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医学部共同利用研究センターの増本博司講師らが、アミノ酸で 遺伝子の発現を制御できるシステムを開発しました。

2019年10月29日

   医学部共同利用研究センター 高分子解析支援部門 増本博司講師と鼻崎美紀氏(研究補佐員)は、出芽酵母を使った新しい遺伝子転写制御システムを開発しました。このシステムは遺伝子の転写誘導あるいは抑制を、アミノ酸の添加で行なえる特徴があります。この研究成果は、2019年10月25日に「Scientific Reports」誌にオンラインで公開されました。

   大腸菌などのバクテリアや酵母、哺乳類などの真核生物においても、遺伝子の発現には、栄養条件などの環境要因や、様々な制御因子による複雑な転写制御ネットワーク下にあります。有用な遺伝子を大腸菌などで発現させる遺伝子組換え技術において、導入した遺伝子発現をコントロールする技術は重要です。特に目的の遺伝子の転写を化学物質でコントロールする技術は、基礎研究や創薬、材料工学などの産業においても必要不可欠です。現在、ガラクトース、テトラサイクリンなどの小分子を使い、遺伝子転写を誘導することができます。しかし使用できる小分子は限られており、もっと多くの小分子を使って遺伝子の転写誘導、逆に転写抑制を行なえるシステムの開発が必要でした。

   研究グループは、出芽酵母の染色体上に点在するレトロトランスポゾンTy1に、環状DNAであるプラスミドをCRISPR/Cas9を使って挿入する技術:CRISPR/Transposon gene integration (CRITGI)を開発しました。挿入するプラスミドには、発現させたい目的遺伝子とマーカー遺伝子を持っています。出芽酵母ではマーカー遺伝子は、ロイシンあるいはヒスチジンなどアミノ酸代謝酵素遺伝子を使用しています。レトロトランスポゾン内に挿入されたプラスミド中の遺伝子は、通常転写が抑制された状態にありますが、マーカー遺伝子の転写が活性化するような条件:アミノ酸を抜いた合成培地で細胞を培養した場合に、目的遺伝子の転写/発現が起こることを見いだしました。このようにCRITGIはアミノ酸を使って遺伝子の発現をコントロールできる新しいシステムであり、様々なアミノ酸を遺伝子転写制御因子として利用し、多くの遺伝子の転写発現をコントロールできます。

   CRITGIはアミノ酸だけでなく、核酸あるいは他の細胞内代謝物を遺伝子転写制御因子として利用するできる可能性を秘めています。CRISPRなどのゲノム編集技術の発展により、数十から数千個におよぶ遺伝子群を宿主生物に導入することが可能ですが、導入した大量の遺伝子の発現をコントロールできるかが、今後の課題です。この課題に応えるべくCRITGIが多くの遺伝子の転写コントロール技術として利用されることが期待されます。

 

Miki Hanasaki and Hiroshi Masumoto,
CRISPR/Transposon gene integration (CRITGI) can manage gene expression in a retrotransposon-dependent manner
Scientific Reports, 9, Article number: 15300 (2019)
URL: https://www.nature.com/articles/s41598-019-51891-6

 Y: YPD (一般的な培地、ヒスチジンあり), H: SD-His (ヒスチジンを抜いた合成培地)。CRITGIではSD-Hisの培地でFlag付きヒストンH3 (F-H3)のタンパクの発現誘導が起こるのに対し、YPDでは起こらない。URA3遺伝子座ではF-H3の発現に、YPD, SD-His培地の違いは影響しない。

連絡先:

  長崎大学医学部共同利用研究センター 高分子解析支援部門
  講師 増本 博司
  Tel: 095-819-7089
  E-mail: himasumo*nagasaki-u.ac.jp (*を@に変換してください)

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