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新規情報解析技術により 病原性原虫のリピートタンパク質の特徴を解明

長崎大学情報データ科学部の松本拡高准教授らの研究グループは、タンパク質中の「繰り返し配列(リピート)」の複雑さなどの特徴を定量化する新しい情報解析アルゴリズム『Drepper』を開発し、マラリア原虫やリーシュマニア、トリパノソーマなどの原虫がもつリピートタンパク質の特性を比較・分類しました。
その結果、原虫の系統ごとに異なるリピート構造の特徴や、それらの分類とタンパク質の機能的・立体構造との関連性を明らかにしました。本研究成果は、英国Oxford University Pressが発行する『NAR Genomics and Bioinformatics』に6月27日に掲載されました。


【ポイント】
・タンパク質中の繰り返し配列の複雑さなどを定量化する新アルゴリズム『Drepper』を開発
・マラリア原虫とリーシュマニア・トリパノソーマなどにおいて、リピート配列の特徴が大きく異なることを定量的に比較・分類
・将来的には、原虫の感染機構の理解や創薬標的探索への応用が期待される

【研究の背景】
マラリアやリーシュマニア症などを引き起こす原虫は、毎年世界中で多くの感染者と死亡者を生み出しています。タンパク質中には同じアミノ酸配列が何度も繰り返される「リピート配列」を含むものが数多く存在し、原虫においてはそれらが宿主への感染や免疫回避などに重要な役割を果たすと考えられています。しかし、リピート配列には単純な繰り返しだけでなく、複数種類の繰り返しが組み合わさった複雑な構造も存在するため、従来の解析手法ではその特徴を十分に評価することが困難でした。

【研究内容】
研究グループは、自己ドットプロット(Self Dot Plot)(※1)を利用してリピート構造を解析する新しいアルゴリズム『Drepper』を開発しました。『Drepper』によりリピート構造の複雑さをはじめとする複数の特徴量を定量化するとともに、既存手法による特性も組みあわせることで、16種類の原虫および近縁種などのリピートタンパク質を分類し、その特徴を比較解析しました。
その結果、マラリア原虫では複雑なリピート構造(High-Complexity Repeat-Rich; HCRR)が多い一方、リーシュマニア・トリパノソーマでは単純で長大なリピート構造(Low-Complexity Repeat-Rich; LCRR)が多いことを明らかにしました。
さらに、リーシュマニアではLCRRに分類されるタンパク質がべん毛形成に関わるタンパク質に多く含まれ、リピート配列が種ごとにまとまって変化する「協調進化」を示すことを見いだしました。
また、AlphaFold(※2)による構造予測を用いた解析から、HCRRに分類されるタンパク質は明確な立体構造をとらない傾向がある一方、LCRRに分類されるタンパク質は特定の立体構造を形成する傾向を示しました。これらの結果は、リピート構造の特徴がタンパク質の構造や機能と密接に関係している可能性を示しています。

※1:1つの配列を自分自身と比較し、繰り返し配列や類似した領域を図として可視化する解析手
※2:AI(人工知能)を用いてタンパク質の立体構造を高精度に予測する技術

【研究成果の意義】
本研究は、これまで一括して扱われることが多かったリピートタンパク質を、リピート構造の複雑さという新たな観点から体系的に分類できることを示しました。
この成果は、
・原虫がどのように宿主へ適応してきたか
・病原性の進化
・感染や免疫回避の分子機構
を理解するための新たな手掛かりとなることが期待されます。
また、『Drepper』は原虫だけでなく、ヒトや植物、細菌など他の生物のリピートタンパク質解析にも応用可能であり、生命科学分野全般への展開が期待されます。

【掲載論文】

タイトル: Distinct repeat architecture landscapes in the proteomes of protozoan parasites
掲載誌: NAR Genomics and Bioinformatics
著者: Hirotaka Matsumoto and Jing Hong
DOI: 10.1093/nargab/lqag061
URL: https://academic.oup.com/nargab/article/8/3/lqag061/8719444