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ハンドウイルカは仲の良い個体の闘争を抑制して社会の緊張を緩和することを明らかにしました

長崎大学水産・環境科学総合研究科 山本知里氏(2016年修了・現京都大学霊長類研究所 日本学術振興会特別研究員)、天野雅男教授(水産・環境科学総合研究科)、しものせき水族館、かごしま水族館の研究グループは、飼育されているハンドウイルカを対象に、個体間で闘争が起こったときに、それに関わらなかった第三者が闘争に関わった自分と仲のよいイルカへ友好的な行動(並んで一緒に泳ぐ行動や胸びれで相手を触ったり擦ったりする行動)をすることで、闘争をした個体同士の緊張をおさえていることを明らかにしました。

社会的な群れで起こる闘争は、個体同士の関係の悪化などいろいろなコストをうみます。一般的に第三者が闘争をした個体に行う友好的行動には、このようなコストを減らす役割があるとされていますが、その役割が調べられた種は限られていました。ハンドウイルカの第三者は、闘争が起こるとそれに関わったイルカへ、友好的な行動を行いました。そして第三者による友好的な行動が起こると、イルカたちがその後再び闘争をする回数が減りました。さらに第三者は自分と仲のよい闘争個体へ友好的な行動をすることがわかりました。ハンドウイルカは、自分と仲のよい個体が闘争に関わったとき、そのイルカへ友好的な行動をすることで、再闘争を抑制して社会的な緊張を緩和していると考えられます。また、第三者は闘争の勝敗ではなく自分との関係に基づき闘争後に友好的行動をする相手を選んでおり、これは寛容な社会を持つ本種の特徴であると考えられます。

本研究の成果は2020年3月2日付でScientific Reports誌に掲載されました。

Yamamoto, C., Ishibashi, T., Kashiwagi, N., Amano, M. (2020). Functions of post-conflict bystander affiliations toward aggressors and victims in bottlenose dolphins. Scientific Reports, 10, 3776.
https://doi.org/10.1038/s41598-020-60423-6