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水産・環境科学総合研究科Elham Nourani博士後期課程院生(文部科学省国費留学生)、山口典之准教授、樋口広芳東京大学名誉教授による、気候変動が猛禽類の渡りにおよぼす影響に関する研究論文がProceedings of the Royal Society B誌に掲載されました。

2017年05月09日

渡り鳥は繁殖地と越冬地の間を、春秋の年二回、移動します。その移動距離はときに数千キロにおよびます。日本で繁殖するハチクマという渡りをする猛禽類(タカの一種)は、秋の渡りで日本列島を西に進み、多くの個体が九州北部から五島列島福江島に集結、そこから東シナ海を横断し、中国に到達します。

海上には安定かつ強い上昇流が一般にとぼしいため、翼を広げ、風の力を利用して移動する猛禽類には時に危険なところです。それにも関わらず、約600kmもの長距離、海域を渡っていくハチクマの行動は世界的にもめずらしいと考えられています。これを可能にしているのは、秋の東シナ海に安定して吹く北東風(つまり西に渡るハチクマにとっての追い風)であることが、Nouraniさん、山口准教授、樋口名誉教授他の先行研究で明らかになっていました。

今回の研究でNouraniさんらは、東シナ海域とその周辺で、ハチクマの秋の渡りにとって好適なエリアが、将来の気候変動のもとでどのように変化するのかを調査しました。将来気象データについては、IPCCのRCPシナリオ4.5と8.5のもとで予測されたものを使用しました。RCPとは、将来の温室効果ガス安定化レベルとそこに至るまでの経路のうち代表的なものを選んだシナリオです。RCP 4.5は中程度、RCP 8.5 は最も強度に温暖化が進んでいくシナリオです。

解析の結果、いずれのシナリオを仮定した場合でも、今世紀半ばには、ハチクマの渡りに好適なエリアが、秋の東シナ海域からかなり失われることが推定されました。多くの野生生物で気候変動が生息場所などにおよぼす影響が予測されていますが、今回、渡りという野生動物の長距離移動に気候変動がおよぼす影響を調査研究することの重要性が示されました。

本研究の成果は、英国王立協会誌『Proceedings of the Royal Society B』に掲載されます。同雑誌のウェブサイトで2017年5月3日から早期公開されました。

 

論文タイトル:Climate change alters the optimal wind-dependent flight routes of an avian migrant

論文要旨および全文(有料):

http://rspb.royalsocietypublishing.org/content/284/1854/20170149

図1図1

図1. 渡りをする猛禽類ハチクマ(撮影:中村照男,尾上和久)。

 

図2  

図2. 九州北部から東シナ海にかけての秋の渡り経路(細かな点は遠隔追跡したハチクマが実際に存在した地点。点線は渡り経路のイメージ)と、現時点で本種の渡りに適していると推定される空域(緑から赤色で示す。赤になるほど好適度が高い)。当該論文の図1を改変。

図3

図3. IPCC RCP8.5シナリオのもとで予測される、今世紀半ば(左)および今世紀末(右)のハチクマの渡りに適していると推定される空域(緑から赤色で示す。赤になるほど好適度が高い)。濃いグレーは推定不能だった空域。当該論文の図2から抜粋。

 

参考:

RCP(代表的濃度経路)シナリオについて:文部科学省

http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/26/03/attach/1346369.htm

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