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感染症共同研究拠点の吉川禄助助教、安田二朗教授らが重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ウイルスに関する研究成果を発表

2019年02月28日

  感染症共同研究拠点の吉川禄助助教、安田二朗教授らのグループによる重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ウイルスに関する学術論文が2019年2月27日に米国微生物学会のウイルス学専門誌”Journal of Virology”の電子版に掲載されました。

Rokusuke Yoshikawa, Saori Sakabe, Shuzo Urata, Jiro Yasuda: Species-specific pathogenicity of severe fever with thrombocytopenia syndrome virus is determined by anti-STAT2 activity of NSs. Journal of Virology, Accepted manuscript posted online 27 February 2019.

  SFTSは2011年に中国で初めて報告されたマダニが媒介するウイルス感染症で、原因ウイルスはSFTSウイルスです。わが国でも2013年1月に国内初症例が報告されて以降、既に397名の感染者が国内で確認されており、長崎県内でも26例が報告されています(2019年1月30日現在)。発症者の10−20%が死に至る極めて致死性の高い感染症ですが、効果的な治療薬やワクチンはまだ開発されていません。
SFTSウイルスはヒトには高い病原性を示すのに対し、マウスではウイルスが増えにくくほとんど病原性を示さないため、ワクチンや抗ウイルス薬の開発研究にマウスをモデル動物として使用することができません。ただし、自然免疫において重要な役割を果たす因子の一つであるインターフェロン(IFN)経路が機能しない遺伝子改変マウス(Ifnar1 ノックアウトマウス)はSFTSウイルスに感受性で致死性の感染を起こすことがわかっています。
  吉川助教らはIFN経路の下流で機能するSTAT2という因子に注目し、この因子を作れない遺伝子改変マウス(stat2ノックアウトマウス)もIfnar1 ノックアウトマウスと同様にSFTSウイルス感染に対して致死性の病態を示すことを明らかにしました。さらに、ヒト細胞では、SFTSウイルスが細胞内で作るタンパク質の一つであるNSsがSTAT1/2に結合してIFN経路を阻害することが以前に明らかにされていますが、NSsはマウスのSTAT1/STAT2とは相互作用することができず、IFN経路を阻害しないことも今回明らかにしました。これらのことから、NSsはマウス細胞ではSTAT1/STAT2と相互作用できないためIFNアンタゴニストとして機能せず、IFNの抗ウイルス活性を阻害できないためSFTSウイルスの増殖がIFNによって抑制され、病態が発現しないことが示唆されました。
  上記の成果は、今後SFTSウイルス感染による病態発現機構を解明するうえで重要な発見であるとともに、SFTSに対する抗ウイルス薬やワクチンの開発に有用な動物(マウス)モデルの確立にもつながることが期待されます。
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