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腸内の優勢細菌群の線毛形成機構の解明

2016年04月12日

腸内の優勢細菌群の線毛形成機構の解明

近年、ヒトの腸内マイクロバイオームと様々な疾患(潰瘍性大腸炎などの消化管疾患、肥満関連代謝異常などの代謝疾患、アレルギー疾患、自己免疫疾患、精神神経疾患など)との関連についての研究が発表されていることから、腸内の最優勢菌群であるバクテロイデーテス門バクテロイディア綱に属する細菌が注目されています。
医歯薬学総合研究科口腔病原微生物学分野の庄子幹郎助教、中山浩次教授のグループは米国SLAC国立加速器研究所のQingping Xu博士、Scripps研究所のIan Wilson教授のグループとの国際共同研究で、バクテロイディア綱細菌が有する、宿主への定着等に重要な働きがある線毛の形成機構を解明しました。
線毛はタンパク質の重合体であり、多くの細菌の菌体表面に存在し、しばしば細菌の付着や病原性に関与します。ヒトに寄生・共生するバクテロイディア綱細菌のもつ線毛については歯周病細菌ポルフィロモナス・ジンジバリスの2種類の線毛の研究が嚆矢となるものですが、その構造や形成機構については詳細には明らかにされていませんでした。今回、ポルフィロモナス・ジンジバリスを含め、バクテロイディア綱細菌が保有する20個の線毛構成タンパク質についてX線結晶構造解析および生化学的解析を行いました。その結果、この種類の線毛構成タンパク質は2つのトランスサイレチン様構造から成るギリシャキーβサンドイッチ構造をしており、ストランド交換反応による重合で線毛を形成することがわかりました。線毛の中央部分の線毛タンパク質の重合はN末端のβストランドがプロテアーゼによって除去されることで形成される疎水性の溝に、次の線毛タンパク質のC末端ストランドが挿入されるという方法で行われます。また、線毛先端部および線毛基部の線毛タンパク質はそれぞれ特有な構造をしており、先端部および基部に位置することを可能にしています。このようにバクテロイディア綱細菌の線毛を構成する線毛タンパク質の構造および線毛形成機構は既知の線毛とは異なることから新型の線毛(5型線毛と命名)であることがわかりました。
この発見は歯周病菌ポルフィロモナス・ジンジバリスや虫垂炎、直腸膿瘍などの原因菌バクテロイデス・フラジリスなどの病原細菌の付着メカニズムや、さらにはヒトの最優勢常在菌群であるバクテロイディア綱細菌がどのように生体に安定に維持されるかを解明する上で重要な手掛かりとなるものと思われます。
  なお、本研究は4月7日付でCell電子版に掲載されました。

論文名:A Distinct Type of Pilus from the Human Microbiome
著者名:Qingping Xu#, Mikio Shoji#, Satoshi Shibata, Mariko Naito, Keiko Sato, Marc-Andre´ Elsliger, Joanna C. Grant, Herbert L. Axelrod, Hsiu-Ju Chiu, Carol L. Farr, Lukasz Jaroszewski, Mark W. Knuth, Ashley M. Deacon, Adam Godzik, Scott A. Lesley, Michael A. Curtis, Koji Nakayama*, Ian A. Wilson*
# : Co-first author, * : Co-corresponding author

 

より詳しい内容については「ライフサイエンス 新着論文レビュー」の以下のアドレスに掲載しています。
http://first.lifesciencedb.jp/archives/12343

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