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呼気中の二酸化炭素を活用した新たなものづくり技術 -宇宙空間での人類の営みに貢献する炭素循環技術-

長崎大学大学院総合生産科学研究科(環境科学部所属)の白川誠司教授は、呼気中に含まれる二酸化炭素の資源としての利用価値に着目し、化学的手法による呼気中二酸化炭素の資源化技術を開発しました。 

本研究成果は、英国王立化学会(Royal Society of Chemistry)が出版する国際学術誌「RSC Advances」に掲載されました。今回開発した手法は、炭素資源が乏しい宇宙空間での人間生活を実現するための、炭素循環システム構築の基盤技術になると期待されます。


【研究のポイント】

・呼気中二酸化炭素の資源としての可能性に着目し、呼気を直接利用したものづくり研究はこれまでほとんど検討されていませんでした。本研究は、呼気中二酸化炭素を直接利用した有機合成研究の新たな展開を示しました。
・呼気中には、地球上の大気と比較し約100倍の濃度で二酸化炭素が含まれており、炭素資源として十分な利用価値があります。
・本研究成果は、炭素資源が乏しい宇宙空間における炭素循環システムの構築を支える基盤技術となることが期待されます。

【研究背景】
近年、地球温暖化の原因物質とされる二酸化炭素を、化学的手法により有用物質へと変換するためのものづくり研究が注目を集めています。地球上の空気に0.04%程度の濃度で含まれる二酸化炭素を回収し、資源化する技術開発が活発に行われていますが、極めて低濃度であるため、その回収効率の悪さが課題となっています。そこで本研究では、より効率的に二酸化炭素を確保する方法として、人間が排出する呼気に着目しました。呼気中には、空気中の約100倍(約4%)の二酸化炭素が含まれており、二酸化炭素資源化の新たな原料としての活用が期待されます。また、呼気中の二酸化炭素の資源化は、地球上での二酸化炭素資源化技術として有望であり、特に炭素資源の供給が限られる宇宙空間での利用が期待されます。そのため、宇宙空間での炭素循環システム構築に向けた重要な技術となることが期待されます。

【研究成果】
アミン化合物を含んだフラスコに、呼気を注入した風船を取り付け、1日反応させると、アミン化合物と呼気中の二酸化炭素が化学反応を起こした中間体物質が得られます。これを、有機ケイ素化合物(フェニルシラン)と反応させることで、機能性化合物である有機ウレア化合物類を合成することができました。有機ウレア生成物の構造には、呼気中の二酸化炭素に由来する炭素骨格が含まれています。合成した有機ウレア化合物には、薬の候補化合物としての生物活性分子や、自然界に存在する天然物分子、また、二酸化炭素の資源化反応を促進する触媒として機能する分子が含まれており、本手法によって呼気中の二酸化炭素を利用したさまざまな有用物質が合成できることを示しました。

【今後の展望】
呼気中の二酸化炭素は、炭素源としての幅広い利用が期待できる資源です。宇宙空間での炭素循環技術の確立に向けて、呼気中の二酸化炭素を利用したさらなるものづくり研究を進めていきます。また、呼気中には、二酸化炭素以外にも資源となりうる化学物質が多数含まれています。これらの回収および有効利用技術の開発を進めることで、宇宙空間での人間生活の実現に向けた物質循環システムの構築に貢献する技術の確立を目指します。

【論文情報】
掲載誌:RSC Advances
タイトル:Human breath as a carbon dioxide source for organic synthesis
著者:Seiji Shirakawa
DOI:10.1039/d6ra05851e
URL:https://doi.org/10.1039/d6ra05851e
オンライン公開日:2026年9月18日

【研究助成】
本研究の一部は、以下の研究助成の支援を受け実施しました。
1.Joint Usage/Research Program on Zero-Emission Energy Research, Institute of Advanced Energy, Kyoto University (ZE2026B-32)
2.Joint Usage/Research Center for Catalysis (26DS0922)