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新たな観測システムによりブリ属稚魚が流れ藻に集まる理由を解明

2017年06月26日

海底からちぎれて海を漂うようになった海藻は「流れ藻」と呼ばれています。流れ藻には、ブリ属稚魚(ブリ・カンパチなど)など様々な魚が集まりますが、なぜ集まるのかは定かではありませんでした。水産・環境科学総合研究科の河端雄毅准教授(実験当時:同研究科附属環東シナ海環境資源研究センター助教)、同研究科博士課程五年一貫制の長谷川隆真氏(現:博士特任研究員)、博士前期課程の高月直樹氏(現:いであ株式会社)らは、海洋未来イノベーション機構と水産学部附属練習船の研究者らと共同で、流れ藻にインターバルカメラ(映像・静止画)とGPS衛星送信機を備えた観測システム(図1)を開発し、ブリ属稚魚の行動を連続的に記録しました。

 

ブリ属稚魚は、昼間には流れ藻周囲を遊泳しましたが(図2)、視覚が効かない夜間には流れ藻直下で体を密着し合っていました(図3)。このことから、目印の無い海洋で群れを維持するために流れ藻を利用していると考えられました。また、群れが小さい(構成員数が少ない)時には昼間にも流れ藻付近に留まり(図4)、天敵となる捕食魚が現れると藻の中に隠れました。一方、群れが大きい時は流れ藻の周囲を泳ぎまわり(図4)、天敵が現れても藻に隠れることはなく、群れで遊泳して捕食者を回避しました。このことから、群れが小さい間は隠れ家として流れ藻を利用しており、仲間が集まってきて群れが大きくなると周囲を泳ぎ回るようになると考えられました。

 

ブリ属養殖は海面養殖業のなかで国内最大の生産量を誇りますが、ほとんどの場合、人工孵化稚魚ではなく、流れ藻に集まった天然稚魚を捕獲して生簀で成長させています。近年ブリ属稚魚の資源量は安定していますが、沿岸開発や温暖化等によって流れ藻となる海藻の量が減少することが懸念されています。今回の研究成果は、隠れ家・群れ形成の場となる浮き漁礁を設置するなどの漁業振興策の決定に寄与し、ブリ属稚魚の安定供給・持続的利用に繋がると期待されます。

 

本研究の成果は2017年6月21日に海洋生態学の専門誌『Marine Ecology Progress Series』に公開されました。

 

論文タイトル:Continuous behavioral observation reveals the function of drifting seaweeds for Seriola spp. juveniles

論文のURL: https://doi.org/10.3354/meps12154

観測システム
図1. 観測システム. a. インターバルカメラ2基(映像・静止画). b. 電波発信機. c. GPS衛星送信ブイ. d. 照度データロガー. e. 水温データロガー. f. 海藻(アカモク).
昼間に流れ藻の周りを泳ぐブリ属稚魚
図2. 昼間に流れ藻の周りを泳ぐブリ属稚魚
夜間に流れ藻直下で密着し合うブリ属稚魚
図3. 夜間に流れ藻直下で密着し合うブリ属稚魚
解説図
図4. 群れの大きさと流れ藻への依存度合いの関係.
単独時や群れが小さい時は流れ藻付近に滞在しており、群れが大きい時は周囲を遊泳していたことが分かる
括弧内の数字は撮影された群れの数を表す
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