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GPUクラスタによる高性能計算技術の実証:長崎大学・理研らのGPUクラスタによる計算がゴードンベル賞のファイナリストに選ばれる

○事業や研究の概要濱田テニュアトラック助教
国立大学法人長崎大学は,独立行政法人理化学研究所,ブリストル大学,電気通信大学,慶應義塾大学と共同でGPU(ゲームの描画処理用のプロセッサとして発展し,コストパフォーマンスに優れたグラフィックス向けプロセッサ)の科学計算に向けた応用研究を進めています。今回,本グループは256台のGPU を並列に動作させることで,天文学・流体力学への応用計算において,42テラフロップス(毎秒42兆回計算)の実効性能を達成しました。長崎大学の濱田剛テニュアトラック助教と,ブリストル大学の横田研究員,理化学研究所の似鳥敬吾基礎科学特別研究員らによる共同研究の成果です。この成果は,高性能計算の世界で最も権威のある賞の一つであるゴードンベル賞のファイナリスト(最終候補)に選ばれました。ゴードンベル賞の受賞者は,2009年11月14〜20 日に米国オレゴン州ポートランドで開かれる国際学会「Supercomputing 2009」において発表されます。
本研究においては,長崎大学に構築した大規模なGPUクラスタを利用し,その上に天文学向けにはツリー法,流体計算では高速多重極法と呼ばれる手法を実装しました。これらは実用的に用いられている高速な計算手法ですが,その反面複雑で並列化がしにくく,GPUによる並列化が難しかった手法です。しかし,新しく開発した「マルチウォーク法」により効率の良い並列化を可能とし,高い効率を得ることに成功しました。

○期待される成果
近年,GPUの科学技術計算などへの応用は非常に盛んに行われるようになりましたが,GPUを大規模に並列化しても,実用的な計算手法に対して高い実効性能が得られた例はほとんどありませんでした。今回の成果は,GPU並列化による計算において,これまでで最速の計算性能であるとともに,GPUを100 台規模で組み合わせることで,スーパーコンピュータを構築することができることを実証しました。今後のGPUの並列利用に向け弾みがつくとともに,生命科学などの広い分野のシミュレーションの加速が期待されます。

○どのように役に立つのか,将来への展望
GPUの特徴は,安価でしかも性能あたりの消費電力が低いことです。これにより低消費電力で安価なスーパーコンピュータの構築が可能になります。また,将来のスーパーコンピュータにおいては,GPUのような加速装置(アクセラレータ)の利用,メニーコアプロセッサ(大量のコアを並列にしたプロセッサ)の利用が,性能面ならびに消費電力面から必須です。本研究などによりアクセラレータ・メニーコア技術の利用技術を確立し,ソフトウェア資産を蓄積するとともに,来るべきエクサフロップス(毎秒100京回計算)スーパーコンピュータに向けた次世代のプロセッサ開発に貢献していきます。