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アフリカにおけるアルテミシニン耐性マラリアの出現

   毎年50万人ものアフリカの幼い子ども達がマラリアによって死亡しています。マラリアの原因となるマラリア原虫に対し、最も広く普及し効果的な薬剤としてアルテミシニンが使われていますが、これまで東南アジアでアルテミシニン耐性原虫が報告されており、薬剤耐性の拡散阻止に向けて努力が続けられています。

   この度、江蘇省寄生虫病防治研究所(中国)のジュンカオ教授、キングアブドラ工科大学(サウジアラビア)アーナブペイン博士、長崎大学熱帯医学研究所病理学分野マラリア研究室のカレトンリチャード博士らの共同研究グループは、アフリカにおいてもアルテミシニン耐性マラリアが出現したことを報告しました。赤道ギニアに住む中国人移住労働者のアルテミシニンによるマラリア治療が失敗し、そのマラリア原虫は他のアフリカのマラリア原虫よりもアルテミシニンに対する感受性が低く、アルテミシニン耐性に関与することが知られている遺伝子に独特の突然変異がある事が示されました。このアルテミシニン耐性マラリア原虫は地域特異的であり、他の大陸から持ちこまれていないアフリカ由来のものとみられています。

   今回の発見の与える影響は非常に大きく、マラリアコントロールと撲滅のためにアルテミシニンに依存しているアフリカ全体、またアルテミシニンの有効性の低下はアフリカ以外にとっても公衆衛生上の問題となります。今回の研究は、アルテミシニン薬剤耐性マラリアの出現と拡散のモニタリングに役立ち、アフリカのマラリア危機を回避させる可能性を示唆します。

この研究は英医学誌「ニューイングランドジャーナルオブメディスン(New England Journal of Medicine)」のオンライン版で2017年2月22日(水)5:00PM EST(USA)・日本時間2月23日(木)7AMに掲載されました。

論文タイトル
Emergence of Indigenous Artemisinin Resistant Plasmodium falciparum in Africa

和訳タイトル
アフリカにおけるアルテミシニン耐性マラリアの出現