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PQQのヒト血中濃度分析法を開発 (PQQの体内動態を解明する強力なツール)

2017年09月01日

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科薬品分析化学研究室の黒田直敬教授と三菱ガス化学株式会社の池本一人主席研究員らの共同研究グループは、ビタミンに深く関連する物質ピロロキノリンキノン(PQQ)の超高感度分析法を開発しました。

PQQ は1979年に発見され、ビタミンの可能性が報告されています。多くの食品にも微量含まれ、血糖値センサにも使われ、サプリメントとして商品化されています。最近では認知機能改善、寿命延長、特殊な結晶構造など医学、生物学、化学分野で注目されています。

今回、PQQ の特徴である酸化還元性を利用する化学発光装置を開発しました。この装置により1兆分の1gレベルの PQQ を検出できる超高感度分析が可能となりました。研究グループはこの装置を利用して PQQ を摂取した健康な成人の血液から PQQ を測定することに成功しています。

物質の体内動態は、薬の効率的な摂取に関わる重要な課題です。このため、体内動態の解明が求められています。この研究成果は薬品開発に役立つだけでなく、サプリメントの効果的な使用法を見出すことができるため、学術面だけでなく、産業界からも熱い視線が注がれています。

 

この研究は薬学誌「ジャーナルオブファーマシューティカルアンドバイオメディカルアナリシス(Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis)」のオンライン版で2017年8月17日(木)に掲載されました。

 

タイトル:Ultrasensitive determination of pyrroloquinoline quinone in human plasma by HPLC with chemiluminescence detection using the redox cycle of quinone

(キノンの酸化還元サイクルを利用した化学発光液体クロマトグラフィーによるヒト血漿中のピロロキノリンキノンの超高感度分析)

Volume 145,25 October 2017, Pages 814-820、DOI 10.1016/j.jpba.2017.08.008

1.背景

ピロロキノリンキノン (PQQ) は1979年に発見された物質で、補酵素として使用されています。PQQを含まない餌をマウスに与えると生育不良や皮膚がもろくなるなどの異常が観察され、ビタミンの候補として考えられてきました。

 

ピロロキノリンキノン二ナトリウム塩

図1ピロロキノリンキノン二ナトリウム塩(粉末写真と偏光顕微鏡写真)

 

三菱ガス化学株式会社は、2008年よりピロロキノリンキノン二ナトリウム塩(図1)を新規食品素材として製品化しています。

PQQ はごく微量ですが多くの食品に含まれるためにその分析方法も数多く提案されてきました。しかし、これまでの方法は複雑な装置や特殊な標準物質が必要であり、体内動態を調べるのに十分ではありませんでした。また、血液中には多くの生体成分が存在するため、PQQ を選択的に測定するためには効率的な前処理方法の開発も必要です。そのため、体内での PQQ 挙動の解明はあまり進んでいませんでした。

 

2.研究手法と成果

今回、研究チームは PQQ の酸化還元性に注目して、これを利用する化学発光反応のアイデアに到達し、実際に PQQ の高感度測定に有用であることを実証しました。その原理を図2に示します。還元剤ジチオスレイトール(DTT)によって PQQ をラジカル種へと還元します。これが酸素と反応することで生じる活性酸素がルミノールを酸化することで生じる発光を検出器で捕らえる方法です。実際の測定装置である高速液体クロマトグラフィー (HPLC) の構造は図3のようになります。カラムによって分離した PQQ の溶液に、ルミノールと DTT溶液が連続的に供給されて連続的な反応が生じます。この反応溶液が化学発光検出器を通過する際、クロマトグラム上に化学発光ピークとして記録されます。この装置により、他の共存物質の影響を受けない高選択的かつ超高感度な PQQ の測定が実現しました。この測定装置は LC-MS/MS といった分析機器と比較して簡便に使用できます。

 

 

PQQ高感度分析の原理

図2 PQQ 高感度分析の原理

 

超高感度分析装置

図3 超高感度分析装置

 

この装置は PQQ から連続的に発生する化学発光を検出することで1兆分の1g レベルの PQQ を検出することが可能です。また、血液中から高い回収率で PQQ を抽出する適切な前処理法も開発しました。実際に、PQQ 含有サプリメントを連続的に摂取した健常人の血中 PQQ 濃度がどのように変化するか明らかにすることができます。

 

3.今後の期待

今回開発した装置を未解明の薬や有用な食品成分の体内挙動の解明へと応用することは、薬の開発や健康成分の発見につながると考えられます。今後、医療費の抑制や新薬の開発にも貢献することが期待されます。

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