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"150年の時を越えて輝き続ける「ロウソクの科学」"教育学部の福山隆雄准教授らによるプラズマとしての炎に関する新知見

2019年のノーベル化学賞に選ばれた吉野彰博士は,小学校4年生の時, 大学で化学を専攻した担任からファラデーの「ロウソクの科学」を紹介されて,理科に興味を持ったと語っています。 

ロウソクの科学は,19世紀に活躍した英国の科学者マイケル・ファラデーの 王立研究所におけるクリスマス講演の内容をもとに編集され,1861年に出版されました。
ロウソクの科学では,たった1本のロウソクが織りなす多彩な自然現象をめぐって, ファラデーの科学観が生き生きと語られており,最終章では, 科学の発展と人類の平和を願う科学者ファラデーの希望に満ちた言葉で締めくくられています。
ファラデーは自然科学に関する数多くの発見をしましたが,その中のひとつである電磁誘導は, その後,電気を作り出す「発電の技術」へと発展して世界中を劇的に変化させました。

さて,ロウソクの炎はわずかに電離しているめ,電気的な性質を持っています。
したがって強力な電磁場中における炎は,電場や磁場から影響を受けます。
このような電気的な性質を帯びた粒子のことを「プラズマ」と呼びます。
強力な直流電場中に置かれた炎はマイナス極側に引き付けられ,交流電場中に置かれた炎は両極に 引き付けられて扁平な形状に変化します。さらに電場を強めると炎中にアーク放電が生じます。

教育学部の福山隆雄准教授らは,強力な電場中において,炎がどのように振る舞うのか,
さらに炎の温度や発光の様子がどのように変化するのか,プラズマ物理学的な観点から研究し,
英国科学誌 Scientific Reports において発表しました。
これらの研究成果は今後,電磁場による炎の制御や燃焼科学への応用に寄与することが期待されます。

論文タイトル:
Dynamic behaviours of a flame as plasma in a strong electric field

著者名:
福山 隆雄(物理学教室,連絡先:fukuyama-takao@nagasaki-u.ac.jp
向井 温香(教育学部 理科専攻 2019年3月卒業,現:長崎県中学校勤務)
戸川 学 (教育学部 理科専攻 2015年3月卒業,現:長崎県高等学校勤務)

掲載誌:
Scientific Reports(published in London,1st November 2019)
https://www.nature.com/articles/s41598-019-50537-x