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魚類の雄親による子殺し行動:雄は子の存在を消すことで内分泌的に求愛可能になる(水産学部 竹垣准教授)

2018年08月17日

魚類をはじめとする多くの動物で、子育て中の親が自分の子を食べてしまうフィリアルカニバリズム現象が知られている。このフィリアルカニバリズムは、かつては異常行動とされていたが、現在では親の繁殖成功を高める適応的な繁殖戦略と理解されており、子を食べることで得られる親の栄養利益を考慮したエネルギー基盤仮説で最もうまく説明される。しかしながら、魚類の雄親による「全卵食行動」にはこの仮説で説明できないケースがある。卵保護雄は、保護卵が少ない場合、保護をしても得られる利益(残せる子の数)が小さく、保護を続けるコスト(労力や時間)に見合わないため、全ての卵を食べて繁殖をやり直すと考えられてきた。不可解なのは、保護雄は卵保護中でも(潜在的には)雌に求愛して新たな卵を追加獲得できるので、卵が少ないという理由では全卵食する必要が無いという点である。
長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科の竹垣毅准教授ら研究グループは、海産小型魚類のロウソクギンポ雄による全卵食行動が、次の繁殖の求愛行動を再開するための、内分泌学的に不可欠なプロセスであることを証明した。著者らのこれまでの研究から(Matsumoto et al., 2012)、本種雄は雄性ホルモン・アンドロジェンに依存した繁殖サイクルを持ち、求愛期を終えて卵保護期に入ると求愛行動を促すアンドロジェンが低下して求愛できないことが分かっている。本研究では、保護卵を除去・追加する野外操作実験を行い、巣内の卵の存在が雄のアンドロジェンを調節する鍵刺激であることを示した。つまり雄は全ての卵を巣から取り除かなければ求愛を再開できないのである。さらに驚いたことに、全卵食中の雄は保護卵を食べるだけではなく、食べずに巣の外に吐き出していることも確認された。また、全卵食は雄の体コンディションにかかわらず起こることも分かった。これらの結果は、これまで全卵食行動とみなされてきた本種の卵食行動と、それに伴う卵除去(吐き出し)行動が、栄養利益を期待する卵食ではなく子の存在を消すことを目的とした「子殺し」であることを強く示唆した。このような行動は、縄張りを乗っ取ったライオンの雄が雌の発情を促すための子殺しや、乗っ取られた縄張り内のヒヒの雌が自ら妊娠を中絶するブルース効果と類似する極めて貴重な発見である。また本研究は、従来の理論では説明できなかった魚類の卵食行動の矛盾を内分泌学的メカニズムを考慮した全く
新しいアプローチにより解決することに成功した。

研究論文は2018年8月16日、アメリカの生物学総合科学誌「Current Biology」で公開されました。

詳細は下記をご覧ください。

研究成果の内容

※クリックで拡大(PDF:630KB)
より詳しい研究内容情報は以下までお問い合わせください。
長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科
 准教授 竹垣 毅
 TEL:095-819-2819 
 E-mail: takegaki*nagasaki-u.ac.jp(*をアットマークに変えて送信ください)
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