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細菌の新規のタンパク分泌機構を発見: 歯周病細菌やアユ冷水病菌などの病原性や滑走運動と関連

大学院医歯薬学総合研究科口腔病原微生物学分野の中山浩次教授と佐藤啓子助教らの研究グループはグラム陰性細菌の新しいタンパク分泌機構を発見した。グラ ム陰性細菌にはこれまで8種類のタンパク分泌機構が見つかっていたが、今回発見された機構はそれらとは構成タンパクがまったく異なる機構であり、ある種の 細菌の滑走運動と密接な関係のあるタンパク分泌機構であることが明らかになった。成果は米国科学アカデミー紀要「PNAS」オンライン版で12月4日に公 開された。

歯周病細菌Porphyromonas gingivalisと、土壌にすむFlavobacterium johnsoniae 、住処も形も異なるが,同じフィラム・バクテロイデーテス(phylum Bacteroidetes)に属する細菌である。この2つの細菌がもつ共通タンパク群が、P. gingivalisでは病原因子の分泌に、F. johnsoniaeでは滑走運動に関わることが明らかとなった。

P. gingivalisが分泌するタンパク分解酵素であるジンジパインはそれ自体も病原因子であるばかりでなく、本菌が産生するその他の病原因子の活性化にも関与することから、本菌の病原性を左右する重要な因子と考えられている。

P. gingivalisのゲノム解析より、本菌はこれまでに報告のある分泌機構のどれももたないと思われることから、ジンジパインは未知のタンパク分泌機構 により分泌されることが予想された。同研究分野ではジンジパインの前駆体が菌体内に蓄積される変異株(porT)を分離していた(Sato et al., J. Biol. Chem. 280: 8668-8677, 2005)。

porT遺伝子はフィラム・バクテロイデ−テスの中のF. johnsoniaeを含む一部の菌に保存されている。porT遺伝子を保存する菌のみが共通してもつ遺伝子を検索し、P. ginigvalisにおいてそれらの変異株を作製・解析したところ、新たに11個の遺伝子の産物がジンジパイン分泌関連分子であることがわかった。ま た、これらの遺伝子の多くはF. johnsoniaeにおいて滑走運動に関わる遺伝子群として報告されたものであった。この結果は新規のタンパク分泌機構と滑走運動との関連性を示すもの である。今回発見されたタンパク分泌機構の遺伝子群は他の歯周病細菌のTannerella forsythiaやPrevotella intermedia、ニジマスやアユなどの淡水魚の病原細菌であるFlavobacterium psychrophilumなどにも存在することがわかっており、歯周病細菌などを選択的に標的とする薬剤の開発につながると期待される。


Sato K, Naito M, Yukitake H, Hirakawa H, Shoji M, McBride MJ, Rhodes RG, and Nakayama K: A protein secretion system linked to bacteroidete gliding motility and pathogenesis. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, PNAS published online before print December 4, 2009, doi:10.1073/pnas.0912010107