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アカエイの繁殖生態〜胎生エイ類では初!短期の胚休眠に続く胎仔の劇的な発達過程を解明

2020年07月30日

水産・環境科学総合研究科の古満啓介研究員と山口敦子教授、米国・デラウェア大学のJennifer Wyffels博士の研究グループは、日本を含むアジア各国の温帯から熱帯の汽水から沿岸域に普通に生息し、最もなじみのあるアカエイHemitrigon akajeiの繁殖生態と胎仔の発生、発達の詳細を初めて解明しました。エイ類は、サメ類と同じ軟骨魚類の仲間で、世界に600種以上が知られています。エイ類には卵生種と胎生種がいますが、飼育下では研究できない胎生種の繁殖様式については未だ多くが謎に包まれています。本研究では世界で初めて子宮内での胎仔の発育過程を詳細に明らかにしたことに加え、胚の発生初期にごく短期間の休眠期(diapause)を持つ可能性を明らかにするなど、多くの新知見を得ています。

アカエイHemitrigon akajei

アカエイの繁殖生態が未解明であった背景には、採集の際に頻繁に流産することや、胎仔の発達が劇的に速いことなど、胎生エイ類独特の難しさがありました。アカエイは、干潟・河口域生態系の頂点の捕食者として重要な調節機能を果たしているほか、大型サメ類等の頂点捕食者を欠いた一部の沿岸生態系では増加傾向にあることが指摘され、度々問題視されています。一方、アジア各国で漁獲圧が高まっており、IUCN(国際自然保護連合)による絶滅の恐れの評価では、準絶滅危惧種(NT)に区分されるなど、繁殖生態の解明が急務となっていました。

アカエイ子宮内での胎仔の休眠と発達

研究は、アカエイが豊富に生息する有明海の河口域から深海域までの全水域で12年もの年月を費やして行ったものです。雄は長期に及び交尾が可能で、交尾期は7ヶ月にも及ぶ一方で、排卵は主に5月に集中しており、雌の体内に精子が貯蔵されることをアカエイ類で初めて明らかにしました。交尾の際にメスに嚙みついて体を固定するため、オスの歯は成熟すると尖ります。雌の繁殖周期は1年ですが、受精後から僅か3か月の妊娠期間を経た夏に出産します。発生初期の約1.5ヶ月間、胚が休眠する可能性を示すことができました。発生が再開してからは僅か1.5ヶ月間で、胎仔は目覚ましい成長を遂げます。休眠の後、発育が再開してから外部卵黄嚢が無くなる妊娠中期頃に、子宮ミルクの分泌が始まります。エイの劇的な成長の仕組みを解明するのが、次の課題です。

アカエイの繁殖力は、既知の世界のアカエイ類中で最も高く、小さな胎仔を数多く妊娠する繁殖戦略を持つことがわかりました。どのような環境にも広く適応可能である上に、このような繁殖戦略を持つことが、アカエイが沿岸で豊富にみられる理由なのかもしれません。この研究は2019年11月に国際誌Ichtyological Researchに生態分野で初のモノグラフとして掲載されました。直後から世界各国から大きな反響が寄せられ、今後は沿岸環境や生物多様性保全に加え、胎生エイ類の繁殖に関する教科書的な論文として大いに活用されることが期待されます。

なお、本論文については、2020年度日本魚類学会の論文賞に選考されました。

論文タイトル
Reproduction and embryonic development of the red stingray Hemitrygon akajei  from Ariake Bay, Japan

著者
Keisuke Furumitsu, Jennifer T. Wyffels & Atsuko Yamaguchi

雑誌名
Ichtyhological Research

オープンアクセスですので、下記よりダウンロードください。
https://link.springer.com/article/10.1007/s10228-019-00687-9

【お問い合わせ先】
山口 敦子 
長崎大学総合生産科学域(水産学系) 教授
TEL:095-819-2822
E-mail: y-atsuko*nagasaki-u.ac.jp(*を@に変えてください)

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