供給することで骨の成長を支えていることが明らかになりました。さらに、この細胞において骨のシグナルとして有名なヘッジホッグシグナル※2を活性化させることで、細胞の運命決定に影響が及び、骨量の著しい減少が見られました。

骨の成長を支える細胞集団とそのメカニズムを解明することで、将来的には、とくに小児・成長期における骨の異常を伴う難病疾患の病態解明や、治療法の開発に貢献することが期待されます。

【研究の背景】
我が国、そして世界には原因の分かっていない小児の難病が数多く存在し、骨の発生異常を伴う疾患も多く存在します。骨の発生過程を正確に理解することはこれらの疾患の解明につながる可能性があり、非常に重要です。これまでの研究で、骨の中には骨のもとになる細胞が複数存在していることが分かっていました。しかし、どこにいる細胞がどのように骨を作るのか、どのように細胞の運命が決定するのかは詳しく分かっていませんでした。

【研究の成果】
本研究では、まずDlx5※3という遺伝子に注目をしました。これまでの研究で、Dlx5は骨になる方向へ細胞を導くために、他の転写因子(Runx2やOsx)の働きを助けることが分かっていましたが、実際の骨の中でDlx5を発現する細胞がどこに存在して、どういう運命を辿るのかは明らかになっていませんでした。そこで、Dlx5を発現する細胞を赤色蛍光分子で標識し、「細胞系譜追跡」という手法を用いることで、この細胞の運命を追跡することに成功しました。

成長が著しい小児・成長期の骨において、Dlx5陽性細胞は骨髄の中の骨内膜という領域に存在しており、骨細胞と間質細胞を供給することで骨の形成に大きく貢献していることがわかりました。さらに、骨のシグナルとして有名なヘッジホッグシグナルをDlx5陽性細胞で活性化させたところ、骨細胞や間質細胞になるものが減少し、脂肪細胞が顕著に増加していました。つまり、シグナルの活性化によってDlx5陽性細胞の運命が骨細胞や間質細胞から脂肪細胞へと誘導されることがわかりました。また、その結果として骨量の著しい減少が見られました。

このことから、Dlx5陽性細胞は骨細胞や間質細胞を供給することで機能的にも骨の形成に大きく貢献することが明らかになりました。また、ヘッジホッグシグナルがこの細胞の運命決定に影響を及ぼしていることがわかりました(下記概要図)。

【今後の展開、将来展望】
本研究の成果によって、骨の成長を支える細胞集団とそのメカニズムを解明することで、とくに小児・成長期における骨の異常を伴う難病疾患の病態解明や、治療法の開発に貢献することが期待されます。

概要図


【用語解説】
※1 細胞系譜追跡:
あるターゲットとする細胞集団の細胞運命を組織学的に追跡する手法。
※2ヘッジホッグシグナル(Hedgehog signaling pathway):細胞の増え方や分化の方向を決めるシグナル。PTCH1とSMOというタンパクを介して働き、骨の形成などに関わる。
※3 Dlx5(Distal-less homeobox 5):骨の形成や発生過程で働く転写因子。Runx2やOsxなどの骨分化に関わる因子と協調し、細胞を骨系譜へ導く役割を担う。

【論文情報】
掲載誌:Communications Biology
タイトル:
Bone marrow endosteum houses Hedgehog-susceptible Dlx5-expressing osteoblast precursor cells
著者:
Keita Kondo1, Yuki Matsushita1,2, Shion Orikasa2, Yuta Nakai2, Aiko Kuroda1, Shinsuke Ohba3, Wanida Ono2 & Noriaki Ono2
1. Department of Skeletal Development and Regenerative Biology, Nagasaki University Graduate School of Biomedical Sciences
2. University of Texas Health Science Center at Houston School of Dentistry
3. Department of Tissue and Developmental Biology, Graduate School of Dentistry, Osaka University
掲載日:2026年2月27日
DOI:10.1038/s42003-026-09649-0