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エクソソーム含有miRNAを標的とした抗体結合型核酸を開発 〜エクソソームと一緒に標的細胞内に取り込まれる核酸医薬の開発に期待〜

2020年06月17日

  長崎大学大学院医歯薬学総合研究科(薬学系)の山吉麻子教授(兼任:JST 戦略的創造研究推進事業さきがけ研究者)らは、がん細胞から体内に放出されるエクソソーム(注1)に含まれるmiRNA(注2)の働きを止める新しい技術を開発しました。

ポイント

・がん細胞から分泌される細胞外小胞(エクソソーム)に「microRNA」と呼ばれる小さな遺伝子が含まれることが見出され、創薬の標的として非常に注目を集めておりますが、この機能を特異的に抑制することはこれまで実現されていませんでした。

・本研究では、「エクソソーム表面に結合する抗体」と「核酸医薬」とを複合化することで、エクソソーム受容細胞への選択的な核酸医薬の送達と、エクソソーム含有microRNAの機能制御の、両方を達成することに成功しました。

・本成果は、核酸医薬の実用化に際し、これまで最も大きな障壁であったDDSの問題を克服するだけでなく、核酸医薬に限らず様々な機能性核酸を標的細胞へ送達する手法として応用できます。また、ペプチドや中分子医薬品などの細胞内送達法として展開されると期待されます。

図1 体液中microRNAを標的とした新しい薬物送達システム

図 体液中microRNAを標的とした新しい薬物送達システム

@ ExomiR-Tracker を投与
A 体液中(この図では血中)にてExomiR-Trackerがエクソソームに結合
B エクソソームに随伴してExomiR-Tracker が受容細胞に取り込まれ、エクソソームから放出されたmiRNAの機能を阻害する。

詳細

  がん細胞はエクソソームと呼ばれる細胞外小胞を放出し、これを生体内の別の細胞に取り込ませることで、がん細胞自身の増殖や転移を導いています。エクソソームにはmiRNAと呼ばれる小さな遺伝子が含まれており、エクソソームと一緒に別の細胞に取り込まれた後、がん転移を促進すると考えられています。そのため、エクソソームに含まれるmiRNAは創薬の標的として大きな期待が寄せられておりました。これまで、miRNAの働きを止めるanti-miR核酸(核酸医薬の一種)を用いた方法が開発されていますが、エクソソームに含まれるmiRNAには適用が困難でした。なぜならば、エクソソームは全ての細胞に均一に取り込まれるのではなく、生体内の特定の細胞を標的として取り込まれることが判明したからです。このため、エクソソーム受容細胞へanti-miR核酸を選択的に送達する技術が求められておりました。

  そこで山吉教授らは、『エクソソームの表面に存在するしるし(抗原)に結合する抗体』と『anti-miR核酸』とを複合化した新しい抗体結合型核酸“ExomiR-Tracker”の開発に世界で初めて成功しました。また、ExomiR-Tracker が血液などの体液中でエクソソームと特異的に結合した後、エクソソームと一緒にエクソソーム受容細胞に取り込まれることも見出しました。さらに、その受容細胞内でエクソソームから放出されるmiRNAの働きも制御することに成功しました。

  本研究成果であるExomiR-Trackerは、エクソソームに含まれるmiRNAを標的とした新しいがん治療薬として、今後の開発が期待されます。また、この技術は、核酸医薬に限らず様々な機能性核酸やペプチド、中分子医薬品などを標的細胞へ送達する手法としての展開も期待されます。

  本研究は、京都工芸繊維大学の村上章教授、京都薬科大学の芦原英司教授、京都大学の杉山弘教授・原田浩教授らと共同で行なったものです。

  本研究成果は、2020年6月12日(英国時間または米国東部時間)に国際学術誌「Pharmaceutics」のオンライン版で公開されました。オンライン版はこちらhttps://www.mdpi.com/1999-4923/12/6/545

論文タイトル

“英語タイトル Development of Antibody-Oligonucleotide Complexes for Targeting Exosomal MicroRNA”

(日本語タイトル エクソソーム含有miRNAを標的とした抗体結合型核酸の開発) 

doi:10.3390/pharmaceutics12060545

用語解説

注1)エクソソーム

  あらゆる細胞が分泌する細胞外小胞(直径 ~100 nM程度)。がん細胞が分泌するエクソソームには、がん細胞の増殖や転移を促進する分子が搭載され送達されていることが明らかとなり、その機能に注目が集まっている。

注2)microRNA(miRNA)

  タンパク質をコードしない小さなRNA(22塩基程度)。遺伝子発現調節機構に深く関わっていることが報告されているが、近年、エクソソームに含まれるmiRNA の機能が注目を集めている。

お問い合わせ先

研究者氏名 山吉麻子 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科(薬学系)教授

Tel:095-819-2438 E-mail:asakoy*nagasaki-ac-jp (*を@に変換してください)

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