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医歯薬学総合研究科内臓機能生理学分野の蒔田直昌教授の共著論文が英国科学雑誌Nature Genetics電子版に掲載

  「SCN5A-SCN10AとHEY2のありふれた遺伝子多型は心臓突然死をおこす稀な不整脈Brugada症候群と関連している(“Common variants at SCN5A-SCN10A and HEY2 are associated with Brugada syndrome, a rare disease with high risk of sudden cardiac death)」と題されたこの研究は英国科学雑誌Nature Genetics電子版(ロンドン時間7月21日18時、日本時間7月22日2時)に掲載されました。
  長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 内臓機能生理学分野の蒔田直昌教授は、国内4施設・欧米14施設との国際共同研究によって、突然死をきたす遺伝性不整脈「ブルガダ症候群」の原因遺伝子を解明しました。
  日本では、元気だった人が朝突然亡くなっていて家族に気づかれるような突然死が多く、このようなケースはしばしば「ぽっくり病」と呼ばれます。実はこのぽっくり病の多くがブルガダ症候群に該当すると言われています。ブルガダ症候群の患者さんの中には、突然死をした家族があるなど、遺伝性が疑われる症例も少なくないため、遺伝子検査が行われています。約2割の患者さんにSCN5Aという遺伝子に異常(遺伝子変異)がみつかっていますが、20余年の研究にもかかわらず、残りの8割の原因はほとんど不明でした。
  本研究グループは、遺伝子全体(ゲノム)に存在する一塩基の違い(一塩基多型)を患者群と健常群で比較するGWASという手法を用いて、新たに2つの疾患関連遺伝子SCN10A・HEY2を明らかにしました。さらに欧米1,449人、日本1,224人(うち長崎大学関連:患者79人、健常者100人)の独立したサンプルを用いた再現研究から、3つの遺伝子多型を同時に持つ人は持たない人に比べて20.4倍、ブルガダ症候群になりやすいことがわかりました。
  一般に、稀な病気は1個の原因遺伝子の異常によって病気が決定づけられることが多く、逆に生活習慣病のようなありふれた病気は、複数の要因が積み重なることによってリスクが高まると考えられています。本研究は、ブルガダ症候群のような稀な疾患の発症にも、遺伝子のありふれた違い(多型)が強く関与していることを示しています。
  今後はブルガダ症候群以外の心臓疾患に関しても、遺伝学的・分子細胞生物学的な国際共同研究を推進する予定です。