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てんかんや多動症の発症に関わる新たなシナプス制御メカニズムの発見

  医歯薬学総合研究科の有賀純教授は、理研脳科学総合研究センターの富岡直子前研究員、群馬大学・医学系研究科の安田浩樹准教授らと共に、海馬の抑制性ニューロンに発現する後シナプス膜タンパク質の1つ「ELFN1[1]」が、代謝共役型グルタミン酸受容体の一つ「mGluR7 [2]」に結合して前シナプスへの集積を引き起こし、抑制性ニューロンのシナプス可塑性を制御していることを発見しました。作製したELFN1欠損マウスの行動を観察したところ、ヒトに触られるとてんかんのようなけいれん発作を示し、多動や警戒心の低下などの行動異常があること、また、脳波をとってみると振幅の大きな異常な波が頻発することがわかり、ELFN1欠損マウスでは脳の過活動が生じているのではないかと予想されました。研究グループはさらに、てんかんおよび多動症の患者さんのDNAを用いてELFN1の遺伝子変異を調べたところ、ELFN1の機能を損なう変異が一部の領域に集中して存在していることを発見しました。これらのことから、ELFN1は抑制性ニューロンへの適切なシナプス入力に不可欠のものであり、この遺伝子の変異がてんかん・多動症のような脳の興奮抑制バランスの乱れを背景とした病態に関係する可能性が示されました。
  今回、ELFN1がグルタミン酸受容体の分布を制御することが、脳の機能に重要であることが示されたわけですが、研究グループでは今後、ELFN1がmGluR7以外にどのような分子と関係を持つのか、あるいは、ELFN1と類似する膜タンパク質群が多くの薬の標的となっている代謝共役型受容体群を制御するのかどうかについて検討する予定です。本研究成果は、英国の電子ジャーナル『Nature Communications』に7月22日午前10時(英国標準時:日本時間 7月22日午後6時)に掲載されました。


研究の詳細は「てんかんや多動症の発症に関わる新たなシナプス制御メカニズムの発見」(PDF:888KB)をご覧ください。